十把一絡(じゅっぱひとからげ)

やまもと雄大

みんな同じように同じことをして

同じことを考えて

同じものを食べて

同じ服を着て

同じ時に

同じ状況で

同じ口の開け方で

同じ声の大きさで笑えと言われても無理な話だ

みんな同じ理由で

同じ絶望感を味わい

同じような傷つき方をして

同じ量の涙を流し

同じような泣き方で泣けと言われても出来ない相談というものだ

もし みんながみんな

器用に家を建てられるなら大工職人は失業してしまう

もし みんながみんな

じょうずな芝居ができたら俳優で食えなくなる

それぞれの胴体を持ち

それぞれの色を持ち

それぞれの匂いを放出し

それぞれの味わいを持っているのだから

どうか鬼さん

十把一絡にして食わないでひとりひとり味わって食ってくれないか

1989年12月15日