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Title : Orthodoxy
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Contemporary Files #20001211
正統性をめぐって
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 合衆国の次期大統領選挙結果をめぐる訴訟合戦は、もはや泥沼状態である。
 フロリダ州最高裁が州全体で疑問票の再集計を命じたことを受けて、マイアミデード郡の手集計作業を開始する…のだが、連邦最高裁判所はフロリダ州最高裁に対し、フロリダ州で同日開始された疑問票の手集計を中止するよう命じた。
 新聞報道及びCNNのサイトしか今のところ見ていないので判決理由や根拠となっている法律がどうなっているのかよくわからないが、まあ、おそらくこういう事態になるなんてことは今まで想定されていなかったので、それぞれの立場の人がそれぞれの置かれた状況下でそれぞれ判断した結果なのだろう。合衆国というのは妙にマニュアルが好きだから、異常事態にはいろんなマニュアル(命令指示書というべきか)が作動するのだが、うまくいってないというのは、おそらくそれがないのだ。政治学科に在籍している学生は、来年の研究のテーマには事欠かないことだろうな…などと想像するが、まあ、現実に大統領を決めないと、来年1月20日以降は困ったことになるはずだ。

 この「戦い」は、映画・『理由なき反抗』で出てくるチキンゲームの様相を呈している。先に降りたほうが負け−でも、今は圧倒的にゴア陣営のほうがフリだが−だけれども、どちらも負けを認めたくないからどんどん崖のほうへと車は近づく。このまま突っ込むと、行われるはずの大統領就任式に間に合わない。

 でも、なぜこんなに大騒ぎするのか。
 いろんな見方が可能なわけだが、私には、合衆国なりの民主主義へのこだわりが見えるような気がする。(合衆国が世界に押しつける「民主主義」が真理だなどと言うつもりはないが。)
 おそらく彼らにとっては権力はただ握ればいいというものではないのだ。後ろ指を指されるような握り方をしてはだめなのだ。権力の正統性(及び正当性)の確保、これが重要な要素。それまでの権力(制度)の正規の手続きにしたがった承認による権力の継承、これへのこだわりである。権力の握り方は「汚く」ても、握ってからの振るまいがよければいいじゃないか…とは考えないようだ。

 正統化の方法には

(1)伝統による正統化

前政権からの禅譲、認可によるもの。 例:中国の王朝交代。天皇による「征夷大将軍」任命。
この変種として「事実による正統化」がある。

(2)合法化による正統化(正当化?)

法律を制定して(または既存の法律に則って)権力を手中にする。
例:ワイマール憲法下でのヒトラーの政権獲得。

(3)暴力による正統化

(1)(2)なんて全く気にせず、実力だけで支配する。

 という方法があるんだけれども、(2)の方法に執着しているわけだ。

 「どうでもえぇから、はよぉ決めぇな」と密室で決めるのと、どっちがいいと思うのかは国民次第だけれども。


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Updated : 2000/12/11