続いて本日の第2のデーマ、「地球の温暖化」に入ります。
 その前に「ここまでご覧になっていかがですか?」
 知っている事ばかりでしたか? 聞かなくてもいい様な事ばかりでしたか?
 恐らくほとんどの人にとって初めての話だったと思います。少なからずショックを受けた人も多いと思います。
 でもね、どれも事実なんです。私の推論とか一部の科学者が仮説を立てているといったレベルではありません。公の機関が発表をし警告を発している事実なのです。さて、恐ろしい話は続きます。

 2枚の写真をご覧下さい。
 この写真はスイスの同じ場所を撮ったものです。上の写真が150年前の写真、下の写真が現在の写真です。これを見ると、150年前には麓まで流れこんでいた氷河が現在は無くなっているのがわかります。
 現在氷河は写真のどこにもありませんね。 150年の間に氷河が消えたのです。
 また、下の写真はエベレストの氷河が細くなってほとんどなくなってしまった写真です。何となく白いので氷河がある様に見えていますが、ここに見えているのは岩で氷は消え去っています。あちこちに池はありますが氷河は溶けてなくなってしまいました。この様な変化は世界中のあちらこちらで見られるものです。
 別の写真では旱魃(かんばつ)でやられてしまった、とうもろこし畑を写しています。これらの様に世界中で干魃や洪水がおこっています。今世界中で異常気象がおきているのです。(編集後記:2002年の夏に欧州の各地で記録的な豪雨があり歴史的な建造物を含む多数の被害・犠牲者100人規模の災害となりました)
 また、次の写真にある様に、日本の昆虫達が南から北へ移動を始めたという妙なことがおきています。

 これらの全ての現象の原因が地球の温暖化ではないだろうか、と言われているのです。




  


 IPCCという国連の下部機関があります。科学者が数百人集まって地球規模の気候変動について科学的調査を行い報告書をまとめました。それがIPCC報告と言われる報告で地球温暖化のすべての議論はこの科学的報告書がベースになっています。
 IPCCによると温暖化によって
 1、100年以内に平均気温で1度から3.5度上昇する
 2、南極・北極は12度以上の温度上昇
 3、自然生態系に大打撃
 4、100年後に最大1mの海面上昇
が起こると予測されています。

 さて、100年以内に気温が1〜3.5度上昇するといわれているのですが予測ですから幅があります。もっとも確率の高いのは2度だと言われています。さて、2度気温が上がると大変でしょうか?そうでないでしょうか?

<生徒たち:ほとんどが大変でないに挙手>。

 今日は気温は22度くらいですね。2度の気温上昇だとこれが24度になります。これだとあまり大変じゃないみたいですね。でも、地球規模で2度変わるということはどういうことでしょうか。こんな実例をあげましょう。地球の歴史をひもとくと、氷河期といって地球の70%が凍りついていた、非常に寒い時期がありました。今は温暖期です。この氷河期と温暖期の平均気温の差はどれくらいあるでしょうか?

く生徒:14度、10度、15度、30度>。

 みんな、少なくとも10度、多くは20度くらい差があると思いましたね。でも、正解は一つ、事実は一つです。
 正解はわずかに4.5度です。ガリガリに凍りついた氷河期と暖かい現在の温度差は4.5度なのです。
 平均気温が変化する事がポイントなのです。平均気温の求め方は例えば豊中市の一年間の平均気温を求める、大阪の平均気温を求める、近畿地方の平均気温を求める、日本の平均気温を求める、アジアの平均気温を求める、世界の平均気温を求める、といった作業の上で求まります。どうでしょうか。地域の大きな変動はすべて飲み込まれて世界の変動は小さな数字になる事がお分かりでしょうか。

 さて、100年後に2度あがるのはどうですか、何てことないという事態ですか。実は大変なことなのです。
 地球規模で平均気温は2度の変化を見せますが実際の上昇具合は地域によって変わります。赤道付近では1度程度。南・北極では12度以上気温が上昇し氷が溶けだすと言われています。
 もちろん自然の生態系は大打撃を受けます。砂漠化が進み 、食糧危機が訪れ、森林は枯渇します。また、海面上昇が起きて水没する国が出、食糧危機や難民の問題も発生します。

 日本では食糧危機なんて考えられないかもしれません。今は店に行くと何でも手に入ります。でも、こんな事態になったら食糧危機は確実にやってきます。日本の食料自給率は何%か知っていますか?

<生徒:100%・80%・10%等>。

 日本の自給率は30%を割り込みました。食糧の70%以上を海外に依存しています。世界的に食糧危機が起きたとき、どこから手に入れるのですか?我々は何か事件があればすぐにスーパーから物が消えるということを何回か経験していますね。あの阪神大震災のときがそうでした。あらゆるスーパーから食べ物が消えました。

 でも、実際に温暖化によって自然生態系に大打撃が加わるのでしょうか。環境問題の話を聞くと「さも、これから大変な事が起こる。覚悟しなければならない」といった恐ろしい話ばかり聞かされます。本当にそうなんでしょうか。
 では、なぜ自然生態系に大打撃が加わるのかを説明します。簡単に言いますと、2度気温が変わるということは、気候帯が変わるということです。距離でいうと、600km南へシフトすることになります。平均気温が一度上昇すると南に300Km移動すると言われています。平均気温で2度は暖かい方に600km移動するということを意味するのです。
 大阪が沖縄くらいになるということです。沖縄は海もきれいだし暖かくていいですか?でも、生き物には最適な温度があるんです。先ほど紹介した虫たちの北上は、暑くて住めなくなったこれまでの環境から虫たちが逃げているんです。
 人間や動物は足があるので移動できます。魚も水中を移動して逃げる事が出来ます。でも、植物はどうですか。

  緑は動けますか?

 実は動けるんです。もちろん自らの体を移動させる事は出来ませんが、種を飛ばして長い時間をかけて移動します。春先に杉が花粉を大量に飛ばし始めました。杉花粉が大量に飛び始めてこまるという人がいると思います。では、なぜ杉が大量の花粉を飛ばし始めたのか?それは、自分の種が滅ぶのを感じ、種を守るために大量に花粉を飛ばし始めたといわれています。では、植物はどれだけ移動出来るのでしょうか?100年でせいぜい100kmです。 100km動けたら速いほうです。だってそうでしょう。種を飛ばすと言ってもどの位飛びますか。せいぜい10Km程度です。飛んで行った先で芽を出します。どんどん成長して種を飛ばす事が出来る様になった。芽が出て種を飛ばせる様になるまで30年位はかかりますね。30年かかって種が飛ぶ、飛んで行った先で30年かけてまた種を飛ばす。この繰り返しです。一回あたり10Kmの移動しか出来ませんが、100年の間にこの繰り返しは3回か4回行われます。100年間で数十キロの移動しか出来ないのはこういう仕組みなのです。

 では、2度気温が変わるとどうなるでしょう。 先程申し上げた様に600kmシフトします。緑はついていけません。滅びます。緑が滅ぶと我々は何を食べればいいんですか。肉?だめですね。ウシやブタも育てるには緑が必要です。虫もそうです。全ての生存基盤である緑=植物を失うことによって我々は生存の基盤を失うのです。

 最後に海面上昇の話をします。水温の上昇によって水は膨張します。それと陸上の氷が溶けて海に流れ込み水量が増える事によって大ざっぱにいって、100年で海面は1m上昇します。日本では水面が1m上昇しても直接困る人は少ないかも知れません。しかし世界に目を向けるとそうはいきません。
 これはモルディブというダイビングなどで有名な国です。サンゴ礁でできた島で、海から一番高いところで1.5mです。さて、そこで海面が1m上がるとどうなるでしょうか。50cm残るなんて言ってる人は誰ですか?現実には波に洗われて100年後にはこの島は消えます。モルディブという国は100年後には消えるわけです。そして、こんな国が世界に数十カ国、人口にして世界の1割、6億人が消えると言われているのです。

 現実にはこういった島の住民は事態が最悪になる前に移動が出来ます。しかし住んでいる所を失うわけです。皆さんは行ったことのない国の話なのでイメージできないかもしれませんが、ぜひ、自分の全てをこの上に置いてみてほしい。自分の家・学校・車・家族・友達、全部この上に置いてみてほしいのです。
 それが100年後の彼等の姿です。どうしますか。必死ですよ。自分の持ち物全てが海に沈む。必死です。国際会議のたびに彼等は「温暖化を止めてくれ」と声をあげてきました。
 日本など言葉では 「温暖化を止めよう」と言っていますが、現実にみなさんの生活をふりかえってどうですか。「日本はこんなことしよう」と言ったり、考えたりしていますか。「そうか、こんな国があるから、では今日はテレビを見るのを減らそう、エアコン使うの減らそう」、そんな事がありますか。ほとんどないでしょ。彼等が叫んでも、我々の生活に関係ないところで叫んでいる事になっているのです。残念ながら我々は聞く耳を持っていません。確実に100年後彼等の国は消えるのです。

 でも、本当に我々には関係ないことでしょうか。もちろん1m上がれば日本も無関係ではありません。台風の影響なども大きく受けます。地震による津波の被害ははるかに甚大になります。 護岸工事が必要になって来ます。もちろん不況にあえぐ土建屋さんは潤うので歓迎かも知れませんが。

 さて、さきほど南・北極の氷が溶けるという話をしました。では、北極の氷が全部溶けると、世界の海はどれくらい盛り上がるでしょう?

<生徒:10mくらい>。

 正解は、上がりも下がりもしません。0です。北極の氷は海に浮いています。溶けても出っ張っていた部分が海にへっこむだけです。では、南極の氷はどうでしょうか?南極の氷ですが、面積は日本の約40倍あります。平均的な厚さはどれくらいだと思いますか?

<生徒:10m ・ 20m ・ 100m >。

 実は平均2500mあります。<生徒驚き>。
 全部これが溶けると、海面は70m上がります。 70m上がると全世界の地形は大きく変化します。温暖化によって氷が溶ければ我々は水に没する心配をしないといけないのでしょうか。海抜70m以上の所に住んでいないとやばくなるのでしょうか。心配ですよね。
 でも、科学者はこう予測しています。今のペースで気温が上昇すると、氷が全部溶けるのは数百年かかると言われているのです。我々は沈んで死ぬことはないでしょう。ちょっと安心しました。

 しかし、動的な変化を考える必要があります。つまり、簡単にいうと、南極の氷がじわじわ溶けるのでなく、いつかバサッと崩れ落ちないか、ということです。氷は圧力を受けると溶けます。スキーやスケートはそれで滑るわけですが南極の氷の下の方は猛烈な圧力によって氷が溶けて湖ができています。南極の氷は大陸に不安定に乗っているだけだという事がお分かりいただけるでしょうか。
  氷に亀裂が入れば、ドボンと氷は崩れ落ちる可能性があります。そうなると津波が起こります。南極で発生した津波が日本に押し寄せた時に波の高さは50m〜100m、ある学者などは数百mになるとも言っています。これが世界を襲います。最近「ディープインパクト」という映画で、彗星が地球に衝突し、津波が二ューヨークを襲うというシーンがありましたが、あれと同じことが起こるのではないかということです。日本も例外ではありません。南極で氷が崩れ落ちれば、数十時間以内に津波が日本におしよせます。海の周りは全て破壊されます。建物・電車・電気・交通、全て破壊されます。
  
 津波が起きたというニュースに、そうですねこの辺であれば六甲山に逃げたとしましょう。津波は大陸と大陸の間を反射し、行ったり来たり、約1ヶ月間にわたり、何度も何度も日本を襲います。そして、津波がおさまっって、豊中の街に降りてきたみなさんは、何を目にするでしょう。全ての会社や町が破壊しつくされている。さて、どうしようと困っている姿を想像しているかもしれません。でも、途方に暮れてこれからどうやって生きていこうかという心配をする必要はありません。
 なぜでしょうか?
 実は我々は海の周りにもっとややこしいものを作っでいるのです。それは何でしょうか。

 日本に54基ある原発です。東海村で少し放射能が漏れて、あの騒ぎです。 54基の原発の放射能漏れが起きたらどうなるか。津波の後に「これからどうやって生きていこうか」と心配する必要は全くありません。すぐにあの世へいけます。原発の破壊がわれわれを天国へ導いてくれる事でしょう。

 では、南極の氷が溶ければ津波が襲うということですが、現実にあるのでしょうか。先ほど南極の氷がすべて溶けるには数百年かかると申しました。津波の可能性も数百年先の事でしょうか。
 では、現実に南極でおこっていることを一つ紹介します。この写真は、南極の氷が溶けて、割れて、海に流れ出そうとしているものです。この氷の大きさはどれくらいでしょう。この体育館くらい?この学校くらい?豊中の町くらいでしょうか。実は、これは千葉県と同じ大きさです。これが、溶けて、割れて、海に流れ出たところの写真です。こういうことが、今南極でいっぱいおこり始めました。

 氷に大きな裂け目が走りはじめています。以前は氷に閉ざされていたところが、今は氷が溶けて船で楽々通行可能になっています。こういったことが今、いっぱいおこっています。ある科学者がこんな例えをいっています。
 Γフライパンによく冷やした バターを置く。火をつけるとフライパンは温まっていく。バターも温まる。バターはどのように溶けていくか。まず、周りからジュルジュルと溶けだす。そして小さなバターの塊がツーっとフライパンを走る。今南極の氷は離れ始めました。これは、フライパンにバターをのせ、火を付けて温まり、溶け始めた段階ではないでしょうか。
 暖め続けると、どこかでいつか崩れるのではないかというが、今の状態です。

 そのときどんな世界が待っているのか。 では、その時はいつ来るのか。5年後?10年後?50年後?いつ来るかわからないという点では地震と同じです。でも、このまま行くと、そんなに遠くない将来来るのではないかと、科学者が警告しています。 

  さて、ここまでお話をして来ましたが、皆様が大きく誤解しているかもしれないので、こんなふうに思っていないか、とらえていないか、再確認をさせて下さい。

  環境問題は未来の話だと思っていませんか?

  温暖化の話の中で、100年後という話をしたので、みんなは未来の話だと思っていませんか。大人たちに環境問題の話をすると、「子どもたちが大変な世界に出会わないように今出来る事をしておきましょう。」と言います。多くの大人がこういった間違った言葉を口にします。

 環境問題は未来の話ではありません。すでに今、我々の生活に密接に関係しています。 オゾン層破壊の問題がそうです。紫外線Bはすでに我々の体を蝕んでいます。温暖化は100年後の話?いえ、ちがいます。すでに始まっています。日本でとんでもない雨が降り始めました。わずか15年くらいしか生きていないみんなには難しいかもしれませんが、私は40年以上生きています。気候がおかしい。日本ではこんな雨は降り得ないということはわかっています。そして数年、特にこの2〜3年、とんでもない雨が降り始めたということに、多くの人が気がついています。
 すでに温暖化が我々の目の前にキバをむいて現れはじめました。

 世界の異常気象はその多くが温暖化が原因です。そして、これからこのレベルは加速度的に悪くなっていきます。日本では台風が大型化する。アメリカもハリケーンにやられました。インドもサイクロンにやられました。世界でとんでもない雨が降って、多くの人が命をうしないました。これが単にお金の問題なら、こんなにワーワーという必要はありません。騒ぐ必要はありません。
 建物が壊れて○○万円の被害をだした。それでいいのです。 なぜ今環境問題が大事か。それは生命の問題だからです。多くの生命が危機にさらされているから、みんなの生命が危機にさらされているから、私も一生懸命話をさせてもらっているんです。
 みなさんは15歳。これからどんな職業・学校に・・といった未来に夢を持っている時期だと思います。さて、それを実現させてくれる地球はあるのでじょうか。悲観的なことをいいます。このままではあり得ない。このままでは続きません。これまでの延長線上に自分の夢を実現させる社会があるなんてことは考えないでください。あり得ないことです。これはあなた方自身がこれから向かっていかなければならない問題です。決して未来の子供たちの問題ではない。大人たちの問題でもない。これからあなた方が経験していく社会の問題です。環境問題は今の問題だということを改めて考えてみてほしいと思います。
 大人の人にも考えてみて欲しいのです。未来の子供達の問題ではなく、自分の問題として対策をして行かないと本当に時間がない。手遅れになるんだという事を。 

  温暖化の話を続けますが、なぜ温暖化がおきるのかという仕組みを説明します。

 太陽からは光のエネルギ←が地球に降りそそいでいます。太陽光線に当たると暖かいですね。さて、太陽から地球に届く光つまり熱のすべてを地球は吸収しているのでしょうか。
 実は、そうではありません。全部吸収していると、どんどん温まってしまいます。熱を吸収しながら同時に、反射することでバランスをとっているのです。地球が熱を宇宙に逃がす時はエネルギーを赤外線の形で逃がしています。宇宙に熱が逃げていっている証拠を我々は知っています。放射冷却という言葉をご存知でしょうか。
 晴れて風が無い夜などは地上の熱が宇宙に逃げて地表の温度が大きく低下する事があります。熱が逃げていっている証拠ですね。

 炭酸ガス・メタン・水蒸気、これらを温暖化ガスといいますが、これらのガスが大気中に増えますと宇宙に逃げて行こうとする赤外線を捕まえます。そして地表へと再度輻射するのです。結果的に本来宇宙に逃げて行ってバランスが取れていたのに熱がこもる事によって地球の温度が上昇する事になるのです。
 左の図のように地球にかけた毛布の様なものを作ってしまって、太陽から入って来た熱が宇宙に逃げないで、地球にはねかえってくるのですね。
 その主犯が炭酸ガス、CO2です。
 では、炭酸ガスはどんなときに出るのでしょう。

<生徒:呼吸・物を燃やしたとき等>。

 そうですね、では、我々はどれだけ炭酸ガスを出しているのでしょうか。
 人間は息をすると1日150 g の炭酸ガスを出すといわれています。一方で世界の45億人の貧しい人々は生活のために1日2kgの炭酸ガスを出しています。10億人の豊かな人々は、便利さや快適さのために、1日30〜70kgの炭酸ガスを出しています。
 一日に30Kgから70Kgもの大量の炭酸ガスを私達はどんな形で出しているのでしょうか。
 例えば車です。ガソリンを燃やして走りますね。電気です。発電所で油を燃やして電気をおこします。
 
 私達は様々な形で炭酸ガスを出していますが、どの位であれば地球は耐えられるのでしょうか。
 呼吸をして一日に一人150gの炭酸ガスを出すのはどうでしょう。
 問題あるわけないですね。
 では、途上国の人が最低限度のエネルギーを使って一日1〜2Kgの炭酸ガスを出すのはどうでしょうか。実は、このレベルも従来の地球であれば問題はありませんでした。だって人類はずっとそのレベルの生活をして来たのですから。しかし地球はもはや以前の地球ではありません。ある条件が崩れてしまって、現在は途上国の最低限度の生活レベルでも悪影響が懸念されています。ある条件とは何でしょうか。

 その条件とは、「これ以上緑を切らない」ということです。

 緑はご存知の様に炭酸ガスを吸収してくれます。炭酸ガスを吸って酸素を放出する。温暖化を抑える上でとても大事な私達の仲間です。
 しかし世界の緑は急速に失われています。「緑を切らなければ・・」という条件はもはや完全に崩れてしまっているのです。
 さて、先進国の発生する炭酸ガス量は耐えられるでしょうか?
 もはや説明の必要はありませんね。耐えられるわけがありません。 

 ついでに世界の緑の状態を確認しておきましょう。

 これを見ると、世界の緑は壊滅的になくなっていますね。今、世界の緑は伸びるスピードの5〜10倍のスピードで姿を消しています。このままではどうなるでしょうか。

  緑がなくなるのには3つのケースがあります。
     1。緑が必要だから緑を切る。例えば、ノート・紙・家を建てる等。
     2。木が必要でないから木を切る。
         例えば、ゴルフ場を作る。そこにある木がじゃまだから切る。
         高速道路を造る、学校を建てる、そのとき木がじゃまになり切る、といったパターン
     3。大気汚染や酸性雨によって、緑がかってに消滅していくパターン

 国連はこのままでいくと、あと100年以内に世界の緑は消え去ると言っています。

 こんな記事があります。アメリカでは今ハンバーガーの安売り競走がおこっています。ところがアメリカ国内で作るとコストが高くつく。そこで、アマゾン流域等の熱帯雨林を切り 開き、そこに牧場を作りました。

 換算すると1個のハンバーガーを作ることによって、5.5平方メートルの森が消えることになります。日本でも同じやり方をしています。皆さんが美味しい美味しいとハンバーガーを食べるたびに森は消えて行っているのです。ハンバーガーと森は一見何の関係も無い様に見えます。皆さんは「知らなかった」と言うかもしれませんが、残念ながらこれは事実です。
 我々は未来を失おうとしています。 つぎに、こんな写真をみてください。


 女の人が木に抱きついていますね。何をしているのでしょうか。
 実はこれはインドの環境保護団体の啓発ポスターです。
 インドの山間にダムを作ろうという計画がもちあがりました。でも、ダムを作ると10万人のそこに住んでいる人たちの村や森が水に沈んでしまいます。そこで森を守ろうという運動がおきました。インドで行われた「チプコ」という住民運動です。

 チプコというのはΓ木に抱きつく」という意味です。木を切られないように、木に抱きついて森を守ろうとしました。そして、200人の人が木といっしょに切られ亡くなりました。この運動の中心的人物はサンダルラル・バフグナさんという老人です。「木の価値に比べれば私達の命なんて軽いものです」と語る物静かな方です。日本に来られた時に握手させていただきましたが、その手の平がとても柔らかく暖かだったのを記憶しています。
 チプコ運動が世界に知られる様になり、世論が高まり、世界銀行もお金を出さなくなりました。
 しかし、日本の企業は一時期止めていた工事jを中が見えない様に作った塀の中で進めていると言われています。なぜそこまでして電気がいるのでしょうか。現地の人たちは要らないといっているのに誰がいるのでしょうか。
 実は近くにアルミの精錬工場を日本は作ろうとしているのです。安いアルミを手に入れたいので、日本が中心になって 工事を進めているわけです。では、なぜ日本でそんなにアルミが必要なんでしょう。これはみんなに関係があるんです。みなさんはジュースを飲みませんか?アルミ缶のお世話になっていませんか?ジュースやビールの缶の為にアルミが必要なのです。そのため電気が必要なのです。

 私たちが自動販売機でジュースを買い続けるために、10万人がダムに沈もうとしています。工事は続いているわけです。もちろん、私たちが直接手を下したのではないけれども、我々の生活と深く関わっているのです。このような形でも森は失われていっています。

 ここで根本的な話をします。一つの式を紹介しましょう。この式をみなさん、覚えて下さい。

 45億人の貧しい人々は、1日生活するのに最低限度必要なエネルギーを1使います。そして、10億人の豊かな先進国の人々は、その100倍使います。地球上では1045億人分のエネルギーや資源の消費が行われています、という式です。

 では、地球はどれくらい人間を養えるのでしょうか。いろんな説がありますが、大体100億人だと言われています。今、地球は耐えられる限界を10倍越えて経済活動を進めている事になるのです。これが、今の地球環境問題をおこしています。
 地球が耐えられる範囲であれば、地球温暖化もおこりませんでした。我々はやりす ぎてしまったのです。では、地球を成り立たせるためには、この式のどこを考えればいいのでしょうか。

「開発途上国の45億人の人口が多すぎる、彼等は増えすぎる、人口を減らさなければ」という声をよく聞きます。

  本当にそうでしょうか?もし仮に彼等が0人になっても、1045億人の消費が、わずか1000億人になるだけで、全然事態は変わりません。ではどの数字をいじらなくてはならないのでしょうか。もちろんすぐにお分かりですね。豊かな先進国の「100」の数字です。

 先進国がムチャをしてきた結果が地球規模での環境破壊なのです。根本的解決のためにはこの数字を減らさなければなりません。
  よく「人間が悪いんだ」とか「人間が地球を汚してきた」という話がありますが、人間がやったんではありません。人間の一部がやったんです。先進国の人口は、60億人の世界人口のたった20%です。それがやったんです。まちがえないでくだざい。残りの80%の人間は地球を壊していなかったんです。人間が環境を壊したんではない。一部の人間が壊したというふうに考えなおす必要があるのではないでしょうか。

 さて、「100」を減らさないといけない事は分かりました。では、実際に「100」を減らすってどういうことですか。小遣い500円を1000円にすること? ちがいますね。 500円を100円にすることですね。今住んでいる家を大きくすること?違いますね、狭い小さな家にすることです。

 我々の社会は今まで「100」を増やす方向を望んで進んできました。大切なことは「100」を減らす様にどう実践するかです。これはみんなにとって、いやなこと・やりたくないことかもしれません。でも減らさなければ地球は成り立たないということは、この式で簡単にわかります。環境問題の取り組みが、なかなか進まない理由はここにあるのです。「100」を減らすことは嫌なことなんです。

 では、どう考えたらいいのでしょうか。こんな事を考えてみて下さい。

 我々が生ぎていく上で何が一番大切でしょうか。食べ物?水?愛‥。色々と大事な物がありますが、生きて行く上で本当に大事なのは生命(いのち)です。「生命」が生きていく上で一番大切なものです。当たり前かも知れませんが、明らかな事ですね。

 それでは、もう一つ質問。生命とお金とどっちが大切ですか。

<生徒・ほとんどが生命に挙手>。

 大人の世界で同じ質問をすると、時々お金の方に手が挙がります。「ほんまかいな」と思いますが、実際に手が挙がるんです。みんなの中にはいません。ほっとしました。 さて、「生命とお金とどっちが大事」と聞かれたとき、みなさんは自分のもの同士を比べませんでしたか?「自分の生命」と「自分のお金」を比べませんでしたか?その上で「生命が大事」とお考えになったかも知れませんね。

 でも、実際の社会において、普段の生活において、自分のお金を守る ために「自分以外の生命」を犠牲にしていませんか、ということを考えて欲しいのです。例えば、見たこともない生き物の生命を犠牲にしていないか、発展途上国の子どもたちを犠牲にしていないか。

 発展途上国のやせ細った子どもの姿がテレビで映りますが、_我々と彼等は関係がないのでしょうか?物があふれる様にあって安く買える、その裏返しが彼等の世界です。彼等に、もっとがんばれとか勉強しろとが国内で戦争して馬鹿じゃないかという人がいます。でも、誰が彼等の世界を作りだしたのか?全て我々が作りだしためです。テレビでやせた子どもを見て涙を流す。かわいそうだと涙を流していていいのでしょうか。「私たちが彼等の社会を作り出したんです。涙なんか流せますか? 生きていく上で何が最も大切か。さっき生命だとみなさんおっしゃいまじた。本当に生命ですか?今胸をはって、自分ば生命のために生きていけるってどれほどの人が言えるのか。

 私たちは事実を知らなかった。我々の生活が、多くの人の犠牲の上になりたっているんだということを今知りました。残念なことですが、これは事実です。知った以上、これまでと同じ生活を続けていくんですか、ということです。

 環境問題は政治や経済や行政の問題でも何でもありません。我々の問題です。我々が解決していく問題です。どんな社会をつくるのか?地球の未来を今の延長線上に描いているなら、それはあり得ないんだと思ってください。我々がお金より生命を大事にする社会を本気で作ろうとしなければ、地球の未来はもうあり得ないのです。
 ここで大事なことは、価値観の転換です。

 価値観の転換についてこんな実例を紹介しましょう。

 ドイツでは小学校にあがる前の幼稚園児に対してプレスクールというしつけをいたします。実際にドイツで配られているプリントがこれですが、何が書いてあるかと言いますと、ドイツでは「カバンの中身は3原則を守らないといけない」と書いてあります。3原則とは、

  1。環境を傷付けないもの
  2。ゴミになっても、公害を出さないもの
  3。健康に害を与えないもの

です。

 この3原則を守った物でないと、ドイツでは学校に持ってきてはダメなんです。例えば、木目のままの鉛筆は○ですが色を塗ったものは×です。舐めると有害だからですね。ノートは100%再生紙使用のもの。鉛筆削りは木製か金属製で、刃の替えられるもの。プラスチック製はダメ。セットものの文房具もダメです。要らないものが含まれているからです。ドイツの子どもたちはこれを守っています。それに対し日本はどうでしょうか。

 システムデスク・筆箱セット・プラスチック製品の数々。ドイツだったらすべてダメと言われている物ばかりです。日本でもドイツでも、親は同じ様に子ども達の幸せを願っているのではないでしょうか。でも、出てきた答えは正反対です。日本で子供が喜ぶという理由で与えられているものの多くが、ドイツではダメなものなのです。

 どちらも「子どものため」を考えているのは同じです。何が違うのでしょう。
 それは、「何が大事」だと、社会が考えているのかという価値観です。生命が大事かお金が大事か?
 ドイツの社会がいいのか日本の社会がいいのか。みなさんが決めることです。

 みなさんが願う方の社会がやってきます。お金や物を大事にする社会、生命を大事にする社会、どちらを願うか。カギはみなさんに預けられています。 

 最後に3つのお願いをします。
 
一つ目は「知ること」です。環境問題だけでなく、社会の仕組み・政治・経済・企業の在り方、たくさん知ってください。知らずに行動をする事は危険であり、正確な知識を持たずに行動する事は誤った行動につながります。

 二つ目は知ったことを「共有する」ことです。たくさん知ったことを伝えてください。周りの人と共有してほしいと思います。今日の話もぜひ家の中でしてほしいと思います。

 三つ目のお願いは「愛すること」です。仲良くしてください。仲良しになってください。周りの人と、地球と。そんなことができる社会でなければ、地球は成り立ちません。ところで仲良くするってどうするか知っていますか?仲良しの秘訣は自分からやることです。自分から仲良しをする。自分から手をさしのべることです。相手に求めない。相手が手を出してきたら、自分もしてあげよう、挨拶してきたら自分もしてやろう、ではない。自分から手をさしのべる。やって みてください。実践してみたら何と簡単にできるかわかると思います。

 みんな本当は仲良ししたい。拒んでいる人はいないんです。ぜひ、心に留めておいてほしいと思います。 最後は環境問題に関係のない様な話になったかもしれませんが、そんなことができる社会にならないと、もう地球は救えないと言いきっても過言ではありません。どんな社会をつくっていくか。みなさんがイメージした社会になっていきます。是非、命の大切さを第一に考える、自分の命を考えると同時に自分以外の命や幸せを考える事の出来る社会を目指して欲しいと思います。「未来はあなたがたが願った通りにやって来ます」というのを最後に、私の話を終わります。ご静聴ありがとうございました。