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Title : Scrabbling on blog
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Contemporary Files #20080506
ブログに書くということ

なぜこの Contemporary Files がブログでないか

 最近はもう、個人がちまちまとウェブのページをちまちまと更新するのは流行ではないのかなぁ。組織のサイトも Flash とかバンバン使って見栄えはよいものになってるし。正直言って、昔はこまめに HTML の文法の改訂とかブラウザ間の表示の互換性とか、CSS文法とかチェックしてたんだけど、最近はもうついて行ってない。(一応言っておくが、「ついていけない」のではなくて、最先端の表示方法を駆使するとこで勝負する気がさらさらないので「ついていくのをやめた」だけだ。)
 たぶん、ほとんどの人が目にする個人のページとは、ちょっと前はBBSだったのだろうけど、今はかなりがブログなんじゃないんだろうか。で、数少ないここの読者も、ここがブログになることを望んでいるのかも知れない。ブログにしておくと(というか正確にはRSSを登録しておくと)わざわざここにアクセスしなくてもブラウザが勝手に更新を検知してくれるからだ。読者の利便性からするとそれもいいかな、と思って、一時期、まほろばのブログ(まほろぐ)にCFを移行しようかなと企てたことがある。けど、それは中断した。まほろぐの使い勝手や見栄えが悪いということもあるんだけれど、そもそもブログがCFには似合わないような気がしたからだ。

 単なるウェブページが書き手から読み手への一方的なコミュニケーション手段だとしたら、BBSはそれへのコメントを動的に追加できるようにしたものだ。Wikiあたりになればページ全体を編集することもできる。が、これらは結局最初に書かれたありかに依存するテキストの存在形態であるのに対し、ブログはトラックバックの導入によってテキストの部品はあちこちにあり、それをつないだよと知らせあう仕組みがあることで(単につなぐだけなら「リンク」にすぎない)書いた人/読む人の脳内でのテキストのあり方を拡張している。この、テキストのあり方の拡張という観点からは評価すべきだと思っている。

 じゃあ、なぜこの Contemporary Files がブログでないか。
 一番のネックは、自分のテキストへのこだわりかも知れない。自分の書いたテキストが管理者の都合で無くなってしまうというのがどうも嫌なのだ。自分のテキストは手許においておきたい、という感覚が私にはあるのだ。
 最近、加入していた弱小SNSが閉鎖されたのだけれども、当然ながらそこにあった書き込みは全て無くなった。もちろん手許にいちいち保存していればいいんだろうけど、たいしたこと書いてないので、もう私では再現できない。SNSが管理されていたサーバが内容を消去されないまま売りにでも出されたら話は別だが。
 そもそも私の文章はハイパーテキストに向いていないのかも知れない。そのページとして完結しようとする。そして私自身の思考もそれに適するようになっているのかも知れない。どうも、どこかのサーバにオンラインしたまま書き込むという作業が苦手なのだ。オフラインで書いたものをアップするという形態を常用している。「オフラインで書く」ためには、自分の書いたものや書くために利用するものは思考の現場としての手許に必要なわけだ。

 もう一つ。ブログの持つ断片性に慣れていないことがあるのかも。
 ブログにタグやキーワードをつけてそれに関連するテキストに並べ替えることも可能なのは知っている。けれども、それで意味のあるテキストに仕上げるほどにはこちらの文才が対応できていないと感じるのだ。ここの文書群のタイトルが「Contemporary Files」な割りに、その時機にしか通用しない文章を書き散らすつもりはないとでも言えば言いのだろうか。
 一応、このサイトでもブログにリンクを張っているが、ほとんど更新していない。私から見ればブログは、それに対応できる文才が伴わない限り、やはり今書いたように「その時機にしか通用しない文章を書き散らす」ものでしかないのだ。

どうなるんだろう、青山学院大学の瀬尾准教授は。

 そのブログの「ブログに書くということ」で触れた青山学院大学の瀬尾准教授のブログでの「炎上」騒ぎ(2ch的には「祭り」と言うべきか)って、それほど一般のニュースでは報道されていないから、知らない人も多いかも知れない。詳しい事情は「青山学院大学国際政治経済学部准教授 瀬尾佳美 まとめ」にまとめられているからそちらを参照していただくこととして。

 私は彼女とも青山学院大学とも何の縁もないので、どういうことになろうと痛くもかゆくもないのだが、この顛末というのはいろいろと考えるべき問題を提起してくれている。

 「祭り」になって大学に抗議の電話が殺到してブログが事実上の閉鎖(というかアクセス制限された)される前に彼女の文章を読んだのだけれども、その内容も表現も論理構成も、とても大学教員の水準とは思えない。が、まあ、ネット上にはその手の書き散らしは掃いて捨てるほどあるのも事実だし、彼女もそんなつもりで書いたのかも知れない。推敲された文章としてではなく、本当に「書き散らかした」という感じで。
 問題となった彼女のブログでは当初プロフィールに「青山学院大学 准教授」とあった。問題となってからその部分は修正されてしまい「この日記は筆者の個人的なものであり、所属組織とは一切関係ありません。」となっていたが、時既に遅しって感じ。もし彼女のブログが最初から匿名であったなら、「ああ、またイタいこと書いてるヤツがいるな」で済んだのではないか。プロフィールに自分の公的な所属を書いた上でブログを書いているのであれば、特に免責事項が明記されていない限り、文章に問題があった場合に公的な見解とみなされてしまう危険が高い。私だってここでいろんなこと書いているが、やっぱり会社とか家族・親戚に迷惑がかからないように匿名だし、万全かどうかは怪しいがそれなりに表現に配慮している。それが最低限のマナーであり、自分周辺へのリスク対策でもある。そう、この顛末での教訓の1つめは、やはり実名または所属名を出してネット上に文章を出すときは十二分に内容と表現に配慮すべしである。
 だからと言って匿名だったら何を書いてもいいかというとそうではない。あまりに度が過ぎると特定されて責任取らされるんだけども。

 さて。仮に問題な発言をしている人のブログを取り上げて2chなどで盛り上がっているだけであれば、それはそれで眺めているだけでもそれなりに楽しめる。が、問題によってはそれが臨界点を超えて、電凸などの不特定多数による実力行使に転移することがある。「電凸」的な行動はこれだけネットが定着するまでにもあった。時折CMが差し替えられるのがその例だ。
 全ての問題で臨界点を超えるわけではない。超えるのは、当初の問題を起こした人物・組織が対応しないか、または対応したけれどもその対応がさらに火に油を注ぐようなものであった場合だ。今回の場合は後者。ちっともリスク管理できてないよー。この顛末での教訓の2つめは、やはり問題に対しクレームが発生したら、その原因に対し真摯に対応すべし。当たり前だけど。

 さて、この顛末、まだ終わってない。GW明けに大学側が処分を検討して本人に言い渡すようだ。
 自組織の構成員が自分のブログで書いたことで社会的に問題となった場合にそれを理由にその構成を処分できるかというと、たぶんできるんだろう。民間企業ならたぶんできる。著しくその組織の信用を失墜させるような行為をした場合は(解雇までいくかはともかく)処分されても仕方ないだろう。だからこそ、自分の立場を守りつつネットで好き放題言いたいのであれば、自分の所属とは無関係としておくべきだろう。いくら「所属の見解とは無関係です」と主張しても、そうみなしてくれないこともある。それはおそらくすぐには対処できない。結局、長い間のネット上でのキャラ醸成に依存すると思う。普段から理路整然とまともなことを書いている人が突然何か壊れたような文章を書いてしまった場合には、おそらくそんなとっぴな文章を書かざるを得ないような特別な事情があったのではという斟酌も可能だ。そして仮に書いた人の所属が公開されていないのに何らかの方法で特定されたとしても、普段の(ネット上での)言動がその所属の立場と一線を画すようであれば、それは個人の見解だとも見てくれるのではないか。組織としての発言ではなく、その個人の見識として見なされる。けれども普段から人を攻撃し、表現も目を覆いたくなるような文章で綴られていては、そういうキャラと見なされ、仮にその所属が特定されてしまえば、そのキャラを許す組織と見なされる危険がある。ネット上のキャラと現実の組織での振る舞いが異なったとしても、それはネット上からは判断できない。こうなると、組織の長の腹の座り具合で対応がかわる。もし現実世界では全うに生活しており、組織上問題がないのであれば、ネット上の言動とは切り離して処分しないということも可能だ。というかそれは組織としての判断であって、それは組織の裁量だ。けれどもその影響をその組織以外が是と見なさないとき、発生する逆風をも受け入れるという覚悟も必要になる。

ブログを書くということ

 実に多数の人がブログを気楽に書いているけれども、そこにはいろんなリスクが潜んでいる。不用意な書き込みは他人を傷つける…だけでなく、誰かの個人情報を漏らしてしまう恐れもある。
 ブログを書くにはそれなりの力量が必要だと思うのだが、手軽さだけが強調されているのはちょっとコワい気がする。


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Updated : 2007/05/06