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Title : Demilitarization
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Contemporary Files #20020820
非武装は可能か?
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 あらかじめ言っておく。今回の文章に出てくる全ての疑問文は修辞疑問(反語)ではなく、純粋な疑問だ。今後私自身が答えを出すこともあるが、あなたが先に答えを見つけることには何ら支障はない。

「国際紛争解決の手段としての戦力を保持しない」とは?

 国際紛争解決の手段としての戦力を保持しないのであるならば、それ以外の用途に用いる戦力の保持は可能であるという見方は可能であろう。けれども、国際紛争解決の手段でない状態で、戦力を使用しなければならない事態とは、国内紛争(内乱またはクーデター)を意味するのではないか?
 そもそも国内でのみ活動することを想定した軍隊というのは妙な存在なのではないか?
 自衛のための戦力ならよいとするのが現在採用されている解釈であるが、自衛力を発揮しなければならない状況とは、既に国際紛争に巻き込まれていることを意味するのではないか?
 つまり、日本を攻める側が自らの行為は国際紛争であることを宣言すれば、自衛隊が合憲であろうがなかろうが、手も足も出せなくなるのではないか?
 あまりに「国際紛争解決の手段として」という部分に固執するなら、逆に、国際紛争の解決に資さない目的のためなら‐例えば、単に「使ってみたかったから」という理由で武力を行使することは‐可能という屁理屈だって成立してしまうのではないか?

最強の「暴力装置」としての軍隊

 近代国家は、個人から暴力を行使する「権利」を奪うことで成立している面がある。例えば江戸時代は認められていた仇討ちも明治になって禁止された。これは人を裁き、罰する権利を個人から国家に移管・委託したことを意味するのではないか?
 人を逮捕できるのも(緊急時を除き)令状を持った警察だけだ。他人の財産を没収できるのも令状なり執行命令を受けた者たちだけだろう。それは(基本的)人権は誰にも侵すことができないから、のはずである。しかし国家の(権力の、と言い換えてもいい)「お墨付き」があれば一定条件の下で制限を与えてもいいと見なされていることを意味する。これはどういうことであろうか?

 軍隊が存在するとはどういうことであろうか?
 概念的には(1つの)国家において武力を行使する権限を独占するためである。仮に他の勢力や組織が武装しても、それらの中で最強の暴力装置でなければ存在する意味がない。国内で武力を行使するものがあれば鎮圧しなければならない。この鎮圧のための機構・組織を何とよぼうがかまわないが、国家で最強の暴力装置を権力を執行する側が保持していなければならないの重要である。それでなければ国内の治安は極めて不安定だろうし、最強の組織の支配地域は実質的に「別の国」だ。

 武装勢力が武装解除に応じるのはどのような時か?
 国家が最強の暴力装置であることを放棄するとはどういうことか?
 抑圧がなくなるだけであろうか? それともこれまで形を潜めていた暴力装置が台頭するだけであろうか?

軍備放棄が可能となるためには何が必要か?

 中米のコスタリカには軍隊はない。これは小国だから可能なのであろうか?
 仮に日本が武装放棄するとすればどのような条件が必要なのであろうか?
 自衛隊法なりを改正(放棄)したとして、その結果起こりうる事態に確実に対処するには何が必要であろうか?
 国連軍を創設し、それに自衛隊を編入するという意見があるが、その指揮は誰が執るのか?
 その指揮や作戦行動が日本の国益と反する場合は撤退が可能なのであろうか?
 そもそも国の軍隊を国連軍に編入するとはどういうことであろうか?
 国の主権の一部を他の存在に委託するとは何を意味するのであろうか?
 国連軍に参加するということは、日本の幕末において薩長側が天皇の詔勅を手にし、「錦の御旗」を手にしたようなものではないのか?
 国連軍に敵対するとは、「賊軍」と見なされ、もはや弁明の余地がないということを意味するのではないか?

 軍隊が廃絶された世の中にあって、誰かが武装した場合、現在では考えられないくらいの脅威になってしまうのではないか?
 この世に暴力がある限り、それを統治する側は、最大・最強の暴力装置を備えざるを得ないのではないか?

 ならば、暴力を封じ込める装置としての国家、という国家論を乗り越える国家論はどのようなものであろうか?


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Updated : 2002/08/20