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Title : Law-abiding
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Contemporary Files #20021226
法律を守る
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 今日(26日)の新聞を見てて、「三井住友銀行、わかしお銀行と合併」と言う記事が目にとまった。まあ、企業としての知名度と言い、資金力のでかさといい、三井住友銀行わかしお銀行吸収合併するんだろうな、と思った。ところが記事を読むと逆なのだ。企業が合併するということはこれまで2つあった企業が1つになるわけだから、2つとも解散して(すべての従業員と資産を整理して)新規に設立された企業がそのすべての資産を買い取るか、どちらか一方を存続会社として他方の資産を受け取らせるかのどちらかだ。通常、規模のでかいほうが小さいほうを買い取る。けれど今回は違うのだ。小さい側の銀行が存続会社となって、形式上三井住友銀行わかしお銀行吸収するようなことになってしまっている。ところが合併後の新銀行名は「三井住友銀行」だし、頭取には現三井住友銀頭取が就くらしい。ではなぜ、こんなことをするのか。それは合併によって利益を出すことが可能だからだ。わかしお銀の自己資本は約200億円。三井住友銀行の自己資本は約3兆円。わかしお銀を存続会社として合併し、新銀行の資本金を1兆円にすると、引き継ぐ資本金の差約2兆円弱が差益として残る。この差益で現在抱えている約1兆円の株式含み損を解消しようというのだ。

 さて。政治の世界では、このたび新党が設立された。保守党が解散し、旧保守党の大半の議員と民主党からの離党者とで「保守新党」ができた。どうして素直に(旧)保守党に民主党からの離党者を受け入れという形で済ませず、こんな奇妙なことをしたかというと、比例選出議員は自分が選出された党から他党に移ることは基本的に国会法で禁止されており、唯一の例外が新党への参加だからだ。しかも、旧保守党が自民復帰組と保守新党組に分かれる際に、復帰組が5名以下になることで政党成立要件を満たさず、これにしたがって新党組の方にこれまで保守党が受けていた政党助成金を受け取る(満額ではないが)権利を発生させた上での方策だ。

 どちらの行為も違法ではない。これを考え付いたヤツはとっても頭がいい。けれどやはりどこか「そんなんありかよ〜」とツッコミを入れたくなるのが、多くの人の感覚ではないだろうか。
 まだ銀行の合併のほうはおそらく法律に抵触しない範囲でのぎりぎりのところで頭をひねったんだろうという気がする。法律ができたときに、規模の小さいほうが大きいほうを合併し、大きいほうが自分の損金を処理するなんてのは想定されてなかったのをうまく利用したんだろうと思う。
 けれども国会のほうは、こんなことができる余地を法律制定時にわざと残したのではないかという疑念がついて回る。
 法律だの条令を作るときには、制定時に想定し得なかった事例が発生することを前提に、それらも幅広く網にかけて禁止しようと思うのか−その場合は可能な限り抽象的に書き、「○○等、□□を△△する行為」と「等」という魔法の言葉をもぐりこませて必要なときに「この条項に適合する」と宣告する−、逆に現在想定しているものに限定したいと思うのか−その場合は可能な限り具体的に書いて、それ以外のことを縛るようなことには触れない−によって作りこみ方が異なるのだ。やっぱ国会法とか政党関係の法律って自分で自分を取り締まる法律を作るんだから、どっかうさんくさいよなぁ。


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Updated : 2002/12/26