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Title : Before Winter comes
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Contemporary Files #20011008
冬が来る前に
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 アメリカ合衆国とイギリスによるアフガニスタンへの報復攻撃が始まった。ブッシュ大統領が「報復する」と宣言していたにもかかわらずなかなか攻撃に入らないので、じらすのも作戦のうちの1つなのか、という意味の文章を書こうとしていたところへこのニュースが飛びこんだので、全面的に書きかえるハメになった。

 テレビの報道、各種ニュースサイトからの情報を眺めていると、どうも専門家の判断としては、軍事行動としては小規模なものであるということらしい。それは結局アフガニスタンやサウジアラビアと言ったイスラム諸国が領空通過は認めても基地使用を認めなかったために、洋上の空母や域外から直接、戦闘機・爆撃機を飛ばすことになったから、ということらしい。しかし、爆撃すべき場所というのもそんなにないし、制空権を取るためってったって、まともな戦闘では(というのは近代装備どうしで正規戦を行えばってことだけど)そもそもはなっから英米軍の敵になるとは思えない。
 ブッシュ大統領としては、冬が来る前にケリをつけたいはずだ。というのは、報復の目的がビン=ラディン氏(私自身はまだ「決定的な証拠」とやらを見ていないので、国際法廷等で彼が犯人だと認定されない限り、推定無罪ってことで「氏」を付けることにしてる。でも日本のマスコミって呼び捨てにしてるのは犯人だと見なしたことを意味しないのか?)の身柄を拘束(もしくは殺害)することにあるのなら、いずれ地上軍を投入しなければならず、それは冬になってしまったら極めて作戦行動が困難だからだ。そこから逆算して、今ごろ始めないと、ということで始めたんだろう。
 けれど、ブッシュ大統領とそのMachines(忠実な部下たち)が、最終的にどうやって終わらせるつもりなのかは、正直なところわからない。
 もしビン=ラディン氏を生け捕りにしたら、タリバン(もしくはアルカイダ?)側は彼の奪還作戦として大規模なテロを始める危険もある。逆に殺してしまったら、彼を英雄視し、彼の死への「報復」を宣言するかもしれない。ならば、今のところ、おとなしい(?)終結方法は、彼が自主的に投降することまたは彼がそれまでの支持者から見放されて(内部分裂がおきて)突き出されることだ。つまり、彼の支持者(もしくは後継者)を無力化するか、すくなくとも報復する契機を奪う形で終わらせないと世界に恐怖をばら撒くだけに終わってしまう危険が残るということだ。

 実は1つだけほっとしていることがある。
 それは、もし世界中のテロリストが密接に連携を取り合って、今回の合衆国へのテロ攻撃に呼応して、世界中で同時多発テロを画策した場合、一挙にどの国も行動を取りづらくなったはずなのだが、そういう動きがない(ひょっとしたら警備当局が押さえこんでいるのかもしれないが)ということ。たとえ「世界の警察官」を自認する合衆国であっても同時に2方向作戦は不可能である。例えば中東に派兵しながら朝鮮半島やアフリカに派兵するのは無理だ。しかも国内でテロ攻撃、なんてことになったらなおさら。
 世界を恐怖に陥れ、混乱させ、何らかの政治的な影響力を発揮することが目的なのであったなら、第2・第3の攻撃があっても不思議ではないのだが、幸いにもそれがない。ひょっとしたら、犯人は「アメリカに一発くらわしたかった」だけなのかも知れない。仮に綿密な連携をしていなくとも、発生した混乱状態に乗じて、世情を騒がすことはできたはずなのに、世界のいろんなテロ集団は沈黙したままである。(あ、別にそれを望んでいるわけじゃないぞ)
 ということは、実は、「国際テロリズム」と言っても、互いに攻撃を支持しているわけではなく、それほど強固な連携を保ててはいないということを示しているのかも知れない。

 ひょっとしたら、そのあたりに問題を解決する契機があるかも知れない。
 テロが絶えないのは、次々とテロリストを生む背景がそこにあるからだ。テロリスト予備軍となる大衆の不満がその背景にあるということだ。テロリストを他のテロリストから乖離させること。そのことで孤立して先鋭化せざるを得なくなるテロリストをその支持基盤である大衆から切り離すこと。
 ただし、それを成し遂げるのはミサイルや爆弾でないことは確かだ。


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Updated : 2001/10/08