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Title : Crisis is here.
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Contemporary Files #20000828
すぐそこにある危機
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 今週は海外のメディアも含めて、バレンツ海に沈んだロシア海軍のオスカーII級攻撃型原潜・クルスク号の話題で持ちきりだった。沈没の原因は未だ不明だが、救助手段を持たないロシア軍の、制度的・経済的・倫理的退廃は想像以上なのかも知れない。
 これまでにも原潜は5隻沈没している。2隻は合衆国だが1960年代の話で、最近はそのような事故はない。(報告されていない、というのが正しい表現だが。) 残りの3隻がロシア軍で、ソ連時代(70年代に1隻、80年代に2隻。)に沈没している。5隻とも沈没の現場は大西洋側だ。

 潜水艦の存在意義はその隠密性にある。特に原子力潜水艦は燃料補給のために浮上する機会が、化石燃料によるエンジンの潜水艦と比較して非常に少なくて済み、発見のしにくい深海に潜んでしまうとそう簡単には見つからない。この性質は核抑止力を機能させるのに大きな働きをしている。核保有国が互いに核を使わないのは核による報復を恐れるからである。もし核による攻撃を行うのであれば、前もって報復攻撃のための核兵器を封じ込めるために敵の核兵器発射サイトを破壊し尽くしておく(少なくとも使用不可能にする)必要がある。しかし、深海に潜む原子力潜水艦は、全て発見しつくし破壊し尽くすことが極めて困難である。核兵器保有国が原潜を持ちたがるのはそのためだ。原子力を制御する技術があり、潜水艦を持っているなら、その気になれば原潜を製造できるはずだが、ほとんどの原発保有国(かつ核兵器非所有国)はそんなものを開発したがらない。必要がないからだ。
 しかし、原潜の現保有国が核抑止力信仰を捨てない限り、原潜はいつまでも潜みつづけ、時折、この手の事故が起きてしまうのだろう。でも、これまでは全部大西洋岸だったからと言って、これからもずっと層だとは限らない。米ロの太平洋艦隊にだって原潜はいるだろうし、中国だって持っている。日本海やオホーツク海で同様の事故が起らないとは、誰にも言えないのだ。


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Updated : 2000/08/28