真珠の耳飾の少女
この映画が イギリス作品だというのは 意外だった(ピーターウエーバー監督作品)
主人公の少女を演じるスカーレット・ヨハンソンがとてもいい演技をしていた
1665年頃のオランダが背景になっていたが 何度も美術館で見た絵のようだった
この映画が 画家をテーマにしていたことが 私が一番興味を惹かれた部分である
寡黙なフェルメールは 画家として 家族にも大切にされながら
パトロンにも恵まれ 幸せな環境におかれながら 制作活動をしている
そんな場面から映画は 始まる
最初に印象的だったのは
フェルメール家の使用人として 雇われたグリートが
画室を掃除する際に 窓のガラスを拭くかどうか ためらう場面
光が変わってしまう と気をもむのだ 光が変われば色も変わる
置かれてあるものの位置を 神経質に確認しながら掃除する彼女の心配りからは
絵が好き 絵を知りたい そして画家への敬愛の心がみえてくる
ある日 彼女の感性の鋭さを本能的に見抜いたフェルメールが
『君を描きたい』という
決して表面には出すことのできない 許されない恋
押しとどめられない真の心を 画家はキャンバスに グリートは応えて心を解き放つ
ためらいながらも 画家の希望の衣装を身にまとい 細かいポーズをとるグリート
絵の対象を凝視する画家の鋭い眼差しは 息をのむ迫力がある
あまりの熱い視線に 心まで完全に見透かされると感じるグリートの
必死で胸のときめきを抑えようとする不安げな表情が美しく 愛らしい
まるで影と光のようなコントラストを醸し出す 緊張感ある無言のシーンは
どんな熱い抱擁シーンよりも
どんなカッコいいアクションシーンよりも 胸がドキドキ高鳴った
画家は 描きたいモチベーションに出会うと
本能的に 絵筆を握る
そして そういう出会いがあれば 必ず作品の中にその対象のかけらが投影される
たとえ形は異なっていても 絵の中に直球でその核心を入魂するのである
それは 無言の熱いラブレターなのだ
肖像画に画家の心を感じたとき 絵画鑑賞の楽しみは さらに深くなる