【海洋汚染】

海面を覆う大量の原油、油にまみれてもがく海鳥たち、死んだ魚で埋めつくさ
れる海、見渡す限り原油の打ち寄せられた黒い砂浜・・・・・・。

1.原油
 1989年、アラスカ湾で座礁したエクソン社の大型タンカー、バルディーズ
号から流出した大量の原油が付近の海域を汚染、大量の魚、ラッコ、海鳥が死に、
いまだに生態系は修復できていません。日本でも1974年、水島製油所で起き
た重油流出事故は沿岸漁業に大きな被害を与え、直接の損害だけでも200億円
を上回り、あらためて石油コンビナートの危険を思い知らされました。
 湾岸戦争では大量の原油が流され、無数の油田が燃やされるという史上最悪の
事件が起こり、閉鎖性のペルシャ湾の回復には100年以上を要すると言われて
います。毎日何百隻もの巨大タンカーが世界の海を走り、タンカーやバイプライ
ンの事故や海洋投棄は今も無数に起こっています。

2.化学物質
 アザラシの大量死やイルカや魚の減少が話題になっていますが、体内から想像
を絶する量の化学物質が見つかっています。DDT、BHC(殺虫剤や農薬)、
PCB(変圧器などの絶頬油、合成樹脂の難燃剤)などです。
 化学物質の高濃度汚染は大量死以外にも奇形、繁殖力の低下など様々な問題を
起こしています。化学物質はもともと自然界に存在しなかったもので、私たち人
類が化学的に合成し自然界に放出してしまったものです。その多くは自然界で分
解せず長期にわたって残留し、食物連鎖によって高濃度に生体蓄積されます。
 汚染海域のプランクトンを小魚が食べ、それを食べる大きな魚は、正常値の百
万倍の濃度で汚染されていることも珍しくありません。そして私たちがそれを食
べるのです。私たちが自然を汚したならば、回り回ってそれは私たちに帰ってく
るのです。海洋生物だけでなく私たち自身も同じ被害にあっているのです。

3.重金属
 イルカや魚たちの体内から水銀、カドミウム、鉛などの有害な金属も見つかっ
ています。水銀は水俣病、カドミウムはイタイイタイ病を引き起こします。
 これらは殺虫剤や農薬、電池に使用され、また工場の廃液や廃棄物として大量
に自然界へ放出され、それが食物運鎖によって生体蓄積されるのです。
 廃棄物の埋立によって土が汚染され、それが水に溶けて水を汚染し、最後は海
に流れ出すのです。また廃棄物の焼却により空気が汚染され、それが雨となって
最後は海に入るのです。

4.ダイオキシン
 工場の排水の流れる川や海域のポラ、ハゼ、カキから高濃度のダイオキシンが
見つかりました。ダイオキシンはベトナム戦争で枯れ葉剤として使われたことで
知られていますが、遺伝子に突然変異を起こし奇形やガンを引き起こす猛毒です。
最近では魚介類や猫や犬までもダイオキシン汚染されていることが分かり大きな
問題となっています。
 ダイオキシンは塩化ベンゼン環をもつもの、つまりプラスティックや塩化ビニー
ル、発泡スチロールなどを燃やすことによって発生します。ゴミ焼却場などでは
高農度のダイオキシン汚染が見られます。

5.放射性廃棄物
 ロシアが日本海に放射性廃棄物や放射性廃液を投棄していたことが問題となり
ました。これは老朽化した潜水艦の原子炉を解体して廃棄したもので、ロシアに
限らず原発や核兵器を保有する国共通の問題なのです。
 人類は50年前に核エネルギーを利用することに成功しました。最初の実用化
が日本に投下された原爆です。その後、より強力な核兵器や原発などが多数作ら
れましたが、50年たった今もその廃棄物の処理方法が見つからないのです。
 いまだに放置するか埋めるか捨てるかするしかないのです。
放射能は100万年単位で続きますので、その被害(奇形やガンなど)ははか
り知れません。

6.私たちにできること
 海洋汚染全体は、実に私たちの社会の縮図のようです。
増え続ける原発、開発される山や森林、理立の進む海・・・・・・。1000万種
あると言われている化学物質のことなどを思えば無力感に陥るでしょう。
所得倍増、列島改造、経済発展、経済大国、生活大国、便利快適、というキーワ
ードで突っ走ってきた日本は、GNP世界一を達成した今も「まだまだ不景気、
もっと景気を上げてほしい、もっと売り上げを伸ばしたい」と言い続けています。
 社会全体の軌道修正をしなければ、終点に激突するのが避けられないでしょう。
 それを避けるためには、一人一人が自分にできることを始めるしかないのでは
ないでしょうか。

・水を汚さない;魚が生きられるまで薄めるには何倍の水が必要か
  油20万倍、しょう油3万倍、牛乳1万5千倍、みそ汁7千倍、とき汁6百倍
  油汚れは紙や布でう、きとりゴミ箱へ
・化学物質の利用を減らす
  中性洗剤、合成洗剤、シャンプー、化粧品(化学系)、入浴剤など
  プラスティック、ビニールなどをなるべく使わない、捨てない
・無農薬、自然派食品を利用する
・大量消費、大量廃棄をしないよう心がける


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