暁の寺『ワット・アルン』



soundにおいても artにおいても 常に私の美意識の王道をいく言葉  
simple is beautiful 
それが elaborate is beautiful too に・・・
私の中の常識を覆された日2002年5月10日 この寺に訪れたことがきっかけになった。

タイ特有の湿度の高い蒸せるような日だった。時おり雲間から覗く青空は、鋭利なBlue
豊かな水をたたえる聖なる川を北上したところに その寺はあった。
『夜明けの寺』・・なんて魅惑的なネーミングなんだろう。
その名の如く、日の出を真正面に拝むこの寺は、もしかしたら 毎日この場所に立たずめば、
その度に新しいポジティブな気持ちを起こさせてくれるのかもしれない。
日常の嫌なことも辛いことも、昇る朝日の如く振り払ってくれるのかもしれない。
寺の上部に近い部分に、セラミックのゾウが見える。
光溢れる開放的な優しい祈りの空間。
そこへ向かってお願いをすれば、一つだけ叶うそう・・。さっそくわたしも合掌。

寺の下から3/1の高さまでは、自由に登れるようになっている。
建物を間近に見ると、そのあまりに複雑な造形と、木造には無いモザイクの醸し出す律動感に、心地よい驚愕を覚える。
異なるデザインの集合体が創る、独特の統一感。
どこか・・建築家ガウディを思わせる趣。
下から上に視線を移動させると、植物を可愛らしくデフォルメした紋様が、
まるでsound trackのように幾重にも積み上げられている。なんだか譜面のよう。
これらをすべて旋律に置き換えたら 巨大なオーケストラが必要だろうな・・・。

続いて、右から左へと視線を移動させると、横一文字に同じ紋様の連続が見られる。
まるでリズムパターンをループさせているかのよう。
これって!newテクノのリズム形態に似てるなぁ・・。
そんなことを思いながら ジグザグのすれ違うのがやっとの狭い通路を一周する。
その夜、オリエンタルホテルでの舞踏付き、タイ宮廷料理のバックに演奏された
タイ民族音楽のリズムは、どこかこの紋様パターンと近いモノがある。

かつて三島由紀夫が、こよなく愛したという暁の寺。
私は、タイの暁の寺院をモデルにした、同名の小説をまだ読んではいない。
実際、彼はこの寺のどういうところが好きだったのだろうか。何を感じたのだろうか。
探ってみたい気もする。

ひとの五感を刺激するモノは、案外非・私的なところに存在するのかもしれない。
異文化を知ることの真髄や、旅の楽しみの醍醐味は、こんなところに沢山溢れている。