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Title : Devil wispers me.
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Contemporary Files #20010507
悪魔のささやき
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 東急田園都市線三軒茶屋駅で4月28日深夜、銀行員が暴行を受けた事件の容疑者たちは自首してきたが、このような事件を近頃の若者はキレやすいなんて説明で正当化しちゃいけない。変に若者の心理に理解を示すフリなどしてはならない。そんなことで妙に納得したら、「だったらキレたって言えばいいんだ」なんてことが横行する。
 理由がないんだから、理由を求めてはいけない。冷厳に事実だけを見よう。キレた結果であろうがなかろうが、人を1人殺している。相手が暴力を振るったわけではない。だからその暴力の違法性が阻却されることはない(過剰防衛どころか正当防衛ですらない)。
 正直なところ、私の心の奥底には、「リンチで人を死に追いやった者には、リンチされることで罪を償え」という考え方を是認したくなる気持ちがある。そうでなければ理不尽に殺された側の無念は晴れないように思えるからだ。もちろんこれは悪魔のささやきである。罪を犯した者には、その罪の重さを自覚させ、自分で自分を責め苛ませないと更正などなしえない。その点ではこちらの事件の容疑者は自首しただけましなのかも知れない。

 4月30日に東京・浅草で女子短大生が刺殺された事件の犯人とされているレッサーパンダのぬいぐるみ帽をかぶった男は、果たして自らの行為を反省する能力はあるのだろうか。
 反省する能力のある者・反省している者に関しては、その犯した罪の深さを徹底して自覚させるということは有効なのだろう。しかし、殺人に快楽を覚えたり、いわゆる「劇場型犯罪」を実行する者に、更正の可能性はあるのか。加害者に被害者と同等の人権を認めることが妥当なことなのか。平穏に生活したいと望んでいるだけの平凡な人たちの日常を、平気でかき乱す者を圧倒的大多数の平凡な人々と同様に扱う必要はあるのか。もちろんこれも悪魔のささやきである。

 しかし、この悪魔のささやきは私の中で少しずつ大きくなりつつある。


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Updated : 2001/05/07