皆様こんにちは。
地球環境の話を、「事実はどうなっているのか」ということを、いろんなところで話して参りました。もう8年くらい続けていますが、今までに200回ぐらい日本の各地で講演をしました。
全国の中学校や高校・大学、また、会社等で社会人の人を対象に、いろんなところで、「地球環境の事実」について話をしてきまた訳ですが、今日もその「地球環境の事実」について話をします。 「今、私たちが住んでいる地球は本当はどうなっているのか。これからどうなって行くのか」という話をします。
この写真は皆さんがご存じの地球です。すごいですね。私たちはこうやって地球を外から眺めるという、すごい科学技術を持つに至りました。
さて、この青く美しい星、地球ですが、この地球について「未来が危ない」とか「もう手遅れである、人類に未来はない」とか悲観的な話をよく耳にします。
では、実際の所はどうなのでしょうか。本当にもう駄目なのでしょうか。今日はそんな話させていただきます。皆さん、知っている様で知らない地球の本当の姿・・・についてです。
本当に我々は、今地球環境をどう理解しなければならないのか、どういった行動を起こしていかなければならないのか。その辺の話をさせていただきます。
私を見て、ひげをはやした変な人だなと思った人もいると思います。あごに草(ひげ)がはえていますが、これは頭のてっぺんが、あ、この頭のてっぺんを業界用語では頭頂部と言いますが・・、森林破壊をおこしていますので、あごのほうに植林をしたつもりです。てっぺんの森林破壊分をあごの方で補っているのです。
まあ、そんな冗談はどうでもいいのですが、その、森林破壊の話も、今日はしようと思っでいます。
さて、みなさんは「環境破壊」というと、どのような言葉を思いうかべますか。
地球の砂漠化・森林破壊・温暖化・環境ホルモン・産業廃棄物の問題等いろいろありますね。ご存知の様に環境問題は一言で「これ!」と言う様なまとめ方は出来ません。非常にたくさんの分野・要素があって問題は多岐にわたっています。
今日は、いっぱいお話ししたいのですが、そのいろいろある環境破壊の中でも特に緊急かつ重大な問題であるΓオゾン層破壊と地球の温暖化」について、時間も限られますのではしょった内容になりますが、要点をお伝えしたいと思います。
ではまず、「オゾン層の破壊」からいきましょう。
このチャートを見て貰えますか。見た事あります?
<カナダ・オタワの新聞記事>
これはカナダのオタワで出されている新聞の記事です。オタワってご存知ですか?そうカナダの首都ですね。そう言えば私の身のまわりにも「カナダから来た人がオッタワ」なんてね。
まあ、しょうむない冗談はおいといて、ここに「UVIndex」って欄がありますがご覧になれますでしょうか。
ところで UVって何か知っていますか?そう、紫外線のことです。同じ欄に「20min」という数字があります。この数字は「陽にあたってもいい時間」を示します。そうなんです、オタワでは紫外線が強いために太陽にあたっていい時間は20分が限度ですよ、と言っているのです。
さきほどはカナダの例でしたが、今度はドイツの話です。「どこのドイツ」なんて聞かないで下さいね。
さて、このチャートにはドイツの地図と数字が書かれていますね。この数字はいったい何でしょうか?
2〜9の数字がついている地域は、30分〜120分が日にあたる許容限度だということです。つまり、この地域に住んでいる人は、2時間以上日にあたったら危険だということです。 数字が10を超えますと「〜30」つまり30分以上日に当たるのは好ましくない地域となります。改めてドイツの各地域の天気予報の絵の中に書かれている数字を見ますと、数値は全ての地域で10をこえています。つまりどういう事ですか?。そうです、すべての場所で30分以上日に当たってはならない、という意味ですね。これがドイツの現実です。
さて、カナダとドイツの例を紹介しましたが日本はどうでしょうか。カナダでは20分以上、ドイツでは30分以上日にあたってはならないと新聞に書いてありました。日本ではどれくらいなら日にあたっても大丈夫なんでしょう。
ちょっとみんなに聞いてみましょう。
<生徒:3時間・わからない等>
わからないというのは、日本ではこのようなことを言わないからですね。カナダやドイツで言っているこのようなことを、日本ではなぜ言わないんでしょう。ドイツなんかで新聞に書いてあるのに、日本ではなぜ書かないようでしょう。
言わないというのは、二つ理由が考えられますね。
一つは「日本では紫外線が降っていないから言う必要がなくて言わない」。
またもう一つはΓ日本人はめちゃ強いから、紫外線にあたっても平気だから言わない」という、どちらかの理由で言わないのかも知れません。
でも、残念ながら現実にはどちらでもありません。
日本に紫外線は降っていない?
いいえ、カナダやドイツと同じように降っています。
日本人は紫外線にめちゃ強い?
いいえ、そんなことはありません。
では、なぜ日本ではこのようなことを言わないのでしょうか?海外から情報が伝わってこないのでしょうか?情報があっても伝える必要が無いと考えられているのでしょうか。
これは非常に難しい問題です。ここで一言では言えません。経済・政治・行政・企業とか深く関係しています。ここでは答は言いませんが、ぜひみなさん、考えてみてください。
ここでは日本でも(紫外線の危険性の)状況は同じだということを理解しておいてください。
では次に、なぜ30分以上日にあたるとよくないか、という話をします。
オゾン層は私たちの頭の上20Kmにオゾンが集中的に存在をして出来ています。
このオゾン層がいままでは紫外線Bをカットして来ました。ところが、我々がフロンでこのオゾン層を破壊したため、今まではほとんど降っていなかった紫外線Bが地球上に降り始めました。この事はどこかでお聞きになったかと思いますが、では、紫外線Bってなんでしょう。そもそも紫外線ってお分かりですか?
この図の色がついている部分が、可視光線といって目に見える光線です。赤から始まって橙・黄・緑・青・藍・紫とならんでいます。小学校か中学校で一生懸命に覚えました。「せきとうおうりょくせいらんし」ですね。可視光線のスペクトルの並び方です。
さて、よく見ると赤の横に赤外線があります。
赤外線は赤の外にあって目に見えない光なのです。逆に紫の横に紫外線が書かれてあります。紫外線は紫から外にあって目に見えない光です。うまくネーミングしましたね。
そして、更に紫外線について見ると、紫外線にA・B・Cと名前がついていますね。紫外線に種類があったってご存知でしたか?
紫外線Aは以前からみんなが知っていたいわゆる紫外線です。
紫外線Aは以前から地上に降っていました。
次は紫外線Bです。紫外線Bの問題は後で説明するとして、紫外線Bはこれまでオゾン層によってほぼ100%カットされていましたから、地上にはほとんど降って来ていなかったのです。
オゾン層が破壊されることによって、今紫外線Bが地上に降り始めたのです。実際にはどんな害があるのでしょうか?
そもそも、紫外線AとBでは、どんな性質の違いがあるのでしょうか?
図を見ていただくと分かりますが、紫外線Bは紫外線Aより可視光線から離れています、そしてX線・ガンマ線といった放射線に近くなるのです。最近東海村の臨界事故で話題になったあの放射線です。放射線は癌を誘発する力があります。つまり、紫外線BはAより放射線としての力が強く、癌を誘発する力が強いということです。
その紫外線Bが、今地球に降り始めたのです。
紫外線Bはヒフ癌を誘発します。だから、外国では日にあたる時間制限をしているのです。
紫外線BはDNAを破壊します。
DNAって何ですか?
ドコサヘキサエン酸? あれはDHAです。
頭が良くなるとかどうとか言います。私は控えています。これ以上頭が良くなったら・・。・・・・ いえ、何でもありません。
DNAというのは細胞の中の遺伝子で、細胞がどう分裂したらいいのかという情報をもっています。
紫外線Bはそれにキズをつけ、情報を書き換えてしまいます。そして細胞が分裂する時まちがった情報が伝えられ、細胞は異常な分裂を始めます。ヒフ癌です。
しかし、人間の体はうまくできていて、免疫機能が働きそれを修復しようとします。遺伝子に異常な情報が書かれた事を見つけて修復にかかるのです。ところが、紫外線Bは、その免疫機能をも低下させ、修復をさせないようにしてしまいます。そして、ヒフ癌が進みます。
さらに重要なことが分かっています。それは「細胞が若いほど紫外線Bの影響をうけやすい」ということです。この事が何を意味するかわかりますか? 校長先生より私、私より君たち、君達より弟や妹・赤ちゃんのほうが紫外線Bの影響を強く受けるのです。
それは、なぜでしょうか、若い方が細胞分裂が早い。そして、遺伝子のキズを直しているひまもなく分裂を繰り返すから、異常な細胞がたまる。そして癌になる。
多くのヒフ癌はふつう40歳くらいから発生すると言われて来ました。長年の紫外線の影響が蓄積していって40歳を過ぎるころからわっと影響が出て来ると言われて来ました。しかし、最近皮膚がんの発生年齢はどんどん低年齢化しています。
オゾン層破壊に関して、もう一つ重要なことがわかっています。
それは、オゾン層破壊を引き起こすフロンは地上で放出されてから15年以上かけて到達をするという事です。
みんなが、オギャーと生まれた、その時放出されたフロンが今の破壊を招いています。
我々はフロンを何の規制もなく捨てて来ました。15年以上の時間をかけて空気よりも重いフロンは上空のオゾン層に到達します。
そうです、時間がかかるのです。
しかし、この15年という言葉には非常に重要な事実がかくされているのです。
何でしょうか?
そうなんです。今現在オゾン層で起こっているオゾン層破壊は15年前に地上で放出されたフロンが引き起こしたものです。
それは、全生産量のフロン6000万トンの15%でしかありません。
では、残り85%のフロンはどこにあるのでしょう。
車のエアコンの中?
冷蔵庫の中?
いいえ、違います。残念ながら残り85%のうちの9割はもうすでに空気中に出てしまったのです。
今、それらは時間をかけて上昇中なのです。
今でも30分以上日に当たるのは危険という状態です。今の5〜6倍のフロンがオゾン層破壊にまわれば・・。非常に厳しい未来が待ち受けていると言わざるを得ません。
国連も警告をしています。
「今フロンの排出を完全にとめても、これから60年間はオゾン層は元には戻らない。20〜30年後には壊滅的なことがおきるのはさけられない」と。
それこそ、1〜2分でも、日にあたるのが危険な状態がおこるかもしれません。
非常に危機的な事態を迎えようとしながら、オゾン層破壊の主たる原因であるフロンは世界中で排出は止まったのでしょうか?
いえ、残念ながら止まっていません。
日本はどうでしょう。ご家庭で100%フロン回収をしていますか?日本での回収率はたった10%です。残りの90%はいまだに放出されているのいです。
中国等の途上国は明言しています。オゾン層を破壊するフロンをどんどん今後も作ると。これらのフロンは国際的に生産を規制されている物質です。
これから確実に今よりもっと厳しい時代がくると言えます。
ここまでお話しした事は科学的な事実です。国連等の公共機関が科学的な事実を裏付けにして発表して来た内容です。欧米ではそういった事実を受けて、取り組みが始まっています。
オーストラリアや二ュージーランドでは、プリントに「直射日光は10分以内に」と書いて生徒に配っています。また、「SLIP:長袖を着なさい。SLOP:日焼け防止のローションを塗りなさい。SLAP:帽子をかぶりなさい。WRAP:
サングラスをかけなさい。」という標語を書いたポスターを教育委員会が作って学校に配りました。
デンマ−クやドイツでは、外出時間の制限・帽子着用・長袖の奨励・サングラス着用などが訴えられています。
情報が遅い日本でも一部ですがとりくんでいるところがあります。
<大阪のある保育園>
ここの子供達は外に出るときは、このように後頭部に布きれのついた帽子をかぶります。首筋に日光があたり、ヒフ癌が出来やすいからです。ちなみに、この帽子はオーストラリア製のものです。日本ではこういった取り組みは始まったばっかりで、ごくごく一部でしか行われていません。
この写真は同じ幼稚園のプールですが日よけが付けられています。園長先生が事実を聞いて行動を起こしました。子供たちは外に出る時は日焼け止めローションを塗ってプールもその上で入ります。
いまどき日焼けコンテストははやりません。
ところで、この学校のプールは日除けがついていますか?
<教師:ないです>(苦笑)。
この様に、日本でも数少ないが取り組みが始まっています。
ここでみなさんに二つのことをお願いしたいと思います。
1、生命を守って下さい。
自分の生命、子供達の生命、みんなよりももっと危ない環境にいる弟や、妹を守ってあげてください。そのために、一つは、「事実を伝える」ということ。今日聞いた話をみんなに伝えて下さい。家に帰って、お父さんやお母さんに、こんなことがあるんだって語って下さい。友達や弟や妹に話して下さい。
2、もうこれ以上、フロンを捨てないで下さい
今でも日本ではほとんどフロンは回収されていません。冷蔵庫やエアコンは大型ゴミで出すと破砕機でバラバラにされ、フロンが放出されます。それが、未来のオゾン層を破壊するのです。スウェーデンやドイツといった∃−ロッパの国々は深刻に受けとめ、フロン回収を必死でやっています。
数年前こういう場面がありました。
日本のアナウンサーがスウェーデンでフロンの回収している人にインタビューをしました。
Γスウェーデンでは、フロン回収を本気でやっているんですね」と。
聞かれた人はΓ当たり前でしょう。だって、我々が捨てたフロンがオゾン層を破壊して、生命を脅かしていることが事実としてわかった以上、少なくとも何かを始めて当たり前じゃないですか」とおっしゃいました。
アナウンサーが日本では(このような取り組みは)本当に始まったばかりでまだまだ回収されていませんと伝えると非常に複雑な表情をされました。怒ってはいないんだけど悲しそうな苦しそうな・・。そんな表情をしながらこんな言葉が出て来ました。
「日本って世界で最もお金があるんじゃないですか?世界で最も優れた民族って言われているんじゃないんですか?なぜ、その日本が物質的にはあまり恵まれていないスウェーデンですらできることを、なぜあなた方はできないんですか?」
アナウンサーは絶句しました。
答えられなかったのです。
ぜひみんな、そのアナウンサーの横にいると想像してみてください。
「なぜ、我々が必死でやっている、こんな簡単な事ができないのか?」というスゥエーデンの方の質問に、アナウンサーの代わりに答えてあげてください。こういう理由があるから日本ではフロン回収ができないのですと。胸を張って答えることがもし出来るなら・・。
出来ないでしょ。胸を張って言える様な正当な理由なんて無いんです。
我々が行動をおこさない理由は簡単です。「面倒臭いのです」「お金の負担が嫌なんです」。事実を知らされていない私達にとって紫外線は恐るるに足らずなのです。そんな物に時間は割けない、お金は使えないという事なのです。
是非どうかもう、これ以上フロンを捨てないでください。やってみてください。家でエアコンが捨てられようとしていたら、「ちょっとまった。フロンがでるよ」と言ってください。そして、回収を製造メーカーにお願いするとか、市役所に相談するとか、いろんな声をあげてください。誰も声を出さなければ何も変わりません。多くの人が声を出し続ける事が必要なのです。