ダカールタクシー事情

タクシーを借り切って市内を回った。
グリーンサヘルのガイドブックには「団員だけでの行動は慎んで
下さい」とあった。
だから「いいのですか?」と聞いたがホテルのタクシーなら大丈夫
ではないか、という事でホテルのフロントからタクシーを呼んでもらって出発。
どんなタクシーなんだろうか。
まあ、日本のタクシーの様にきれいな事は無いだろうが・・・。
ホテル前を少し歩く。途中にとんでもない車が待っていて
「あれじゃなかったらいいのに」「まさかこれ??」とか色々と思いながら歩く。
かくして到着したタクシーはやっぱりすごい物だった。
車はコロナ位だろうか。左ハンドル。ハンドルには自分で巻いたのであろう、
とんでもない太っとい皮が巻かれている。ハンドルはその結果直径6センチ
くらいになっている。イスにはボア付きのカバーが付いている。
カバーなのか元々のシートがそうなのかは分からないがいずれにしても
汚れている。丁度羊の皮を思い出していただきたい。
でも羊の皮と言っても応接間にある羊の皮ではなくて牧場で元気に走り
回っている羊の皮である。当然の事だが走り回っている羊の皮は
土やおしっこやウンコで色はすでに白くない。
どろどろ状態と言うと言葉が悪いが似た様なもんだ。
その羊の皮をはいできてそのままおっかぶせた様なシートである。
ここまで来たら「あっぱれ」としか言えない。
アフリカで使うタクシーのシートが新車の状態からボア付きであった
という事は極めて考えにくいので、恐らくパリかどっかヨーロッパで
使い古された車をセネガルに運んできてタクシーに使っているのであろう。
日本の五島建設とか服部工務店とか書いた車がロシアでがんがん
走っているのと事情は同じだ。
後席に座ったが、ドアの内側には本来ある筈の物が色々と失われ
ていて見当たらない。 まずは窓の開閉レバー。
これでは全く窓を開け閉め出来ないではないか、と言うとドライバー
が足元から何やら出して来て運転しながら後部ドアをごそごそいじっている。
「おいおい、ちゃんと前見て運転してくれよ」ハンドルがぶれて
車はかなりの蛇行をしている。
しばらくすると窓がするするっと開いた。
なるほど、ハンドルを一つだけ持っているんだ。
「なかなかやるやんけ、おっちゃん。」
更に無いもの。ドアを閉める時に引っ張るドアの内側のハンドル
というか取っ手。
これは完全に無くなっている訳ではないがかなりの部分が失われている。
ま、引っ張るという最低限度の機能は果たしているのだから文句は言えない。
更に無いもの。
これは無いという事ではないが無いのと等しい。
開閉レバーがちょろっとあるのだが素人には操作が出来ない。
つまり一旦乗ってしまうとドライバに開けてもらわないと自分でドアを開けて
降りる事が出来ないのだ。
降りる時にはドライバーが「おらよっ」てな感じでドライバシートから腕を
伸ばしてドアを開けてくれる。
ドライバにしてみればお金を払わずに逃げる客を押さえる事が出来る
ので多分好都合なんだろう。
何度も車を降りる機会があってその度に開けようとチャレンジするのだが
10回程度チャンスがあって開ける事が出来たのは一回だけであった。
ドライバーは私が開けたのを見て驚きをかくせない不思議な顔をしていた。
「おら以外にこのドアを開けるやつがおったのか・・」てな感じだろうか。
道路の交通マナーはそんなに悪くない。
何故だかしばらく考えていて気がついた。
オートバイや自転車がほとんど走っていないのだ。
車ばかりが走っていて、道は決して狭くないのでぐちゃぐちゃになって
走っているバンコックなんかの道とはかなり様子が異なる。
たまに渋滞するが、渋滞さえ無ければスイスイと走る事が出来る。
しかし街並みは恐ろしく汚い。汚いという形容は申し訳なく思うが
ゴッチャゴチャである。建物も崩壊寸前の建物が多数。
そんな建物によりかかる様にあばら屋という形容がいいのか掘っ建て
小屋という形容がいいのか、そんな住居や店が所狭しと並んでいる。
道にはたくさんのごみが落ちている。
多くが紙ゴミあるいはスーパーの白いプラスチックの袋の様だ。
しかし、不思議な事にたばこの吸い殻が落ちていないと言って
いい程見当たらない。
日本でなら当然落ちていてしかるべしたばこの吸い殻が全くと
言っていい程落ちていないのだ。
まさかマナーが良くて煙草の吸い殻を捨てない、なんて事は
非常に考えにくい事だ。しばらく考えて気が付いた。
こちらでは煙草そのものが贅沢な物であり、それを捨てるなんて
考えられないのだろう。
多分、元々捨てる人が少なく、もし捨てる人がいても次に通りかかった
人が拾うのだろう。捨てる紙ありゃ拾う紙ありだ。


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