Location : Home > Contemporary Files > 2000 Title : Dialogue between South and North |
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さて、今週の大きなニュースは何と言っても、韓半島*1における大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国の首脳会談だろう。日本においては皇太后の崩御*2もニュースなのだが、こちらのほうが将来への影響が大きい。
今回の会談は、直前に日程が1日ずらされるなど、本当に実現するのかということまで疑問にもたれたものであったが、第1回の会談としては非常に成功したものと言えるだろう。人間同士が出会い、話し合いをすると言うことがどれほど重要かということを再確認できたとも言える。終始朝鮮民主主義人民共和国側のペースで進められたことは否めないが、非友好的で決裂するよりよほどましなので、まあ、よしとしよう。問題は共同宣言で謳われた内容がどこまで実施されるかということになるだろう。
さて、私の手元には1996年に大韓民国の三星経済研究所が発表した「南北統一シナリオ」と題する報告書の抄訳(世界週報編集部訳;時事通信社)がある。この報告書によると両国の統一シナリオには次の4つが挙げられている。
概要 | 条件 | 展開 | |
合意型 | 南北の政権が国民の選択に従い対等な立場で協議して平和的に統合する。 |
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誘導型 | 韓国と米国が援助を武器に北の体制を南の体制に転換させていき、韓国主導の統一に導く。 |
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自滅型 | 北朝鮮が体制矛盾と内紛を解決できずに自壊し、韓国が北朝鮮を併合する形で統一。 |
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衝突型 | 北朝鮮が危機要因を解決できず、自ら戦争をし掛けるか、米国の先制攻撃を誘発し、敗戦することで統一。 |
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こうして一覧表にしてみると、ポイントが浮き上がってくる。まず朝鮮民民主主義人民共和国の指導部のリーダーシップが強力であるか脆弱であるか。つぎに中国の不介入である。そしてどの方策であっても最終的に北は瓦解し、南主導で統一が為されるというシナリオである。(もちろん韓国のシンクタンクが作成した報告書なのでその結論は当たり前と言えば当たり前なのだが。)この4つのシナリオの中で、起りうる順番としては誘導型>自滅型>合意型>衝突型としている。現実性・望ましさから言ってもこの順番であろう。しかし、中国(及びロシア)がどのようにこの問題に関わるか(または関わらないか)でこれらの前提が変わる。この意味で共同宣言の第1項目・統一問題の自主的解決がどこまで守られるかは大きなポイントである。
合衆国がどう出てくるかについてであるが、1995年に発表された「第3次東アジア戦略構想」(いわゆる「ナイ・イニシアティブ」)ではこう記されている。(世界週報編集部訳;時事通信社)
北朝鮮の脅威が低下した場合でも、強固な米韓安全保障関係がこの地域における米韓相互の安全保障上の利益を守る、というのが我々の考えである。
すなわち、北の変化に関わらず、(新たな東アジア戦略構想で見直しがかからない限り)現在の米韓体制は変わらないということだ。確かにリアリスティックな目で見ればこれは当然の戦略と言える。今回の会談は極めて友好的であったけれども、やはり、まだ、いろんなことを約束しただけに過ぎない。これらが確実に履行されるかをこれからよく留意して行く必要があろう。
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Updated : 2000/06/18
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