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Title : Subsequent Offense
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Contemporary Files #20050103
奈良女児誘拐殺害犯人逮捕の周辺
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 12月30日、奈良県で起こった小1女児誘拐殺害事件の犯人が逮捕された。私の住んでいる場所は実は事件の起こったところと近いところで、周辺の小学校では事件以降、登校時には父兄や警察、学校の先生が通学路の要所に立って児童の安全を確保しようとしており、特に同年代の子どもをもつ親は心配していた。私の小さいころでは空き地とか公園とかで子どもたちだけで遊んでいたものだが、今ではそんな光景は見られない。

 この事件でいくつか気になった点はあるのだが、そのなかで一番厄介だなと思ったのが動機だ。
 「誰でもよかった」…児童が被害者になるような事件だけでなく、一般にこんな動機で犯行に至る人間が一定の割合で社会に潜んでいるとなるとおちおち安心して生活できないからだ。被害者側に落ち度…少なくとも思い当たるフシ…がある場合なら、警戒のしようがあるのだが、害が作為を持って与えられるのにその対象は無作為だというのなら、どんな相手にも警戒をする以外にどうしようもない。
 「防犯にGPS機能付きの携帯電話を持たせる」なんてことが言われてるけど、GPS機能っていうのは、「直近の信号発信時点にどこにいたか」という情報を与えるだけで、それだけでは文字通りの防犯…犯罪や事件に巻き込まれることを未然に防ぐ…ことはできない。言葉を飾らずに言えば、何かの事件に巻き込まれた場合にでも、携帯電話の電源が入っていさえすれば居場所がある程度の精度で確定できるということ、つまり「どこで事件に巻き込まれているか」という情報が入手できるということである。もしこれを完全に防犯に役立てようとするなら、その携帯に近づいている持ち主以外の人間が確実に特定できるようなしくみがある場合だ。
 今回の事件の場合、殺害された女の子の携帯電話から犯人の携帯電話にメールが転送されたこと、及び女の子の携帯電話から発信された時点でその同一範囲内に存在していた携帯電話の位置情報との照合がかなり犯人特定に寄与したと思われる。
 携帯電話のしくみというのがどの程度一般の人に認識されているのかよくわからないが、携帯電話がどこにいてもつながるためにはどこかの基地局から個々の携帯電話まで電波が届かなくてはならないということはご存知だろう。「携帯電話」なので、個々の機体は移動することが想定されており、電源が入る限り、一定の間隔で必ず近くの基地局と通信を行うのだ。もちろんこの通信は位置情報(GPSで言う緯度経度ではなくて、「今、どの基地局と通信可能な範囲にいるか」という情報)をやりとりし、この電波使用に関しては利用客側はお金を払っているわけではないので気にされてないだけだ。特にある基地局のカバーエリアから他のカバーエリアに移るときに「こっちに着たよ」という情報がほぼリアルタイムで把握されているからこそ、その携帯電話にかけたらすぐにつながるのだ。
 そう。実は携帯電話を持っていて電源を入れている限り、ほぼリアルタイムでその人がどのあたりにいるかを把握することは可能なんだな。その気になれば、だけれども。

 一度でも(どんな軽微な犯罪でも)逮捕・補導歴のある人間には携帯電話を与えてしまったらどうなんだ、と思ったりもするな。しかもそれを携帯し、電源を入れておく義務を負う、と。携帯電話じゃ便利に使われてしまうかもと言うのなら、それこそGPSチップを埋め込んでしまう。もちろんプライバシーの保護に反するよ。ただしそれでおそらく再犯の可能性を幾分か低くすることができるんじゃなかろうか。

 守られるべき「基本的人権」って何なんだろうな、と最近思ってしまう。
 加害者となってしまうかも知れない人たちのプライバシーを保護することと、被害者になってしまうかも知れない人の不安を下げて安心な生活を確保することを天秤にかけなきゃいけないとすれば、どちらが優先されるべきなのか、と。


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Updated : 2005/01/03