Location : Home > Contemporary Files > 2001 Title : Distibution |
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満員電車が駅についてドアが開いたとき、(開くドアのすぐ前を除いて)最もスムーズに外へ出やすいのはどこにいる人たちなのか。それは反対側のドアの側にいた人たちなのである。これは砂時計であの小さい穴から砂が落ちる様に似ている。
同じく駅の話になるが、混雑した駅の通路はどこか流れが速いか。それは通路の中央である。これは、ちょうど川で水が流れる様に似ている。
人間が、それぞれの意志に従って行動しているときでも、あまりにも多数がいて、とりあえず自分の周囲の人と衝突しないようにという単純な行動原理にしたがうしかないような状態では、物体の集合体の振舞に似た様子になる。群集は格好の数学的記述の対象だ。
権謀術数が渦巻いて、理知的な要素が全然ない(!)ような政治の世界ではあるが、政権維持の長さは、実は偶然に支配されているのかも知れない。というのは、オペレーションズ・リサーチ学会の会報(「オペレーションズ・リサーチ」Vol.46 no.1)に面白い投稿がされていたのを読んだからだ。(詳しくは本文にあたって確認してほしい。)
まずは、戦後の首相の在任期間を長いほうからプロットしてみると下図のようになる。
広島大学工学部の尾崎氏の報告によると、この政権の長さの分布は指数分布にしたがっているのではないか、ということだ。(でも「政権交代がポアソン過程に従っていると主張したいわけではない」らしい。)少々乱暴だが、尾崎氏は平均795日の指数分布に従うと、計算している。これが仮に正しいとすると、結構おもしろくなる。というのは、このことは1日あたり1/795の確率でランダムに起こる事象と同じ動きだということを意味する。
つまり、(もし、政権の交代がポアソン分布にしたがっているのだとすれば)政治家が永田町界隈で権謀術数を繰り広げられることが、実はATMに客が来る間隔を計算するのと同様にできてしまうという、実に皮肉なことになっているというわけだ。
これはこれで面白い。
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Updated : 2001/03/07
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