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Title : The God Land
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Contemporary Files #20000522
「神の国」
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 森首相が15日の神道政治連盟国会議員懇談会結成30周年祝賀会の席上、「日本の国、まさに天皇を中心にしている神の国であるぞということを、国民のみなさんにしっかりと承知していただくということ、その思いで我々が活動して30年になったわけであります。」とあいさつをした。

 一通りの批判はマス・コミがやっているので、ここでは同じことは繰り返さない。
 だいたい、「失言」というものは、「言っちゃいけないのに言ってしまった言葉」なのではなくて、「本当はそう思ってるんだけど、そう思ってないと思わせなきゃいけないのに、ポロッと出てしまった本音」なんだから、あれ、森さんの本音だと思うよ。だから、悪いと思ってない。だから謝らない。批判する側も、本気で批判したいなら、「発言したことを取り消せ!」じゃなくて、発言の根拠そのものを粉砕すること考えりゃいいのに。

 現在の日本が「まさに天皇を中心にしている神の国である」なんてのは完全な事実誤認なのはわかりきったこと。森首相のあいさつ全文を読んでも、そんなことを言いたいのではなくて、「古来日本はそうであり、本来そうあるべきだ。」というニュアンスが感じられる。仮に森首相が民俗学を猛勉強してて、日本の歴史における、庶民の生活と神の関わりなんかに通暁してて、いかに八百万(やおよろず)の神が生活と密着していたかなんて路線で話をしたのなら面白かっただろうな。この点ではなかなか否定しにくい。正月にはかなりの数の日本人が初詣に行くし、受験シーズンには合格祈願のお守りを買うし、子どもが出来たら戌の日に腹帯をもらいに行ったり、生まれたら初参りとかしてるじゃない。
 そういう意味で「神の国」と言ったとしても、その前に「天皇を中心にしている」とついていることで、日本人の生活の端々に入り込んでいる八百万の神のことではなくて、神武から始まる天皇の系列・支配体制と、明治以降の神格化された(現人神としての)天皇とか、「神州不滅」なんてスローガンとかぶってきちゃう。
 でもねぇ、日本の政治で天皇が中心だった時代ってほんの少しだよねぇ。飛鳥時代は豪族のリーダーみたいなもんだし、平安時代には摂関政治、それ以降は幕府による武家政権が延々と−あ、建武の親政があったか−続いたし。それに、そもそも、天皇家って日本人なの? という説もあるくらい。

 マス・コミも野党も、「首相として不適切な発言」と批判するんじゃなくて、日本とは本来どういう国かっていう論争をしてほしいな。逆に、野党側が「日本には天皇も神も重要でない!」なんて言ったら、これはこれで面白いことになるから。

 まず、日本の政体ってさあ、分類上、立憲君主制(constitutional monarchy)なんだってば。たとえばCIAのサイトとかご覧よ。そう書いてあるから。統治はしないにしても君臨する君主がれっきとして存在してる。そして憲法がある。大統領はいない。まあ、議院内閣制とも言えるけど、現体制ではちゃんと君主がいて、しかもその君主がいないと政治が行えない仕組みになっている。
 え? そんなことないって? いやいや、憲法をよく読もうね。第7条に天皇の国事行為ってあるよね。天皇(及び皇室典範が定めるその後継者)が突然いなくなったら、今の法律では困るんだって。国会の解散は69条に基づいてでもできるけど、召集ができない。現在の憲法ではね、天皇を制度運営の一部として必要としてるんだってば。だから立憲君主制。

 「発言が不適切」と責めて選挙の具にするんじゃなくて、どういう発言でなければならなかったのかを言ってくれたほうが、次の日本をどうするのか、その選択肢が明らかになっていいと思うんだけど。


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Updated : 2000/05/22