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Title : What do you want?
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Contemporary Files #20021208
欲しいものはなんですか。
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 政府の道路民営化委員会(正式には「道路関係4公団民営化推進委員会」と言うらしい)の最終報告(これも正確には「意見書」と言うらしい)が6日、提出された。
 まあ、どうなのかなぁ。堅気の職業の方には縁遠いことなのかも知れないけど、「シンクタンク」という893な商売してると、自治体とか省庁とかの委員会・審議会の事務局(の下働き)を経験することがある。だいたいそういうのって、結論(これはその世界では「落としどころ」と言う)があらかじめ決まってて、事務局が委員長に根回しして、その方向にそった委員を選んで、事務局が作った資料と報告書を承認してシャンシャンと終わることが結構多かったりする。まあ、最近は委員全員を賛成派(と思われる人)だけで固めることはしないで反対派を入れて、少々意見は反映するけどおおよそは規定通りに進んでいくということが多い。だってさ、首相官邸のページ(http://www.kantei-go.jp/)でも、その他の省庁のページでもいいけど、「審議会」というのがいったいどれだけ開催されてるか確かめてご覧。それから自分の住む自治体(都道府県・市町村)のページをみて、「○○協議会」とか「△△委員会」とかがどれだけ開かれてるか調べてご覧。そして、それらが検討で紛糾して大騒ぎになった例というのを思い出してご覧。ほとんどないでしょ? それはほとんどシャンシャンと終わったか、誰も注目されないうちに開催されて終了したかのどっちかなんだ。
 じゃあ、なぜそんなことするのかと言うスルドイ突込みをツッコミを入れたあなたに答えておこう。もしそういうのがなかったとしたら、仮に自治体なり省庁なり(の職員)が私心無く全身全霊を尽くして考え抜いた政策であったとしても、「それは国民の意見を反映してない」と言われてしまえばおしまいだからだ。国民の代表としての「有識者」から意見をまとめ、それを受けて政策が動くとするほうが民主主義の建前にかなっているし、何よりも、議会対策として「(自分らが勝手にやんたんじゃなくて)有識者からご意見を賜り、その勧告に従いました」という言い訳が可能だから。
 実際は、その手の委員会なり審議会なりで答申が出された時点で、その政策は既定方針となるわけで、その後はその実施のための予算を獲得したり、関連法制(条例)を整備するという動きになるわけだ。だからね、世の何でも反対したがりの皆さんはね、議会の議題にあがってから騒いでちゃ遅いんだよ。議会に上がった段階ではかなり話は進んでて(少なくともその省庁なり自治体の中ではその方針で是ということで固まったってことだから)、後はいかに議会を通すかっていうレベルなわけよ。いいかい、何かの動きをつぶしたいんなら、議会じゃない。「○○の検討に向けた調査費」というのが計上される時点なんだ。そういうのが「○○推進委員会」と言う名前の「有識者」の集まりのための資金になる。その委員会で何が話し合われ、どういう結論になるかを監視しなきゃ。
 何かを推進したい人も、いかにこういう流れに乗せていくかってことを考えなきゃならない。その手の調査報告書ってのは、必要なとこに配布された後は、担当部署に保管されてて、請求して部数が余ってたらもらえるはずだよ。

 さて、そんでもって、この道路民営化委員会の出した報告書に対して「素人さんがいろいろ考えたことをわれわれがそのとおりにやらなきゃならない筋合いはない」とのたまった国会議員が居てたけど、それっとすっごい暴言なんだけどな。だってさ、審議会とか委員会ってのは、「国民の代表としての有識者が集まって議論する」という建前のもとで開催されるんだから、それを堂々と無視するって言った(としか受け止められないよなぁ)わけだからね。私の記憶が正しければその議員は、小泉首相の手口を「独裁的」と言ってたと思うけど。

 それから、国会議員の中で、経済政策の時もそうだけど、「△△委員会」の結論(を発表しようとした民間出身閣僚)に対し、「あんた責任とれんのか」と言った議員も居たよね。今回も同じようなことを言ってる議員もいる。でも、じゃあ、そういう議員は責任をとれんのかね。議員辞職するって? 別にさぁ、わたしゃアンタの政治生命なんて屁とも思ってませんぜ、と言いたくなる。

 ちょっと前の日経新聞(だと思う)に「ローマ時代の巨大建築には『カラカラ浴場』や『アッピア街道』など、それを作らせた人物の名前がつけられている。日本の道路もそうしたらどうか。」ってな意見があった。これは面白い。もちろん自治体とかで建てたものは公費なんだから個人名をつけるのはまずいのかも知れないが、仮にそれが将来的にすごく地域の役に立ったのなら、それに尽力した人を顕彰するのは悪いことではないだろうし、それがトンでもないものなら、そんなおバカなことをしたのは誰だってのを子々孫々語り告げばいいんだ。そういうふうにしとくとそういう時間による審判を視野に入れて政治家とかも行動せざるを得なくなる。
 ほんとはね、道路なら道路を作れと言った人物に、その後に採算が取れなくなったら私財を投入することを義務付けろと言いたいとこなんだが、議会の中での投票行動について議会外で責任を負わせるのは議会政治の否定になるので、できんのだな。

 話を道路に限って言えば、地方に道路が必要だという議論は絶対的じゃないと私は思ってる。まあ、私の住んでるのは奈良県の盆地部分なので、「そりゃお前んとこはそんなに不便じゃないんだろう」と言われてしまう余地はあるんだけどさ。でも私の家もすぐ近く(基本的に田園地帯だ)には、ほとんど交通量のない農免道路が何本も走ってるし−そのわりにはそれと並行して走ってる国道は一向に改善されない−、それがなければなくたって生活は成り立つんだ。
 以前、仕事の関係でしばらく通った和歌山県のある地域で聞いた話なんだけれど、長い間(大阪湾の)湾岸線とつながる高速道路が完成して「これで都会とつながって便利になる、人がいっぱい来る」と思いきや、逆に出て行く人が増えちゃったという。(管が通ることで中身が吸い出されていっちゃう、ストロー効果ってヤツだ。) そういうことが起こってしまうのは今に始まったことじゃない。それでも道路作るんですかね。

 ちょっと極論するとね−「ちょっと」だと「極」論じゃないだろ、というツッコミは無視−、本当に地球環境のことを考えて自然をより多く残したいのなら、人間をできるだけ密集させて住まわせて、環境負荷を局所化し、その処理を集中的に行って、それ以外の地域を、人間が踏み込まないサンクチュアリとして残したほうがいいという考えだって可能なんだ。エネルギーの利用効率から言っても断然そのほうがいい。ま、もちろん、そんなこと強制的にできるとは思っちゃいませんがね。
 ただね、本当の、というか最終目標をどこに見据えているかで、借金してまで道路が必要かどうかってのはかわってくる。ここんとこの動きを見てると、欲しいのは道路じゃなくて、道路工事じゃないの? 議員が欲しいのも道路じゃなくて、じゃないの? という気がする。


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Updated : 2002/12/08