やっぱりスタック

我々の心配をよそにドライバーはがんがんと砂漠を走る。
砂漠にもけっこうな起伏があるが、エンジンをウンウン
うならせながらバスは進む。
何度か「こらもうあかんのとちゃう?」という場面があるが、
バスはかろうじてそれを切り抜けていく。
しばらく行くと海が見えてきた。
1km程先に大きく砕け散る白波が見える。
大西洋のどっかだろう。海がみたい。
人は海にその起源を発している。
海が見たい、海に触れたい、
これは人間の本能だと聞いた事がある。
海を目前にしてバスは坂を登り切れなくなった。
そんなに大きな坂ではないがどうしても後ろのタイヤが
埋もれてしまう。何度やっても同じ。
ドライバーはスパナを持ってバスの下に潜り込み
何やらとんとんやっているが数回トライしても駄目だった。
しばらくかかりそうなので我々はバスを降りて海を見に行く。
ほんの200m程だろうか、
歩いたがやはり砂地は歩くと疲れる。
しかし、そんな重い足取りで歩く我々の脇を嬉しそうに
飛び跳ねて掛けていく人影があった。K氏である。
ぴょんぴょんと跳ねながら海に向かって
一直線に掛けていく。
少々走り方がオカマチックなのは彼の個性なんだろう。
海に着いた。波が荒い。
波の高さ5m、7m?サーファーが見たら涙を流して喜びそうな
波だ。チューブライドという大技があるが、
しっかりチューブを巻きながら波は足元に流れ着く。
しばらく見ていると、裸足になって海に漬かるもの、
腰まで漬かっているもの、色々だ。
海はやはり人に何かの影響を与える様に見える。
しばらく遊んでバスに戻る。
まだカンカンやっている。
しかし、ドライバーの努力の甲斐あってバスはしばらく
後に砂地から這い出した。
どうやら4WDの筈がいつの間にかボルトが抜けて2WDに
なっていたみたいだ。そら走らんわ。
こんな砂地のところで2WDでは一歩も前に進まないだろう。
どんどん砂漠を前向いていくというドライバーをなだめて
元来た道を戻る。
ドライバーはそれなりにプロ意識を持っており前に進みたい
らしいが、我々はここで野宿をする訳には行かない。
申し訳ないがちょっとプロ意識にへっこんでいただいた。
もと来た道をひた走りに走ってバスを乗り換えた
ホテルに戻る。
帰りの時間は短く感じる。


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