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Bookshelf #010 : Nacht und Nebel
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『夜と霧』
−ドイツ強制収容所の体験記録−
(V.E.フランクル)

 ずっと私のページをご覧の方は、ここしばらくフランクルの本を読んでいることが見てとれたと思う。これは、今思索中のテーマにかかわるので、まとまり次第表現させていただくものとして。

 この『夜と霧』を読むすすむ程に、暗く重たい気持ちになっていく。
 この世の不条理な悲惨を次々と見せつけられるからだ。
 不幸や悲惨というものは、自業自得な面があるのであれば、どんなにひどくても、やはり、その人が背負うべきものであると言えるだろう。自らの選択(もしくは不作為)でそういう状況になったのだから。ユダヤ人虐殺の問題は−ヒロシマ・ナガサキもそうだが−それとは違う。ユダヤ人に生まれることは、本人の選択ではない。ヒロシマ・ナガサキにあの日・あの時に居合わせるのと同様に、偶然の産物である。にもかかわらず、それだけの理由で大量に殺されていく。

 ふと、「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」(『プリズメン』T.W.アドルノ)という言い回しを思い出した。あの時以降、命には平等に価値がないようになってしまったのかもしれない。

 フランクル[心理学]の強さは、そういう絶望的な状況においてでも、希望と人生に対する意味を見失わないことである。いかなる人生にも意味があり、自分が意味のある人生を求めているのではなく、意味のある人生が自分を求めている、ということだ。

 すべては与えられている。
 すべては許されている。
 ふとそう思った。

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Updated : 1999/03/19