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Title : Crackdown
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Contemporary Files #20010917
『合衆国崩壊』
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 9月3日から私は仕事で北米を訪れていた。
 最初の訪問地はニューヨークで、親会社のニューヨーク事務所に挨拶に行った後、ブルックリン地区(えっと、マンハッタン島からはイーストリバーをはさんだ東岸)にある本来の訪問地へと赴いた。ミーティング終了後、少々時間があったのでマンハッタン島を南のほうから観光地を巡っていった。ワールド・トレード・センター(WTC)にも立ち寄り、展望台まで昇った。(完全にオノボリさん状態。) その時に撮った写真がWTCでの最後のものになろうとは思いもしなかった。

 今回のテロで不思議なのは、まだどこも犯行声明を出していないという点だ。
 テロを政治的手段として見なした場合、その目的はさほど多くはない。
 1つはその行為によってもたらされる恐怖によって、大衆にある種の行動を採らせないようにするため。
 1つは実行した組織の力量(保有技術・組織としての統制)や影響力・存在感を示すため。
 1つは上記のような影響があることを背景に、テロの対象となった国や地域・組織に何らかの行動(テロ実行組織の望む行動)を採らせるため。

 1番目の目的であるなら犯行声明を出す必要はない。漠然とした不安を振りまき、いつ自分がその巻き添えを食らうかと大衆が考え出し、ある種の行動を控えたら「成功」である。が、相変わらず人は飛行機に乗るし、高いビルで勤務している。
 そして残りの2つは「オレたちがやった」と宣言しなければ意味がない。
 今回の同時多発テロは単発のものだったのだろうか?
 いや、そうなら、あれほど周到に準備したことが無駄になる。

 考えられるのは、まだ先がある、ということだ。実はまだ実行組織は目的を達成していないか、もしくは目的そのものを持っていないかだ。後者の場合はもはやどうしようもない。愉快犯的にやられたのでは防ぎ様がない。とりあえず前者の場合を考えてみる。

 実は、今回のテロのことを考えていて思い出した小説がある。それがトム・クランシーの『合衆国崩壊』だ。
 連邦議会に上院・下院の全議員が集まり、大統領が演説している時に航空機が議会に突入、爆発炎上し、大統領をはじめ主要閣僚・議員の大半が亡くなり、合衆国が大混乱に陥ると言う話だ。生き残った副大統領が大統領に就任し、事にあたるわけだが、中東の組織からの細菌兵器による無差別テロだの世界各地での紛争だの、次から次へと惨事が起きる。まあ、これはクランシーの小説なので最後は大統領ががんばって力で征圧してアメリカ万歳!で終わるわけだが、すこしこの筋書きに似たプロットが準備されてるのではないかという恐れが私にはある。
 合衆国は歴史上、本土攻撃をうけたことがない国だ。襲う蛮勇はあっても襲われる恐怖を知らない。今回の過剰とも思える反応もそのためではないか。しかし、良くも悪くも(悪くも、しかないのかもしれないが)今回のテロは合衆国の奥底に恐怖を植えつけた。それをはねのけようと、合衆国は拳を上げる。
 その時、同時に国内外でもっと大規模な同時多発テロが起きた場合、そしてそれら同士の関連性が(犯行声明がなされないことで)見えない場合、どこを叩けば事態が収拾できるのかわからない。このとき世界は大混乱に陥る危険がある。

 テロ組織がそこまで考えているのか、とりあえず今回1回だけ単発で終わるのか。
 まだまだ予断をゆるさない。


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Updated : 2001/09/17