渡る世間に鬼は無い

やまもと雄大

 昔の人は渡る世間に鬼は無いと言いました。世の中の見ず知らずの他人はこわく見えるが、困った人が目の前にいれば助けるような優しい心を皆が持っているという意味ですが、現代のテレビっ子はきっと「間違っているよ、渡る世間は鬼ばかりって言うんだよ」と教えてくれるでしょうね。橋田寿賀子さんのドラマもすごい視聴率ですが、子供達は現代社会の本質を見抜いていて渡る世間は鬼ばかりと指摘したように思えてきます。
 あなたは世間を渡るとき、どちらの教訓を生かしておられるでしょうか。私は両方を生かしています。人間に対して最初から過大な希望をいだくと裏切られたとき、それがうまく対処すれば解決できる問題であっても、その事柄については一切を拒否してしまうことになります。この状態に陥りやすい人はたとえ問題から逃げたとしても、また同じような問題で悩むことになります。これを解決するには基本的な考え方を変えたほうが良いかもしれません。つまり渡る世間は鬼が多いぞと覚悟を決めることです。
 しかし、ここで大事なのは決して自分が鬼にならないことです。自分が鬼と化しては人の心の中の仏を見出すことができなくなります。いくら鬼が多いと言っても人間には二面性があるので、いい人と呼ばれているタイプの人間も存在していなければおかしいですよね。自分にとってのみプラスになる人間が必ずしも良い人とは限りません。みんなが口を揃えたように「あの人はいい人だ」と言ってもらえるような人間になりたいものです。
 数多い鬼さんたちの中で仏の誰々さんに出合うととても嬉しくなるでしょ。この人と出会えて本当に良かったと心から思えます。だから私は他人に対して過大な期待を持たないし、そうかいって冷めている訳でもありません。人物の言動を論理的に分析し、感情的にならないでトラブルを解決できるように自分の心と体を訓練していきたいと考えています。聞くところによるとストレスをうまく取り除く訓練方法があるそうです。全身の力をぬいてリラックスするとか、改めて自分を見つめ直し、その時に思ったことをメモするという方法を学校で教え始めています。
 斯くいう私もコミュニケージョンがへたですので、もっといろいろな人と話をしたいと思っています。

2000年11月30日