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Title : Nationalism and Right wing
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Contemporary Files #20000206
オーストリア制裁
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 今、ヨーロッパが揺れている。
 2月4日、オーストリアで成立した連立政権を巡っての騒動である。

 従来、オーストリアでは社会民主党主導の政権が30年間続いていた。しかし昨年の選挙で敗北し、過半数を得ることはできなかった。単独政権を維持しようにも議会で信任されないには必至。そこで、まず保守系の国民党との連立交渉に入っていたが不調に終わった。結果として国民党と自由党との連立政権を探るしか選択肢がなかった。しかし、この自由党は国際的に「極右」とみなされているため、この政権を各国は忌避し、イスラエルは大使を召還し、EU・アメリカは制裁措置発動を発表したのだ。

 EUの制裁措置は以下の通り。

  1. EU14カ国はオーストリアとの政治レベルの折衝を行わない。
  2. 国際機関への同国候補者を支持しない。
  3. オーストリア大使との接触を事務レベルに限定する。

 また、アメリカ合衆国の制裁は以下のとおりである。

  1. オーストリアの新国防相が関係する式典に同国駐在の武官は出席しない。
  2. 新政権との接触を制限。
  3. 追加措置を検討。

 なぜ、ここまで自由党が忌避されるのか?
 それは自由党のハイダー党首がヒトラーを認めるような発言を繰り返してきたからである。しかし、それでも、オーストリア国内では少なからぬ議席を確保しているという事実がある。オーストリア国民は、長期にわたる社会民主党と国民党による2大政党の支配の行き詰まりを感じていたからだと伝えられている。その一方で、EUへの統合化の流れの中で、グローバルな競争にさらされ、増加する失業などの不安が高まってきていた。その不満の受け皿としての自由党へと票が結集したのだ。
 グローバルな動きが激しいときには、ナショナリスティックなポピュリズムが脚光を浴びる。形は異なるがこのような動きはアメリカ以外の(!)各地で起こっている現象ではないか。それが露骨な形でオーストリアで表面化した。

 実にこれはやっかいな問題である。

 民主主義国家の有権者の選択の結果を、国際社会は否定してかまわないのか?
 それとも、危険な政権は早めに介入して芽をつむべきなのか?


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Updated : 2000/02/06