原因追究と排除 Return

  
  アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、一部の喘息などはその発症、増悪に1型のアレルギーが関与しています。1型のアレルギーは血中の肥満細胞に結合したIgEに外界から進入してきたアレルゲンが結合することで肥満細胞が脱顆粒を起こし、種々のケミカルメディエイターが炎症反応をひきおこすというかたちのアレルギーです。厳密には、特に喘息などはこうした単純なアレルギーだけではありませんがここではこの1型のアレルギーを中心に話を進めようと思います。

  アレルギーの原因、すなわちアレルゲンをみつけてそれが体に全く入らないようにできればアトピーの症状は劇的に改善します。症状の改善にやや遅れて血中に存在するフリーのIgEも徐々に減少し、ゼロにはならないものの、数年内には再びアレルゲンが体内にやってきても強い炎症を起こせない程度まで下がっていきます。こうした抗原遮断療法は、数あるアトピー性皮膚炎の対症療法の中でもっとも合理的で優れた効果を上げられる方法です。したがって、現在の自分のアレルギーが、なにに対するアレルギーであるのかをまず知ることが非常に重要な第一段階となるのです。

  アレルギーの原因を知るための皮膚化学的検査法について紹介いたします。

  #1 パッチテスト

     別名皮膚貼付試験とも呼ばれます。アルミ製のフィンチャンバーや綿素材にアレルゲン混合物を塗り、皮膚(背中が主体)に張り付けます。48時間後にそれをはがして一度判定し、72時間後にもう一度判定します。したがって、抗原貼付後48時間は入浴が出来ません。この2回の判定、特に72時間後にやや硬い紅斑がでていればアレルギー試験陽性と判断されます。この方法は、主に接触アレルギーのテストとして評価が定着している検査法です。しかし、精製した大量の抗原を要する点や、接触部位に強いアレルギー反応がでた場合、非接触部位にも悪影響を与えることがある点、また、アトピー性皮膚炎患者さんでは試験を実施できるような正常な皮膚面があまり多くないケースが多いこと、入浴の制限があること、夏場は実施しにくいこと、貼付したのりにひどくかぶれたりすることなどの理由でアトピー性皮膚炎の検査としては今一つ適さないものです。

  #2 スクラッチテスト

     皮膚にごく小さな傷を付け、そのうえにアレルゲンを塗布、または滴下する方法です。陽性の場合、15〜30分で試験部位に蕁麻疹様の紅斑が出現します。いわゆる1型のアレルギーを直接調べられる方法で、採血が難しい乳幼児にたいして非常に簡便でよい方法といえます。しかし、皮膚を直接傷つけるので検査後に細菌感染を起こす可能性がややあるのと、偽陽性反応が多い点で後述するRAST検査に劣ります。

  #3 皮内テスト

     滅菌したアレルゲンの混合溶液を0.2ccほどずつ表皮内に注射し、即時反応(15〜30分)および48時間後の紅斑反応をみるものです。即時型と遅延型の両方のアレルギーを検査できる点と正確性においてもっとも確かな検査法といえます。しかし、一度に多数の項目を検査するには患者さんの苦痛が大きい点、アレルゲンの濃度次第では注射部位に潰瘍を起こし、直ってもやや醜い瘢痕を残すことがある点で、しょっちゅう行える検査とは言えない面があります。

  #4 RAST検査

     患者さんから採血し、血中の遊離IgEを特定の抗原と試験管内で結合させてその量を正確に定量する方法です。そこから得られたデータは抗原特異的で、えられたスコアは特定の抗原に対する患者さんの感作状態をほぼ正確に反映しています。患者さんに与える負担が軽く、スコアも正確で優秀な検査法ですが、1型の過敏症のみの検査である点と、なによりお金がかかる点がこの検査法の欠点です。1カ月に1回しかこの検査を施行することは認められていませんが、1項目約1800円。最大項目数の10項目を調べると18000円。1割負担の患者さんでもこの検査のためだけに1800円の自己負担が必要となります。(97年4月から社会保険本人も2割になるということですが。)家族3割の方では5400円にも膨らんでしまいます。ここが最大のネックです。私たち医者の立場からすると、こうした良い検査法はうんとコストを下げてもらい、検査を患者さんにお願いしやすい環境が望ましいわけです。RAST検査がコスト高な理由は、検査過程で放射性同位元素を使用するからなのですが、最近は酵素抗体法で安上がりな方法が徐々にではありますがひろがりつつありますが、それでもまだまだやすいとは言えません。


抗原排除

  RAST検査で抗原が特定されれば、そのアレルゲンが影響の強いものであればあるほどそれを遮断したときの症状軽快は劇的なものとなります。強いものであればあるほどと申し上げたのは、アレルゲンは無数に存在するからです。たとえばここにトータルIgEが5000の患者さんがいるとしましょう。CAP-RASTで10項目検査したところ、ヤケヒョウヒダニが100以上、カンジダが50、その他はなしとでたとします。この患者さんがダニ、カンジダ以外にアレルゲンをもってないと言い切れるでしょうか?現在、約170項目についてRAST検査が可能です。かりにこの人がのこり160項目について調べ上げ、全て陰性であったとしても、この人がダニ、カンジダ以外にアレルゲンをもってないと言い切れないのです。人がアレルゲンとして認識しうるものは、自分の体内にない全ての蛋白質です。その数はまさに無限大です。ですから抗原排除が、抗原遮断がかりに完全に出来たからといっても(普通は完全には出来ません)アトピー性皮膚炎の症状が全例でゼロになる補償はないわけです。がっかりさせるようなことをまず申し上げましたが、これはあくまで理論上の話で、実際には成人のアトピー性皮膚炎の患者さんでダニにスコアが高ければ、後述しますダニ対策をしっかりやっていただければその症状の90%は改善すると言えましょう。以下、ダニ対策について述べます。 


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