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Title : The state of war
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Contemporary Files #20011029
戦争状態論
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「これは“戦争”ではない」

 11月号の総合雑誌は、こぞってテロ特集である。
 ざっと読んで…というか読もうとして…まず気がつくのがそのタイトルである。「…は〜でない」というスタイル。『世界』では西谷修氏がこれは「戦争」ではないと題して、『Voice』では浅田彰氏が『これは戦争ではない』と題して、それぞれ語っている。
 さて、現代思想が好きで好きでたまらない人は、これがルネ・マグリットの「これはパイプではない」を踏まえてるってのは感じ取ってるんだろう。1枚のパイプの絵が描かれているのに、その絵のタイトルが「これはパイプではない」となっている、奇妙な構図。
 王様は裸だし、みんな「裸だよなぁ」と思ってるのに、口にするのは「結構なお召し物で」みたいな。

 ブッシュ大統領は「これは戦争だ」と言った。言っちゃった。でも、「え? テロじゃなかったの?」な〜んて思ってません? > そこのあなた。

 これが「戦争」なのだとしたら。「戦争だ」と言った瞬間から、戦時法が適用されちゃう。じゃあ、ブッシュ大統領がにっくきビンラディン氏が白旗もって降伏してきたら、それなりの待遇を与えなきゃならないけど。間違って(?)捕虜にでもしてしまったら、容易に殺せないけど。捕虜の扱いに関する条約なんかがあったりするからね。
 でも、「戦争」といっておかなきゃ、合衆国は自分の暴力を正当化できない。一方で「戦争」と言っちゃったことで、守らなきゃならないものが増える。時と場合によっては当のビンラディン氏の身の安全を暴徒から守らなきゃならなくなるかもよ。
 だから本当は合衆国は…というかブッシュ大統領は…「これは“戦争”ではある」みたいな奇妙な言い方をしたくてたまらないんじゃないのかな。

「“テロリスト”はどこにもいない」

 今回の「戦争」は「民主主義」vs.「テロリズム」という図式で語られたりすることもある。じゃあ、その「テロリズム」を体現するテロリストはどこにいるんだろう。
 何を言ってるのかって突っ込まれそうだけど。
 いや、あのね、アルカイダってテロリスト集団だって思ってるでしょ? > そこのあなた。
 じゃあ、その当のアルカイダの人に「あなた、テロリスト?」って聞いたら、誰も「そうだ」とは言わないと思う。「聖戦に参加している戦士だ」って答えるんじゃないだろうか。そもそも、アルカイダだけじゃなくって、テロリストを自称してる人(集団)っていないんじゃないのか? “テロリスト”って言う言葉は、誰もそう自称しない、言わば蔑称に近い形でレッテルを貼るためだけに存在する言葉のような気がする。だから、「テロ撲滅」と呼びかけたら、誰も反対しない。ほら、今回の事態に対して、これまで合衆国が「ならず者国家」って決め付けてきた国だって「テロ反対」に賛同してるじゃない。誰もが自分にいわれなき暴力を与える者をテロリストと呼んでいる。誰もが自分をテロリストだと思ってない。
 今、「戦争」をしてるのは、兵士(soldiers)戦士(fighters)、なのだな、主観的には。
 「お前はテロリストだ」とは耳にするけど、「私はテロリストだ」とは誰も言わない。1人称を主語にもたない不思議な述語。
 そう、“テロリスト”はどこにもいない。
 じゃあ、どうするのかって? 名指しするんだ、「アイツがそうだ」ってね。

「もはや“平和”は来ない」

 すると、この「戦争」はいつまで経っても終われない。
 だって、「テロリスト」だけを根絶できないじゃない。

 …と考えてたら、かのラムズフェルドさんは「私たちは最終的な期限のない持続的な闘いを進めることを検討しているのです」とか言ってしまってた。

げ。それを言っちゃあオシマイよ。

 ああ、もう、この「戦争」は終われないかも知れない。「戦争」かどうかもアヤシイのに戦ってて、終わらせようのないようなことを言ってしまってる。

 うぉう。ちょっと待ってくれぃ。もうちょっと考えるから。どうしたら、この状況をひっくり返せるのかを。


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Updated : 2001/10/29