土曜日の市

村に近づいて来ると何やらやたらと多くの人がいる。
村の手前の広場に大勢の人が集まって来ている。
そして手に手に何かを持っている。
牛をつないでいる人もいる。ヤギを束ねている人もいる。
布切れを並べて売っている人がいる。
色とりどりの紐を地面に並べて売っている人がいる。

そうだ、ここは毎週土曜日に立つ市場なんだ。
そう言えば幹線の道路を離れて地道をバスで走っていると
今日はやたらと馬車が走っていくなあと気が付いていた。

何か先にあるのだろうか、と思っていたのだ。
その答えがこれであった。
皆さんは市に集まって来た人々だったのだ。  

馬車が市場に向けて集まって来ている。
ちゃんと馬車の停める場所も確保されている。
1時間いくらといった決まった料金があるのだろうか、
ある訳がないわなあ。
案外10000セーファー以上買ったら駐車料金がただだったりして…。
馬車と書いたがもちろんイギリスの王侯貴族の馬車では当然ない。
馬に荷車をひっかけた、そんないでたちである。
市場はサッカーグランドが3面程度取れそうな広い場所で開かれている。
かなり広い。端の方には給水塔がある。
何のための給水塔なんだろうか?意味不明。

市場は鶏ブロック、羊ブロック、牛ブロック、ヤギブロック、
雑貨ブロック、古着ブロックに分かれている。
おのおのが整然とブロック分けされているのは面白い。
混沌の中にも整然がある。 露天がいっぱい出ている。
古着の露天もあれば何か怪しげなモノを油で揚げて売っていたりする。
古本を売っていたり、なんとも得体の知れないものを売っていたりする。
日本で言うとテキヤみたいなものなんだろうか。
あちらこちらの市場を行商して歩いているのかも知れない。
と、簡単に書いたが日本なら自動車で動けるがここには馬車しかない。
馬車でそんなに遠くに行くとは思えないが…。
やはり近場の商人が市場に売りに来ているのだろうか。

さて、ここで面白いモノを発見。
黒いゴムで出来ている馬の頭がちょうど入る程度の袋である。
別に馬の頭が入るからと言って馬に使う物ではない。
実は水を入れるのに使うのだ。
そう。先ほど井戸の水汲みのときに出てきた滑車の先っちょに
付いていたゴムの袋である。
いくらで売っているのか興味深かったが一度聞いたら
買うまで付いて来そうだったので止める。
うまく出来ているが、どうやらタイヤのチューブを切って縫って作った様だ。
チューブを切って開いて糸で縫いあわせてある。
水が漏れない様に合わせ目はきっちりとしてあるのだろうが、
結構ちゃんとしている。
日本では古タイヤのチューブなんて野焼きしてダイオキシンを出す
程度にしか存在が知られていない。
どれだけリサイクルされているのか知る由もないが、
恐らく100%リサイクルというかリユースされているのではないか
と思われる。

市場に行く前に泥棒が出るので懐中物、かばんに注意せよ
とお達しを受けた。
海外旅行の鉄則としてかばんは肩にたすきに掛ける。
肩にぶらんと掛けているとひったくりに合った時になすすべがない。
まあ、そういう風に言われてそうする訳であるが、
何か違和感を感じる。
あまり海外でたすきにかばんを掛けている民族はいない。
多分台湾人も韓国人も中国人も海外に出る時は同じ様な注意を
受けていると思うがあまりそうした姿を見る事はない。
何故日本人だけがあんなみっともない格好をするのだろうか。
なんて事を思いながら自分も思いっきりたすき掛けをしているのであった。
ああ、俺も日本人だぁ。

市場を歩いていると、子供と言わず大人と言わず、手に手に
何か持って買ってくれと寄ってくる。
おいおい、鶏買ってどないするっちゅうねん。
持って帰るわけにもいかんやろに。検疫でひっかかるがな。
鶏ならまだ何とかなるけどヤギや牛を売りつけようとすんなよ。
そら買えなくもないよ。でも、買ってどないすんねん。
と言っても分かる訳はない。

売り子の声があたりから消え去るには牛ブロック、ヤギブロック
を足早に通り過ぎるしかなかったのである。
しかし、匂いがきつい。牛のにおい、鶏の匂い、ヤギの匂い、
人の匂い、食べ物の匂い…。色々な匂いが漂ってきて鼻孔をくすぐる。
というか鼻の穴に暴力的に飛び込んで来る。
色々な匂いと書いたが牛・山羊・鶏・・すべて匂いが違うから面白い。
匂いについては正直に言って、つらいと感じる瞬間もある。
元来私は匂いと騒音に弱い人間だ。
トトロ殺すにゃ刃物はいらぬ。
臭い匂いと騒音の中に突っ込めばいい。

市場を回って、村の中をついでに回って1時間程してもとのテントに
戻るが足が疲れ切っている。
途中でいくらへたり込んで休もうかと思ったか。
しかし、砂地には馬のしょんべんもあれば馬糞も落ちている。
そこら辺りに座ったものなら後が少しつらい事になる。
ずっと立ったままで砂地をえんえんと歩くとこれだけ疲れるのか。
ほんの1km程しか歩いていないのに喉はからから汗はだくだく。
砂漠で遭難してえんえんと歩き続け水がなくなって死んでいく
様なシーンが映画なんかで見られるが、映画を見ながらは
「何を大層な。そんなもんで死ぬかいな」と思っていたが
実地に体験してみて「その通り!!」と思える。

それだけ疲れるのだ砂地というやつは。


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