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Title : Getting Started Guide for HOMER Version 2.1
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Getting Started Guide for HOMER Version 2.1

HOMER Logo
Getting Started Guide for HOMER Version 2.1
April 2005
日本語訳 by Felix

National Renewable Energy Laboratory

1617 Cole Boulevard, Golden, Colorado 80401-3393
303-275-3000 www.nrel.gov
Operated for the U.S. Department of Energy
Office of Energy Efficiency and Renewable Energy
by Midwest Research Institute, Battelle

この Getting Started Guide について

 この Getting Started guide は11ステップで HOMER をユーザに説明する。ユーザは検討したい発電システム設計に関する情報または入力値を HOMER に与えることで始めることができる。HOMER はシステム構成をシミュレートし、実現可能なシステム設計を費用効果性の順に並べた一覧表を作成する。最後のステップでは HOMER で感度解析を行う。このガイドの各ステップを経ればソフトウェアに通じるようになり、ユーザ自身のモデルを構築して利用できるようになるだろう。

 この練習問題をやり終えるのに1時間もあればいいだろう。

このガイドのオンラインバージョン

 HOMER のヘルプメニューで Getting Started を選択するとこのガイドのオンラインバージョンを開くことができる。

チェックしよう

 ガイド全体を通じて、ユーザがソフトウェアを使う際に HOMER がどのように見えるべきかを示すイラストを用いている。ユーザは各ステップを正しく処理しているかを確認するために、イラストと自分のコンピュータの画面を比較して確かめるとよい。

Tips and Notes

 ガイド全体を通じて、HOMER がどのように動くかをより理解するために Tips 及び Note を散りちりばめている。Note は取り組もうとする練習問題をより理解するために読んでおくべき重要な情報であり、Tip は HOMER に関していつか役に立つであろう追加的な情報で、練習問題を解くために必須というわけではない。

目次

  1. Welcome to HOMER
  2. HOMERで解くべき問題の特定
  3. 新規HOMERファイルの作成
  4. スキームの構築
  5. 負荷の詳細の入力
  6. 構成機器の詳細の入力
  7. エネルギー源の詳細の入力
  8. 入力値の確認とエラーの修正
  9. 最適化結果の検証
  10. システム設計の更新
  11. 感度解析用変数の追加
  12. 感度解析結果の検証
  13. 要約
  14. 連絡先

Welcome to HOMER

HOMERとは何か?

 小規模発電最適化モデルである HOMER は系統に連係している発電システムでも連係していないシステムでも、様々な用途のシステムに対しその設計評価を簡易に行うものである。発電システムを設計するには、例えばシステム設計にどの構成機器を含めば意味を成すか、各構成機器はどの規模のものをどれだけ用いればよいか、などシステム構成について実に多くの決定を下さなければならない。技術的な選択肢は数多くあり、その技術の費用やエネルギー源の可用性の幅も広いことが決定を困難にさせる。HOMER による最適化及び感度解析アルゴリズムは多くの可能なシステム構成の評価を簡易にしてくれる。

HOMERをどう使うか?

 HOMER を使うには、技術的選択肢・構成機器費用・資源可用性を記述したモデルとその入力値を与えなければならない。HOMER はこれらの入力値を用い、異なるシステム構成をシミュレートし、構成機器を組み合わせ、正味現在費用の順に並べられた可能な構成機器の一覧表を結果として出力する。また HOMER は、シミュレーション結果を、それぞれの機器構成を比較し、経済的・技術的利点を評価しやすいように様々な表及びグラフで表示することができる。表及びグラフはレポートやプレゼンテーションに使いやすいようにエクスポートできる。

 異なるシステム構成の費用効果性が持つかも知れない資源の可用性及び経済条件のような要素における変動の影響を確認したければ、感度解析を用いることができる。感度解析を実行するには、資源可用性及び構成機器費用の幅を記述する感度変数を HOMER に与える必要がある。 HOMER はその変数の全範囲にわたって各システム構成をシミュレートする。ユーザは発電システムの設計及び操作に最も大きな影響を与える要因は何であるかを特定するために感度解析の結果を利用することができる。HOMER の感度解析の結果は、計画への技術的選択肢や政策決定に関する一般的な問題への対処に用いることができる。

HOMERはどう動くか?

シミュレーション

 HOMER は1年間すなわち8,760時間の各時間帯に対しエネルギーバランス計算を実行することでシミュレートする。
 各時間帯では HOMER は電力需要及び熱需要とシステムが供給できるエネルギーを比較し、システムの各構成機器へ/からのエネルギーフローを計算する。蓄電池または燃料駆動発電機を含むシステムでは、HOMER は各時間帯において発電機をどのように発停すべきか、蓄電池を充電すべきか放電すべきかを決定する。

 HOMER はユーザが検討している各システム構成に対しエネルギーバランスを計算する。そして構成が実現可能かを決定する。つまりユーザの指定した条件下において電力需要と見合うかどうかを決定し、プロジェクトのライフタイム全体にわたるシステムの設置・管理費用を推定する。システムの費用計算には 資本・買い替え・維持管理・燃料費・利子を考慮する。

最適化

 あらゆる可能なシステム構成をシミュレートした後、HOMER はシステム設計の選択肢を比較できるように正味現在費用(ライフサイクルコストと呼ばれることもある)の順に構成の一覧を表示する。

感度解析

 感度変数を入力値として定義した場合、HOMER はユーザの指定した各感度変数に対して最適化プロセスを繰り返す。例えば風速を感度変数として定義した場合には、HOMER はユーザの指定した風速の範囲に対しシステム構成をシミュレートする。

HOMER のウェブサイト

 HOMER のウェブサイトは http://www.nrel.gov/homer であり、ここにはモデルやサンプルファイル、資源データに関する最新情報やコンタクト情報が記載されている。

1.HOMERで解くべき問題の特定

 HOMER は小規模発電システムの設計に関する幅広い範囲の問題に答えることができる。HOMER を実行する前に、HOMER にどのような答えを望むかを明らかにしておくことは有用である。HOMER が答えることのできる問題の例は以下の通りである。

  • 検討中のシステムのディーゼル発電機に風力タービンを追加することは費用効果があるか?
  • 太陽光発電が費用効果的になるにはディーゼルエンジンの燃料費用はどの程度まで必要か?
  • 検討中の設計は増加する電力需要に対応できるか?
  • 現在の系統連係システムに、電力と熱を供給するマイクロタービンを設置することは費用効果があるか?

 練習問題では、遠隔地において小さい負荷に電力を供給しているディーゼル発電機で典型的な例を想定し、そのようなシステムに風力タービンを追加設置することに意味があるか否かを判断するのに HOMER を用いたいと仮定しよう。HOMER に解かせるべき問題はこうである:平均風速及び燃料価格の変動はディーゼル発電機のみのシステム設計に風力タービンを追加することの実現可能性にどれだけ影響があるか?

2.新規HOMERファイルの作成

 HOMER ファイルには発電システム設計の解析に必要な技術的選択・構成機器費用・資源化可用性に関するあらゆる情報を含まれている。HOMER ファイルには最適化及び感度解析プロセスの計算結果も含まれている。HOMER ファイルの拡張子は .hmr で、例えば WindVsDiesel.hmr のようになる。

 HOMER の起動時には、最後に保存したファイルまたは最後に開いたファイルが開く。それらのファイルが見つからない場合には空のウィンドウを表示する。

 練習問題用に新規 HOMER ファイルを開こう。

  •  新規 HOMER ファイルを開くには New File をクリックするか、メニューから File, New を選択する。

 メインウィンドウに空の回路図(schematic)を開く。

Blank Schematic

Tip :

 既存の HOMER ファイルを開くには Open File Open File をクリックする。

3.スキームの構築

 HOMER は発電システム設計のための複数の技術的選択肢を比較する。回路図は、特定のシステム構成の回路図ではなく、HOMER で検討したい技術的選択肢の全てを表示する。回路図は HOMER に答えがほしい構成機器に関する情報を与えるものである。回路図には最適設計にはそぐわない構成機器が含まれているかもしれない。

 この練習問題では、HOMER はディーゼル発電機のみのステム設計に風力タービン発電機を追加する際の実現可能性に平均風速及び燃料価格がどれくらい影響を与えるかに関して答えを得るために風力タービン及びディーゼル発電機の組み合わせを含むシステムをシミュレートする。

  1. HOMER で検討する構成機器を選択するために Add/Remove Add/Remove をクリックする。HOMER は Add/Remove ウィンドウに可能な全ての構成機器を表示する。
  2. Primary Load 1 チェックボックスを選択する。
    Tip :

     各システム設計は一次負荷(Primary Load;ここでは電力需要のこと)・遅延負荷(Deferrable Load)または系統への接続のどちらかを含んでいなければならない。

  3. Wind Turbine 1, Generator 1, Battery チェックボックスを選択する。

    チェックボックス

  4. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

    メインウィンドウ

     HOMERは負荷・構成機器(風力タービン・ディーゼル発電機・蓄電池)を示す回路図上のボタンを表示する。

      HOMER は Resources セクション(回路図の直下)に各構成機器が使用する資源を示すボタンを表示している。この場合は回路図の Resources セクションに風力とディーゼルが表示されている。

4.負荷の詳細の入力

 負荷の詳細とは HOMER シミュレーションへの入力値のことである。負荷入力値とはシステムが供給しなければならない電力需要のことである。このセクションではサンプル負荷ファイルのインポートの方法を説明する。

  1. Load Inputs を開くために回路図の Primary Load 1 Primary Load 1 をクリックする。
  2. 負荷のラベルとして Remote Load と打つ。

    Remote Load

  3. 負荷型として AC を選択する。
  4. サンプル負荷ファイル Remote_Load.dmd を開くために Import hourly data file を選択し、Import File ボタンをクリックする。

    Import File ボタン

    Note :

     このサンプルファイルはHOMER 本体プログラム(homer.exe)と同じディレクトリのサブディレクトリ Sample Files にある。

    Load profile

     HOMER は表とグラフで日次負荷プロファイルを表示する。グラフのタイトルにはインポートされたファイル名が表示される。

    Tip :

     Load Profile テーブルに24個の値を入力することで負荷プロファイルを生成することもできる。

  5. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

    Equipments to consider

     回路図には負荷とACバスとの接続関係とそのエネルギーフローの方向を示す矢印が表示されている。またユーザが指定したラベル "Remote Load" が平均及びピーク需要の値とともに回路図に表示される。

5.構成機器の詳細の入力

 構成機器の入力値には HOMER がシミュレーション時に用いる技術的選択肢・構成機器費用・各構成機器の容量と数量を記述する。このセクションではディーゼル発電機・風力タービン発電機・蓄電池の費用データの入力方法を説明する。 The costs in この練習問題における費用は現実の市況を反映しているわけではない。

  1. Generator Inputs を開くために回路図上の Generator 1 Generator 1 をクリックする。
  2. Costs テーブルで以下の値を入力する。 Size 1, Capital 1500, Replacement 1200, O&M 0.05.
    なお O&M とは操作・維持(operation and maintenance)を意味する。 HOMER は燃料費用を独立して計算するので Generator O&M 費用には燃料費用は含まないこと。

    Costs table

     これは、システムにディーゼル発電機を設置するのに初期費用として 1,500$/kW 必要で、機器を更新するのに 1,200$/kW かかり、維持費用として 0.05$/hour/kW かかることを HOMER に教えるものである。 Costs テーブルで設定した値を元に HOMER は費用曲線を表示する。

    Tip :

     費用曲線は線形である:HOMER は費用及び発電機容量は線形関係にあると想定している。つまりディーゼル発電の設備設置費用が 1kW あたり $1,500 だとすれば、2 kW で $3,000、3 kW で $4,500 という具合に。Costs テーブルに行を追加し、線形でない値を入力すれば非線形の曲線を定義することもできる。テーブルに値を入力したら、 HOMER は値を追加できるように自動的にテーブルの最下行に空白行を追加する。

  3. Sizes to consider テーブルでは、0.000 及び 1.000 を削除し、15 を追加する。Sizes to consider テーブルにおける値は最適化変数(optimazation variables)と呼ばれる。テーブルは以下のように表示される。

    Sizes to consider テーブル

    Note :

     HOMER は0及び Costs テーブルで入力した任意の容量を Sizes to consider テーブルに自動的に追加する。これらの構成機器容量でシステムをシミュレートしたければ Sizes to consider テーブルの値をこのままにしておくこともできるし、異なる容量でシミュレートするしたければ削除・追加することもできる。

    HOMER は 15 kW の発電機をシミュレートする。Cost Curve 上には最適化変数は◆で表示される。

    Cost Curve

     HOMER は発電システムの費用にディーゼル発電機の設置費用・維持管理費用をどこまで追加すべきかを決定するシミュレーションプロセスの一部として、システム費用計算を行うために Costs テーブルの値絵をっ利用する。最適化変数はシミュレートしようとする様々なシステム構成に含まれるディーゼル発電機の容量がどの程度であればよいかを HOMER に示す。

  4. メインウィンドウに戻るために OK を押す。
  5. Wind Turbine Inputs を開くために回路図上の Wind Turbine 1 Wind Turbine 1 をクリックする。

  6. Turbine Type list において汎用の 10 kW 風力タービン発電機を選択するために Generic 10kW をクリックする。HOMER は汎用タービンの出力曲線を表示する。

    Turbine Type list

  7. Costs テーブルにおいて以下の値を入力する。Quantity 1, Capital 30000, Replacement 25000, O&M 500.

    Costs テーブル

    Note :

     風力タービン発電機の O&M (operation and maintenance)費用は年あたりドル($/yr)で表示される。時間あたりドル($/h)ではない。

    Sizes to consider テーブルでは、HOMER は自動的に 0 及び 1 を表示する。

    Sizes to consider テーブル

  8. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

  9. Battery Inputs を開くために回路図上の Battery Inputs をクリックする。

  10. Battery Type リストにおいて Trojan model L16P 蓄電池を選択するために Trojan L16P をクリックする。HOMER は蓄電池の属性を表示する。

    Battery Type リスト

  11. Costs テーブルにおいて以下の値を入力する。Quantity 1, Capital 300, Replacement 300, O&M 20.

    Costs テーブル

     Sizes to consider テーブルにおいて 0 及び 1 を削除し、8 を追加する。

    Sizes to consider テーブル

  12. メインウィンドウに戻るために OK を押す。
    これで構成機器に関する情報の入力を完了した。この時点では回路図は以下のように表示されるはずである。

    schematic

6.エネルギー源の詳細の入力

 エネルギー源に関する入力値では、1年の各時刻の太陽光・風力・水力・燃料の可用量を記述する。太陽光・風力・水力に関しては、固有フォーマットのファイルからデータをインポートするか、平均月次値から時刻別データを合成する。
 このセクションでは HOMER がシミュレートする2つの構成機器:風力タービン発電機及びディーゼル発電機が必要とする資源である風力と燃料に対する入力値の決定方法を説明する。

  1. Wind resource 入力値ウィンドウを開くために Wind resource をクリックする。

    Wind resource

  2. Import hourly data file を選択し、Import File をクリックし、Sample_Wind_Data.wnd を開く。

    Sample_Wind_Data.wnd

    Tip :

     Weibull K 値及びその他のパラメータを指定することで HOMER は12か月の時刻別風速を合成することができる。詳しくは Help を参照のこと。

    Sample Wind Data

     ベースラインデータは1年間の風力データを示す8,760個の風速値の集合である。ベースライン年間平均値(風速テーブルの最下段にある)及びスケール年間平均(scaled annual average)には特に注意すること。

     HOMER は資源可用性に関する感度解析を実行するためにシミュレーションにスケールデータを用いることがある。スケールデータを生成するために HOMER はスケール年間平均をベースライン年間平均で割ってスケールファクター(scaling factor)を決定し、この値を各ベースライン値に乗じることで決定している。デフォルトではスケール平均はベースライン平均と一致するようにスケールファクターは1にしている。システム設計の実現可能性における風速の影響を確認するためにスケール年間平均を変更することもできる。

    Note :

     スケール年間平均が0であれば、 HOMER は風力に関するデータがないと判断する。

     この練習問題では、スケール年間平均は年間平均と同一であり、シミュレーションでは HOMER はベースラインデータを用いている。第10ステップ:感度解析用変数の追加で、最適なシステム設計に影響を与える風速の幅を決定するためにスケール年間平均を利用する方法を扱う。

  3. 風速計が地面から 25m の高さに設置していることを示すため anemometer height を 25 m に設定する。

    anemometer height

  4. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

  5. Diesel Inputs ウィンドウを開くために Diesel (Resources セクションにある)をクリックする。

    _x0000_i1053

  6. ディーゼル価格が $0.4/L であることを確認する。

    Diesel Price

  7. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

7.入力値の確認とエラーの修正

 HOMER は入力ウィンドウで入力した値が技術的に意味があるかを確認するためにチェックを行っている。無意味な入力値があった場合にはHOMER は警告を発し、メインウィンドウにエラーメッセージを表示する。
 この例では HOMER はシステム設計にコンバータが含まれるべきであることを示唆するメッセージを出している。コンバータは交流(AC; alternating current)と直流(DC; direct current)に変換するもので、ACからDCに変換する場合は整流器(rectifier)、DCからACに変換する場合はインバータ(inverter)と呼ばれる。

  1. 詳細なメッセージを見るために Warning ボタン Warning をクリックする。

    _x0000_i1056

     警告は入力値に問題があることを示している。これらの問題のために HOMER を実行することができず、システム設計上に問題があるかを示すことができない。
     この例では回路図上でDCバスの間に負荷矢印がない。これは DC 風力タービンから AC 負荷へ電力を供給できないことを意味する。警告メッセージはシステム設計にコンバータを追加することで問題が修正されることを示唆している。

    Tip :

     problem は HOMER がシミュレーションを実行できないことを示す。

  2. 回路図にコンバータを追加するために Add/Remove をクリックし、Converter チェックボックスを選択し、 OK をクリックする。

    schematic

  3. Converter Inputs を開くために回路図上の Converter Converter Inputs をクリックする。
  4. Costs テーブルにおいて以下の値を入力する。Size 1, Capital 1000, Replacement 1000, O&M 100.

    Costs テーブル

     これはシステムにコンバータを追加・更新するための費用が 1,000$/kW であること並びにコンバータの維持に 100$/year/kW かかることを示している。

  5. Sizes to consider テーブルにおいて 1.000 を削除し、6 及び 12 を追加する。

    Sizes to consider テーブル

     これはシステム設計をシミュレートする際に、コンバータなし(0 kW)/6 kW コンバータ/12 kW コンバータという条件下で実行することを指定している。回路図上に表示されているピーク負荷は 11.5 kW であるので、12 kW コンバータならばどんな時間でも風力タービンが負荷の大半に供給できると推定できる。6 kW コンバータに決めることができれば高価なコンバータを小さくすることがさらに費用効果がある設計の選択肢となるかを確認することができる。

  6. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

    コンバータ

     これで DC 風力タービンから AC 負荷へ電力を供給できるようになった。.

    Tip :

     コンバータはインバータ(直流から交流へ)としても整流器(交流から直流)としても機能することに留意すること。これはインバータとしてのみ機能するシステムを解析した結果に影響を与えない。しかし Converter Inputs ウィンドウを開いてインバータに関する Capacity を0に設定することでコンバータの整流機能を削除することもできる。

  7. 最適化変数を見直すためにメインウィンドウのツールバーで Search Space をクリックする。

    Search Space

     Search Space summary テーブルでは各構成機器の入力ウィンドウで入力した全ての最適化変数(sizes to consider)が表示されている。対応する構成機器の入力ウィンドウを開いて Sizes to consider テーブルを修正するかこのテーブルにおける値を修正することで構成機器の容量を追加・削除することができる。

    Search Space summary テーブル

     この例のテーブルでは、最初の G10 は汎用(Generic) 10 kW 風力タービンを示しており、Gen1 は Generator 1 を示している。

    Note :

     HOMER は Search Summary テーブルにある全ての組み合わせについてシステム設計をシミュレートする。この例では HOMER は6つの設計案をシミュレートする。2種類の風力タービン台数(G10)・1種類のディーゼル発電機の容量(Gen1)・1種類の蓄電池台数・3種類のコンバータ容量の組み合わせなので 2 x 1 x 1 x 3 = 6 通りとなる。

  8. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

8.最適化結果の検証

 HOMER は構成機器の入力値で特定した構成機器の組み合わせ全てについてそのシステム構成をシミュレートする。HOMER は所与の負荷に適さないか資源や所与の条件に抵触し実現不可能なシステム構成案を捨てていく。

  1. シミュレーションを開始するために Calculate Calculate をクリックする。

     HOMER が実行中は進行状況を示すインジケーターがミュレーションが終了するまでのおおよその時間を表示する。(この例では約1分)

    インジケーター

  2. シミュレーションが終了すれば、Optimization Results タブをクリックし、あらゆる実現可能なシステム構成を表示するために Overall をクリックする。

    Overall Optimization Resultsテーブル

     Overall Optimization Results テーブルには確認された4つの実現可能なシステム構成のリストが表示されている。これらは(上から下に)最も費用効果がある構成から最も費用効果がない順に並べられている。システム構成の費用効果性は results テーブルの "Total NPC" に記されている正味現在費用に基づいている。この例では1台のディーゼル発電機/1台の蓄電池という構成(better configuration)が2台の風力タービンを含む構成(worse configuration)より勝っている。

  3. システム設計のテーブルを見るために Optimization Results タブをクリックし、Categorized をクリックする。

    Optimization Results タブ

    Categorized Optimization Results テーブルには最も費用効果のあるシステム設計を表示している。

  4. 最も費用効果がある風力タービン/ディーゼル発電機/コンバータの設計の詳細を見るために Optimization Results テーブルの2行目をダブルクリックする。

    Optimization Results テーブルの2行目

     Simulation Results ウィンドウでは HOMER がシミュレートした各システム構成の技術的・経済的詳細が表示される。この例では Electrical タブをクリックすると、システムにより生成した全電力エネルギーは電力需要を17%も超過しており、システムで消費されず無駄にされていることがわかる。システム設計にさらに蓄電池を追加すればこの超過分の電力もシステムで利用できるであろうか?

    各システム構成の技術的・経済的詳細

  5. メインウィンドウに戻るために Close をクリックする。
  6. File メニューで Save As を選択し、Excess_Energy.hmr としてファイルに保存する。

9.システム設計の更新

 このセクションではシステム設計を改善するための最適化結果の利用方法を説明する。この例ではシステムに蓄電池を追加することでシステムで生成された余剰のエネルギー量を削減できるかを確認する。

  1. Battery Inputs を開くために回路図上で Battery Battery をクリックする。

  2. Sizes to consider で 16 及び 24 を追加する。

    Sizes to consider

     これにより HOMER は 8, 16, 24 台の蓄電池のあるシステムをシミュレートする。

  3. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

    warning message

     変更を加えた results テーブルの結果を反映しないで閉じようとすると HOMER は警告メッセージを表示する。

  4. 最適化プロセスを実行するために Calculate Calculate をクリックする。

    warning message

     シミュレーションが終了すると、results テーブルに表示し、メインウィンドウの下部に警告メッセージを表示する。

  5. Battery Search Space May be Insufficient Warning ボタン Insufficient Warning をクリックする。

    Battery Search Space May be Insufficient Warning ボタン

     HOMER は Sizes to consider テーブルにさらに蓄電池の台数を増やすように示唆するメッセージを表示する。何台の蓄電池を追加すべきかわからないので新しい蓄電池の幅を追加する。

  6. メインウィンドウに戻るために OK を押す。
  7. Search Space Summary テーブルを開くためにメインウィンドウのツールバーで Search Space Search Space をクリックする。

  8. 蓄電池の数として 32, 40, 48, 56 を追加する。

    number of batteries.

    Tip :

     Battery Inputs ウィンドウの Sizes to consider テーブルにもこれらの値を追加すべきである。

  9. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

  10. シミュレーションを開始するために Calculate Calculate をクリックする。
    シミュレーションプロセスが終了すると HOMER は最適化テーブルに蓄電池を追加した結果を含む新しい結果を表示する。今度は警告メッセージは表示されない。
    Categorized Optimization Results テーブル (Batt.)の蓄電池の列でわかるように、最も費用効果があるシステム構成は 32 台の蓄電池のある構成である。

  11. Simulation Results ウィンドウを開くために Categorized Optimization Results テーブルで風力タービン/ディーゼル発電機/蓄電池の構成(第2行)をダブルクリックする。

    風力タービン/ディーゼル発電機/蓄電池の構成(第2行)

     風力タービン/ディーゼル発電機/蓄電池の構成という最も費用効果がある構成で生成された電力エネルギーの超過分が 17% から 3% にまで削減されたことがわかる。

    結果

  12. File メニューで Save As を選択し、Reduced_Excess.hmr として保存する。
    余剰のエネルギーを蓄積する蓄電池を追加することでシステム設計を更新することができた。しかし風力を用いた、さらに費用効果があるシステム構成があるかも知れない。システム設計に風力タービンを含んだ構成に意味があるとすればどのような条件となるか? この問題を解くために感度解析の方法を説明する。

10.感度解析用変数の追加

 第5ステップでシミュレーションのためのスケール資源データを使うことを学んだ。このセクションでは風速のスケール年間平均及びディーゼル価格に対する、これらの変数に関する感度解析を実行するための感度解析用変数を追加する方法を説明する。感度解析により、システムの最適設計に影響を与える平均年間風速及びディーゼル燃料価格の範囲を確かめることができる。またシステム設計に風力タービンを含むことに意味があるような平均年間風速及びディーゼル価格の範囲を示すことにも利用できる。

  1. Wind Resource Inputs ウィンドウを開くために Wind resource  Wind resource をクリックする。
  2. Sensitivity Inputs ウィンドウを開くために Scaled annual average の Sensitivities ボタン Sensitivities ボタン をクリックする。

    Sensitivity Inputs ウィンドウ

  3. Average Wind Speed sensitivities テーブルに 4, 5, 5.5, 6, 6.5, 7 を追加する。

    Average Wind Speed sensitivities テーブル

     これらの感度解析用変数の指定により、HOMER は7つの風速データ(テーブル内の値で各平均年間風速にスケールをあわせている)を用いて各システム構成をシミュレートする。

  4. Wind Resource Inputs ウィンドウに戻るために OK を押す。Sensitivities ボタン上の括弧の間に変数の数 7 が表示されていることに留意すること。

    _x0000_i1121

  5. メインウィンドウに戻るために OK を押す。

  6. Diesel Inputs ウィンドウを開くために Diesel Diesel (Resources セクションにある)をクリックする。

    _x0000_i1123

  7. Sensitivity Inputs ウィンドウを開くために Price Sensitivities ボタン Price Sensitivities ボタン をクリックする。

    Sensitivity Inputs ウィンドウ

  8. Diesel Price Sensitivities テーブル に 0.5, 0.6, 0.7 を追加する。

    Diesel Price Sensitivities テーブル

    sensitivities テーブルにおける各ディーゼル価格値に対する各システム構成をシミュレートする。

  9. Diesel Inputs ウィンドウに戻るために OK を押す。それからメインウィンドウに戻るために OK を押す。

11.感度解析結果の検証

 HOMER は感度解析結果をグラフ及び表で表示する。このセクションでは風力タービン/ディーゼル発電機のシステムのほうがディーゼルのみのシステムよりも費用効果がある条件を決定するために感度解析結果を見、解釈する方法を説明する。

  1. シミュレーションを開始するために Calculate Calculate をクリックする。
    プログレスバーがシミュレーション及び最適化プロセスが完了するまでのおおよその時間を示す。

    Tip :

     シミュレーションプロセス実行中はいつでも Stop をクリックすれば中止できる。

  2. 並び替えられたシステム設計の表を表示するために Optimization Results タブをクリックし、Categorized をクリックする。

    Categorized

     Categorized Optimization Results テーブル上部ボックスに Wind Speed 及び Diesel Price の感度解析用変数を表示している。平均年間風速が 7 m/s でディーゼル燃料価格が 0.70$/l のとき、風力タービン/ディーゼル発電機/蓄電池のシステムが最適システムとなり、風力タービンがないときよりも費用効果があることがわかる。
     平均年間風速及びディーゼル燃料価格における変化が affect 異なる風速及び燃料価格を選択することで最適なシステムタイプにどれくらい影響するかを確かめることができる。例えば、もしディーゼル燃料価格が 0.70$/l で平均年間風速が 4.5 m/s 以下であるとすると、風力タービンを含むシステム設計はもはや最適ではない。

    検討結果

     HOMER は感度解析結果を比較しやすいようにグラフで表示することもできる。

  3. 並び替えられたシステム設計を表示するために Sensitivity Results タブをクリックし、Graphic をクリックする。詳細な設定は以下の通りである。

     Wind Speed リストでx軸(x-axis)を選択し Diesel Price リストでy軸(y-axis)選択する。
    変数をプロットするために Primary リストでは Optimal System Type を選択し、Superimposed リストでは <none> を選択する。

    結果グラフ

     Optimal System Type(OST)グラフでは入力した風速及び燃料価格の全ての結果を同時に見ることができる。グラフは最適なシステム設計は燃料価格及び年間平均風速に依存していることを示している。

     HOMER ではシミュレーション及び最適化の結果を様々な表及びグラフで示すことができる。これらの表及びグラフに慣れるために異なるグラフを見るのに時間をかけて欲しい。

要約

このセクションでは覚えておくべきHOMERに関するいくつかの考えを示しておく。

  • HOMER を利用するために、ユーザは入力値(information about 負荷・構成機器・資源に関する情報)を入力し、HOMER は計算し結果を表示し、ユーザが表及びグラフで結果を確かめる。
  • HOMER を利用することは繰り返しプロセスである。入力値に関する大雑把な推定から始めて結果を確認し、最初の推定を更新して妥当な入力値を発見するというプロセスの繰り返しである。
  • HOMER は発電システムをシミュレートし、費用効果性について設計の最適化し、または資源の可用性及びシステム費用に関する要素についても感度解析を実行するために利用できる。
  • HOMER は時間単位のシミュレーションモデルである。HOMER モデルシステム・構成機器・可用なエネルギー資源及び負荷は1年間にわたる時間データである。エネルギーフロー及び費用は所与の1時間に対する定数である。HOMER はテーブルにおいて入力された月次平均値から時間単位の資源データを合成することもできる。または固有のフォーマットのファイルから計測データをインポートしてもよい。
  • HOMER は第一に経済モデルである。HOMER は構成機器の容量及び数量の異なる組み合わせを比較することもできるし、資源可用性及びシステム費用においてどの程度の差が異なるシステム設計を設置及び更新する際の費用に影響があるかを確認することもできる。バスの電圧水準など重要な技術的制約・構成機器の1時間以内の動作性能・複雑なディーゼル発電機の稼動戦略は HOMER のような経済モデルの範囲を超えている。NRELのハイブリッド発電システムのための設計ツール Hybrid2 ではこれら及びその他の技術的制約のもとでシミュレートし、費用効果があるとみなした設計の選択肢を有用とみなすことも考えられる。

連絡先

Peter Lilienthal, PhD

National Renewable Energy Laboratory
peter_lilienthal@nrel.gov
phone: (303) 384 - 7444
fax: (303) 384 - 7411

Tom Lambert, P.Eng.

Mistaya Engineering Inc.
tomlambert@mistaya.ca
http://www.mistaya.ca

Paul Gilman

National Renewable Energy Laboratory
paul_gilman@nrel.gov
http://www.nrel.gov/homer

National Renewable Energy Laboratory
1617 Cole Boulevard Golden, CO 80401 USA

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Updated : 2006/11/15