Location : Home > Humanisphere > Eyes
Title : Moonlight Mile
Site:Felix Logo
Moonlight Mile

 『World is mine』も『海猿』も連載が終了してしまったので、もはや新しい話題を提供することはない。だからというわけではないが、今回は『Moonlight Mile』(太田垣康男;小学館)について。

 これは、「ロストマン」「吾郎」の2人の元登山家が世界中の山を登り尽くして、エベレスト山頂から人工衛星を見て、「もっと高いところへ」と決意して宇宙飛行士となり、月面を目指すと言うストーリーだ。まだ2巻で訓練の途中なのでこの先何が起こるかわからないが。

 2巻の後半部分では「ロボットの時代」という一連のトピックが展開される。月面探査にむけて日本では月面歩行用ロボット・Moon Walker(MW)の開発・実験が進められている。吾郎は、その操縦士として実験に参加している。種子島沖の海底で、浮力を利用して擬似的に地表の6分の1の重力を作り出して歩行実験を行なっている。MWは2本足のロボットなので安定性に問題があり、よく横転していた。吾郎はNASAで BS (Building Specialist;スペースシャトル等で装置などの組み立てにあたる専門家)として訓練を受けており、この手の機械の操作の腕は一流なのだが、それでも横転を繰り返してしまう。開発の担当であり、実験現場の責任者でもある澤村はMWについて技術的には自信を持っているが、なかなか実験がうまくいかない。そんなある日、実験を記録するためにもぐっていたカメラマンが横転したMWの下敷きになり亡くなってしまう。
 吾郎澤村の2人は亡くなったカメラマンの葬儀会場に向かう。この2人がカメラマンを殺したと思っている葬儀の参列者は2人に詰め寄ろうとする。吾郎澤村に向かってこう言う。

「…いいか、今は周りから何を言われても黙ってろ。
 ただ遺族に頭下げて腹ン中で誓え。」
「この償いは俺の生き様で示すってな…」

 結局、事故の原因は、開発を長引かせて部品会社への発注を増やし、そのキックバックで私腹を肥やそうとした開発室長が故意に仕組んだ設定だった。しかしそれが判明するはるか以前の段階で、吾郎は自分がミスをしていないことを確信していたし、澤村もミスを犯していないことを確信していた。だからこそ、それ以外に何か原因が潜んでいるはずだと考えたわけだ。とはいえ、自分がかかわった場面で人が1人亡くなっている。それでもなお、責任転嫁しようとせず、自分が引きうけるべきものは引きうけ、さらに一歩前に進むというのは並大抵のことではない。
 生き様を問われるのは、逆境に直面した時、なのだ。


好きなだけです : PreviousNext : 生きろ…
Site:Felix Logo
Updated : 2001/10/03