このニュースを見て、なぜ今ごろ？　と思ってしまった。ひょっとしてレームダック状態にある韓国の金大統領が、国民の目を国外に（特に日本に）向かせるためなんじゃなかろうかと思ってしまった。
　韓国の環境省が、日韓の間で帰属に関してもめてる竹島（韓国名・独島）とその周辺を国立公園（もちろん韓国の）に指定を検討していると報じられたのだ。

この問題の島を「竹島」と呼ぶのか「独島」と呼ぶのかで既にその政治的立場を表明することになってしまうわけで、ホントは中立的に表記したいところなんだがいちいち注釈をつけずに、暫定的に「竹島」と表記しておく。これは帰属を日本のものとするという結論の表明ではなくて、おそらく日本語文化圏の人であろうこのページの読者に馴染みの深いほうの表記を採用しただけのこと。他意はないので、悪しからず。

　「竹島」の領有権についてはどうも江戸時代からもめてたらしく、１９０５年に島根県の県令で島根県に編入されたらしい。当然、新羅の時代から自分たちのものだと主張する韓国（と言っても当時は李氏王朝の朝鮮だけど）は反発。けど１９１０年の日韓併合でなしくずすというか、領有権問題そのものが消し飛んだ。第二次世界大戦終戦後、帰属問題が再燃、１９５１年に季承晩大統領が灯台と電信所を設置、１９５２年には国境線として「季承晩ライン」を引いた。日本側も猛反発したが、韓国側は警備隊を配備するなど、実効的な支配を確保している。ただし１９６５年の日韓国交正常化で周辺海域での漁業は可能となった。

　さて。これ、どう考えたって、このままだと韓国側の領土ってことになってしまう。けれど国際紛争を解決する手段としては武力を用いないことになっている日本にしてみれば、まさか自衛隊なり海上保安庁なりを派遣して強制排除ってわけにもいかない。「ねぇ、その島からどいて！」とお願いしても出ていってくれそうにない。さてどうしたものか。

　領土問題でよく双方が「わが国古来よりの固有の領土」なんてことを言ったりする。けど、前から思っているんだけれども、それでは決着がつかないんじゃないだろうか。まあ、基本的には領土ってのは早いもの勝ちだ。そして２０世紀の真ん中あたりまでは強いもの勝ちだった。つまり先に見つけても、力で奪い取ったことを、強いもの同士の相互承認で「正当化」できた。けれども、もはや力で奪い取るというのは正当化し得ないどころか国際社会からよってたかって制裁されることになる。つまり、国境については事実上「現状固定」なのだな。その地域に住む人の総意によって帰属が平和的に移行するならともかく、無人の島ではどうしようもない。実は絶海の孤島の領有権ってのは、確実に裁く方法なんてないんじゃないのかな。
　「オレのほうが先に見つけた！」ってお互い証拠を出し合っても、互いにそれを承認しない限りは決着がつかないわけだし、決着を自分に有利につけたいのだから、相手に有利な証拠を認めるはずはないのだからねぇ。

　こんなこと書くとあちこちから非難轟々となるのかなぁと思いつつ、正直な気持ちを書くと、北方領土もそうだけど、竹島も日本に帰属したからと言って利用のしようがあまりないような気がする。たぶん、正直なところその周辺の漁場としての価値とか、大陸棚の資源とかが重要なんだと思う。そしたら、その周辺海域＆海底の開発権と引き換えに領土なんてあげちゃえばいいんじゃないかな。ただしそのときにこういう言い方をする。「昨世紀に、わが国は周辺諸国の領土に対する野心を武力を以って満たそうとしたという哀しい事実がありました。しかしもはやわが国には領土的野心を発揮することはありません。その証拠にこの島に対する領有権の宣言を取り下げます。ただし古来、この地域にわが国の先祖が往来して生活をしてきたことも事実であり、その事実は認めていただきたいものであります。したがいまして、貴国との交渉に基づき周辺海域・海底の資源については共同利用を提案するものであります。」とな。
　領土帰属問題ってのはゼロサムゲームだから、絶対にどっちかが引かないと解決しないんだ。そしたら、（特に日本は）強硬におしまくって奪い取るより、うまく引いたほうがいい。その際に、「日本が再度軍国主義化して、領土的野心を発揮しない」と態度で表明するのも一つの手だと思うのであった。