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Title : Human-Genom
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Contemporary Files #20000703
ヒトゲノム解析終了
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 これ、実はスゴイことなんだけど、日本ではたんたんと報じられているだけで全然騒いでない。
 日米欧の公的資金で進められてきた人間の遺伝子解読計画(国際ヒトゲノム計画)は6月26日に配列の概要の解読を終了したと発表した。この計画と競争する形で進められていた民間のバイオベンチャー会社セレラ・ジェノミクス社は完全な配列を解読したと発表した。遺伝子を構成する4つの要素がどのような順番で並んでいるかを特定して行く作業なのであるが、その数実に30億対を超えるので、大勢の研究者が共同して行うか、莫大な資金と施設を導入して行うしかなかった。まあ、それを実行したってこと。

 なぜこれが「スゴイ」かっていうと、1つめは研究のスタイルといい規模といい、数年前なら考えられないことだったから。通常この手の大規模な研究は国家プロジェクトとしてやるんだろうけど、世界中でデータを共有して、分担して、わかんないことを聞きあい、確かめあって完成させてしまったこと。そして、2つめに解析技術(とその背景にある技術)が数段にアップしたと言うこと。遺伝子を分離して物質を特定する技術だけでなく、その配列を解析するのは、かなり数学的な処理が必要で、最近のコンピュータの処理速度の進展も背景にある。
 しかし、本当のスゴさ−恐さというべきか−は、その情報を用いれば病気(特に遺伝的な影響の大きいもの)の原因や、ある種の薬がある個人に効くのか効かないのかを予見することが不可能ではなくなるということだ。このこと自体はすばらしいように見える。いや、すばらしい。しかし、問題はその使い方である。
 例えば妊娠中の胎児が成長すればある種の病気にかかることが遺伝子上解析されたとして、堕胎することの是非という問題については、これまでも採り沙汰されている。
 兵器としての利用も可能であろう。特定の肌の色を示す遺伝子のある人間にだけ作用する毒素というのは不可能でないかも知れない。

 悪意と熱意と技術があれば、この世にできないことはない。


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Updated : 2000/07/03