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2日、カンボジア下院はポル・ポト派を裁く特別法廷設置法案を可決した。
ジェノサイド条約(「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約」)という、「人道に対する罪」を裁く根拠として1948年に採択された条約(発効は1951年)がある。この条約では戦時・平時を問わず*1集団殺害(ジェノサイド)は国際法上の犯罪である(第1条)とし、国家元首・公務員・私人を問わず*2処罰することが規定されている(第6条)。そしてそれを可能とするための国内法の整備の義務化と、国際刑事裁判所の設置を予定した。常設の国際刑事裁判所は裁判所規定が採択された段階であり、まだ実際には設置されていないが、個別の地域紛争に関しては現時点ではルワンダ国際刑事裁判所と旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所が設置され、審議が継続中である。虐殺・人道に対する犯罪・戦争犯罪など、紛争中に重大な人権侵害があった場合、国際刑事裁判所を設置して裁くことになっている。基本的な方針として犯罪は徹底的に追及してその責任を負わせるということだ。今回の特別法廷設置も、この流れに属するものである。起訴の対象となるのはポル・ポト派が政権の座にあった1975年から79年の間の虐殺である。
一方、「人道に対する罪」が行われながらも、国際刑事裁判所の設置に持ちこまないで、「真実・和解委員会」などが設置され、何が行われたかを明らかにはするけれども、敢えて免責し、紛争後の社会再生のために和解を優先するという動きが現れつつある。その1つが東チモールにおける「真実・受容・和解委員会(Commission for Truth, Reception and Reconciliation)」の設置である。これは南アフリカ共和国の例を踏まえている。
南アフリカ共和国では、アパルトヘイト時代の負の遺産に対する解決として、「アパルトヘイト犯罪の抑圧及び処罰に関する国際条約」(1973)に基づく国際刑事裁判所の設置によって責任追及することも可能であったはずだが、マンデラ大統領(当時)は和解を優先した。
さて、カンボジアにとって徹底した責任追及と国の再建のための和解とどちらかを優先すべきか…という議論の果ての結果なのだろうか、という気がしている。裁かれるべきポル・ポト派が以前ほどの勢力を維持できなくなり、裁いても武力でその結果を無視させるようにすることが困難になったことが大きな要因であろう。もしそうでなければ、国際刑事裁判所の設置がこんな時期になることはなかったのではないか。
しかも、首謀者が既に死亡していたりして、どこまで真実が追及できるか、なかなか困難ではないかという気がする。
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Updated : 2001/01/05
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