植林の手順
市場は市場として我々はまず植林をしなければならない。
何をおいても植林地にまず到着
植林地には森林局の担当の人と村の子供たちと若干の
女達が待っていた。
総勢で30人程か。あら?男達はどこに行ったの?
今日は市場だからそちらに行っていて植林は手伝わないの?
あれれれれ・・ 何か力が入ってないぞ。
これでは前に植林して失敗した様に、また失敗するのでは
ないかという感じ。
少し力が抜けるのを感じる。
取りあえず今日は防風林の植樹を進める。
目的の植樹をする前に植林地の回りを防風林で囲っておかない
と雨季はいいけど乾季になると砂嵐が植林した苗を砂で
埋めてしまうそうだ。
以前に防風林とユーカリを植林した様だがユーカリは全滅、
防風林だけが残っている。
その防風林で歯抜けになった所に新たに苗を植えて行く。
防風林は一重だと砂も容易に通り抜けて来るので
可能なら3重、少なくとも2重になる様に苗を互い違いに植えて行く。
植える段取りは以下の要領。
測量班はロープにマーキングをする。
防風林は1m間隔で植えるのでロープに1m間隔に紐を結わえて
簡単に1mが測れる様に巻尺のかわりのものを作る。
防風林の歯抜けになった所に先ほどの巻尺を当てて
場所を決めて行く。 掘る係りはひたすら掘る。
大きさは30cm角で深さが40cm位か。
シャベルで掘る訳だが、このシャベル。
ちょっとでも無理にこじったりするとミシミシっと極めて不穏な音を発する。
こら力入れたら折れるで。
工夫しながら騙し騙し使わないとすぐ折れるわ。
と思って作業をしていると案の定少し離れた所からバキッと悲痛の音が。
あららら、やっちゃったのね。
見るとY氏が折れたシャベルを持って立っている。
ばつが悪いのか慌てて折れたシャベルを叩いて軸を抜こうとしている。
そんなもん簡単に直せるんかいな、
と思って見ているといとも簡単に修理をしてしまった。
多少柄が短くなったが作業に支障はなさそうだ。
簡単に折れたが、簡単に抜けて簡単に修理が出来た。
よかったね。
穴が掘れたら苗を穴に入れる。
苗を運んで来るのは子供たちの仕事だ。
黒いビニールで包まれた苗を一本二本と手にかかえながら
けなげにも一生懸命に運んでいる。
子供たちはよく働く。
日本の子供達にこんな作業をさせたらどうだろうか。
やっぱ子供たちは興味を持って動くだろうか。
う〜ん、悩ましいなあ。
苗を入れたら土をかける。
と言っても苗を植えている面がまわりの土よりも5cm程低く土を入れる。
本来なら土をかける前に白蟻の薬を入れるのだが、
今回は入れなかった。
この木は白蟻がつかないのか?
しかし、防風林の一部で白蟻が木に取り付いて真っ黄色になった
木があったが・・。
最後に水を入れる。水はウォロフ語で「ロホ」。
あちこちで「ロホロホ」と水を呼ぶ声がする。
水は植林地の端にある井戸から滑車を使って女達が汲み出している。
井戸はかなり深い。20m位あるそうだ。
井戸のまわりの囲いも決して高くない。
近くに行くと「はまったら大変だ」という気持ちが強くなって
中を見るのもへっぴり腰になってしまう。我ながら情けないが仕方ない。
こんな所で井戸に落ちて殉職した、なんて事になったら笑われ
こそせよ誰も誉めてくれない。
女達が井戸から滑車を使って水を汲み上げるスピードはとんでもなく早い。
井戸の滑車にはゴムの黒い袋が結ばれている。
この黒い袋が水をしっかりとかかえて汲み上げて来るのだ。
しばらく見ていたが何で出来ているのかはっきりとはわからなかった。
そう、この時点では正解を知らなかったのだ。
でもこの謎は後で市場に行った時にはっきりとするのであった。
女達の汲み出した水は一旦は大きな金ダライに集められる。
金ダライに何ばい分かが集められて女達はその金ダライを
例によって頭に乗せて運んでいく。
行き先はドラム缶。
植林地の真ん中あたりにドラム缶がどっかと置かれている。
金ダライに入って運ばれてきた水は一旦そこにガバーと空けられる。
ドラム缶いっぱいの水を汲んで運ぶには相当な労力が必要だと
思われるが女達はいとも簡単にこなしてしまう。
団員のU隊員が金ダライを頭に乗せて運ぶという事に挑戦していた。
よろよろよろよろ、非常に不安定。
当たり前だ日本では基本的に頭に何かを乗せて運ぶという習慣がない。
いや、むしろ頭の上に重量物を載せると背が伸びなくなるから駄目
だとしつけられた。
でも、アフリカ人は背が高い人が多いぞ。あれは嘘だったのか・・。
9時過ぎから開始された植林は10時半には終了した。
100本位は植林しただろうか。
団員22名と子供達でやればあっと言う間であった。
途中、防風林のはじっこに幹が黄色く砂を塗りたくった様に見える
木があったが白蟻の巣になっているそうだ。
分かっているんだったら何とかすればいいものを、放ったらかしに
してある。悠久の大地アフリカに住む人々はおおらかだ。
しかし、この植林地の地面は非常に簡単に掘れる。
さっきシャベルが折れた話を書いたが、それはシャベルの柄が
弱すぎた為で決して地面が硬くて苦労したというモノではない。
本当に簡単に掘れる砂場みたいなもんだ。
一人が一個の穴を掘るのにものの1分、余裕を見ても2分もあれば
完璧に仕上げる事が出来る。
これも去年の植林地と違う所だ。
去年は穴を掘るにも岩盤に穴をあけるが如く苦労をした様だが・・。
これは地盤の問題もあるかも知れないが今年の天候が幸いした
と考えるべきだろう。
今年は雨が本当にいいタイミングで降っているそうで
見渡す限りに緑が広がっている。
アフリカの乾いた大地を想像するのはちょっと困難な位だ。
雨が定期的にうまく降ってくれたおかげで地盤も柔らかいのだと言う。
良かった、ラッキーしたぞ。
二日目は防砂林ではなく果樹を植える。
果樹と言ってもいささかたくさんある。
今日植えるのはマンゴである。
セネガルではマンゴはいたるところで栽培されている。
バスで走っていてもやたらとマンゴを売っているのを見かける。
本当に何はなくともマンゴって感じ。
マンゴがこの国の主食なんだろうか、と勘違いしてしまう様な勢いである。
マンゴはちゃんと育てれば村の食料事情の改善に役に立つし、
売り物になる物であれば確実に現金収入になる。
だから村人には自発的にマンゴを栽培する方向で呼びかけを
する訳だが、なかなか根づかないらしい。
村人は今日をいかに食べるかには関心があるが、
未来の話には興味を示さないらしい。
「今これやっとけば将来楽になりますよ」。
日本では商売の殺し文句の様に使われるせりふであるが、
ことセネガルでは通用しないのであった。
マンゴの穴は昨日の防砂林に比べると少し大きい。
一辺の長さが50cm。ざっと昨日の倍の大きさになる。
なんでかは知らない。苗も気持ち大きな苗の様だ。
苗が大きいから穴も大きいのか。
そんな単純な理由であればいいのだが。
仕事は昨日と同じ様に測量から入る。
ただし、昨日の測量が1m間隔であったのに対して今日は6m間隔になる。
果樹を植えるという事でそこそこ間を空けておかないと
将来ちゃんと育った時にお互いが邪魔をしてまともな実が取れないのだろう。
測量屋さんが測って、ここ掘れワンワンと私たちに指示をする。
我々は指定された位置をひたすら掘る。
と言っても昨日と同じで地盤はゆるくてすぐに掘れてしまう。
測量はどんどん進んで行くが、決してそれに遅れを取るわけではなく
穴堀班が付いていく。 今日もその様に穴堀りはあっという間に終り。
しかし、これから苗を受けなければならない。
担当の方からどうやって苗を植えるのかの説明がある。
基本的には防砂林と同じ。
ただし、ビニールのはずしかたが防砂林と少し違う。
ま、どっちでもいいと言えばどっちでもいいんだろうが…。
いざ、苗を植えようとすると、村人から位置が気に入らない
とクレームがついた。
おいおい、そっちの人間が測量して位置を決めたんやぞ。
我々は言われるままに穴を掘ったんだよ。
どんだけずれてんのか知らんが、わしらだって暇じゃないんだよ。
(実は思いっきり暇なんやけどね)。 ちゃんと測ってよ。
ね、たのむわ。
ずれはわずか1m程。こんなもんどないやっちゅうのん。
ところで、今日掘った穴は意外と少なくて60程だ。
6m間隔なんでそんなに植えられる訳ではない。
穴を掘った後は当然各穴にマンゴを一本づつ植えて行く。
特別に気にしなければならない事はない。
苗を植えるのもあっという間に終わってしまった。
苗がないところからは「ヴェンナマンゴ」と声がかかる。
「ヴェンナマンゴ?」何言うとんねん。また分からん言葉使うて・・。
と思っているとヴェンナは数字の1、マンゴはそのままマンゴ。
つなり苗を一本持って来いという事だったのだ。
なるほど聞いてみるもんだ。マンゴが二本なら「ニャールマンゴ」ってとこか。
植林は昨日と同じ様にあっという間に完了。
今日からは本格的な植林が始まるというふれこみであったが、
ま、こんなもんですか。
団員の中に妙なはやり言葉が蔓延する。「今日はこれ位にしといたろ」
Y氏が言い出しっぺである。
昨日はマンゴを植えたが、今日はガバを植える。
マンゴもガバも果樹だから成長したら村人の役に立ってくれるだろう。
しかし、桃栗3年柿8年の例えがある様に、
日本でもいっちょこまえの果樹になるには数年という年月が必要である。
このアフリカの痩せた土地で果樹がどれだけの速度で成長するか
分からないが、少なくとも3年や5年は我慢して面倒を見なくてはならない
事になるだろう。
さて、村人にそれだけの忍耐力と持久力と責任感があるだろうか。
はなはだ疑問である。
今日はガバを植える。本数にして30本余り。何と昨日よりも簡単ではないか。
本当にあっという間に終わってしまった。
昨日は位置の測量から始めたが、今日は既に位置が決められて
簡単に掘ってある。
昨日一度掘ったところを先方のミスで埋めて掘り直しをしたが、
それが内部的に反省材料として上がったのであろう。
多分日本に対して心証を悪くしたという事で今日は位置を既に決めて
あるという事でセネガル側の姿勢を示したものだと思われる。
いずれにしても植林の手順はマンゴを植えるにしてもガバを植えるにしても
全く同じ。あっという間に作業は終了してしまった。
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