傷を治すということ (形成外科=精神外科?)
Q1  傷痕は完全に消せる?
Q2  どんな傷痕でもきれいにできる?
Q3  医者の「技術」か「やさしさか」?
Q4  インフォームドコンセントの重要性
Q5  形成外科=精神外科?(心の傷を治す)
Q6  すべての医療はQOL(quolity of life)へ通ずる
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Q1:傷痕は完全に消せる?

 残念ながら今の医療技術では一度できてしまった傷は消すことはできません。 つまり、けがをする前と全く同じ状態の皮膚にもどすことは不可能なのです。 では、傷を治すということはどういうことなのか? それは「目立つ傷を目立たない傷に置き換える」ということなのです。


Q2:どんな傷痕でもきれいにできる?

 いえいえ、どんなことにも限界はあります。それに、傷痕のでき方には個人差も大きいのです。 『Q:それならば、大きな傷痕はあきらめなければいけない?』 そんなことはありません。それどころか目立っている傷痕ほど、治しやすいのも事実です。 その理由のひとつは「目立つ→目立ちにくい」の差が大きくなるからです。 それに、Q5にも関係があります。


Q3:医者は「技術」か「やさしさか」?

 では問題です。究極の選択「技術は素晴しいがやさしさのかけらもない医者」と 「人がよくてやさしいが技術的に問題のある医者」のどちらにあなたなら診てもらいますか? 確かに、医者には患者の立場に立って物を考えれる「やさしさ」も必要でしょう。 しかし、患者の立場では技術が無い医者は医者ではないのです。  そう、ここでの(傷を治すということ?)話しには「医者」=「技術のある医者」 が大前提です。外見上の傷痕を治した上で、精神的にもその傷から解放する それが大切なのです。


Q4:インフォームドコンセントの重要性

 外見上の傷痕を治すのはそれなりの技術をもった形成外科医が手術をすれば 難しいことではありません。それよりも難しいのはどれだけ患者さんに満足してもらうかなのです。 そのため(満足してもらう)には十分な説明が不可欠です。手術結果を患者さんに満足してもらう ためには以下の条件が必要でしょう。
1: 患者自信が傷痕を治したいと強く望んでいる。 2: 傷痕は無くならない、目立たなくなるだけと理解している。 3: 医者と患者の間に十分な信頼関係がある(この先生なら任せれる)


Q5:形成外科=精神外科?(心の傷を治す)

 これがこの章の本題です。上でも少し書きましたが、外見上の傷痕を治しても形成手術が  成功したとはいえません。私が(私たちが)傷痕を治すという時は外見上だけではなく その傷痕が原因でできた心の傷痕(コンプレックスなどということもある)を、外見上の 手術をすることで(それをきっかけとして)取り除くことが最も大事なことなのです。 同じ様な傷痕があっても、ものすごく気にする人もあれば全く帰にしない人もおります。 そのように、手術で同じ結果を得ても「なんだ、これぐらいにしかならないのか」と思う人と、 「ここまできれいになって」と思う人とがおりますが、それは治療結果からいえば 天と地ほどの差があるのです。つまりは、傷痕を治すということはその人のコンプレックス を軽くすることです。その意味から、形成外科を精神外科といったのです。


Q6:すべての医療はQOLへ通ずる
        (Quolity of Life)

 今まで書いてきたように外見上がきれいになっても、その人のコンプレックスを 取り除けなければ手術は成功したとはいえません。精神的に傷痕から解放できなければ 完全に社会復帰できたとは言えないでしょう。  「病を診て人を診ず」という言葉もあります。患者を診るときは、具象だけを診てしまう ことがしばしばあります。しかし、「人を診る」と言葉で書けば簡単ですが実際の 臨床の場で一人一人の患者さんを相手に、その人の精神状態や精神の変化を診るのは 口に出していうほど簡単なことではありません。第三者から見れば小さな傷痕かもしれませんが 本人にとってはどれほど大きいものかははかり知れません、このことがQOLの向上に 結び付く医療を考える上で重要な事の一つではないでしょうか。