Location : Home > Contemporary Files > 2002
Title : The Seasons of Terror (1)
Site:Felix Logo
Contemporary Files #20021020
テロの季節(1)
/ BBSへGo! /

 バリ島が大変な状況である。12日午後(日本時間13日午前)、ナイトパブなど複数箇所で爆発があり、多数の外国人を含む184人が死亡、300人以上が負傷したと伝えられている。インドネシア警察は連続爆弾テロとみて捜査を開始した。またもやアルカイダ(もしくはそれにつながる組織)の仕業ということになっている。観光以外に大きな産業のないこの島周辺に観光客は行かなくなったし、インドネシア通貨(ルピーだったかなぁ?)も急激に下落し、人だけでなく資本まで流出して大変なことになってる。
 …と思っているとフィリピンでも爆弾テロが発生。ロシアでもテロと思われる爆破事件があったと報道されている。今、アジアが世界でいちばん「ホット」な地域なのかも知れない。海外旅行に行くのも命懸けだなぁ…などといつまで言っていられるのか不安になってしまうところだ。日本で同様なテロが起こっても不思議ではないだろう。

 昔々、テロには「任侠」というか、「堅気の衆には迷惑かけねぇ」みたいな暗黙のルールがあったように思う。フランス革命時代から発生した「テルール」にしても基本は要人暗殺ではなかったか。日本の幕末に横行した「天誅」も、昭和時代になってからのテロも同様の了解事項があったような気がする。もちろん、暗殺という行為を是認するつもりはさらさらないが、テロの目的が、ある政治的目的を達成するためにその邪魔となる(政治的に重要な)人物を取り除くという点にあったと言えるわけで、それを実行することで「世の中によい状況をもたらす」と(主観的には)考えた上での行為だったのではないか。最終的には社会からその結果を承認してもらう必要があるわけだから、一般大衆を巻き込むと言うのは逆効果だったわけだ。
 その原則を破ったのは、歴史的には日本赤軍であると言われる。ベイルート空港での無差別乱射事件や、ビル連続爆破事件などがそうだ。「日本人が発明した(または広めた)世界的に大きな影響を与えたもの」のうち、不名誉な2つがこの「無差別テロ」であり、「自爆攻撃」だと言われている。
 おそらくそれらが広まる以前は、それなりの立場にある人のみがそれなりの覚悟を持てばよかったが、現在はそうでなくなってきている。人がたくさん集まるところで、いきなり「テロの犠牲者」になってしまう危険性が世界のどこに居てもあるという時代になってしまった。

 テロの目的が政治的な目標の達成にあるのなら、その目標を達成するのにテロ以外の方策があることを示し、または本当に実現させてしまえば、テロを行う必要性(を認める論理)を封じ込めることができる。だから制御は不可能ではないし、政治的意図とその実現を望むという点があるからこそ、交渉の可能性が生まれる。あくまでテロ行為は手段だからだ。
 けれども、昨今のテロは違う。テロ自身が目的なのではないかと思える。テロが手段なのなら、その手段が何を目的とした行為なのか、テロの実行者(を支える組織)が内外に宣言しなければ望んだ結果が得られないからだ。


[Previous] : 2002/10/06 : 信頼
[Next] : 2002/10/28 : テロの季節(2)/「救命ボート」
[Theme index] : 国際
Site:Felix Logo
Updated : 2002/10/20