精神療法 Return


  アトピー性皮膚炎は本人のみならず、親にも大きなストレスを与えます。初診時、アトピーの親ごさんは精神的にかなり疲弊した状態で医師のもとにきます。この時に医師がいろいろアドバイスしてもほとんど効果を示さないことが多いものです。そこで家族の訴えを受け入れ、家族が話したいことをいわせてあげると、精神的に余裕ができて医師のいろいろなアドバイスを聞いて実行してくれるようになります。次に、時間に余裕があるとき、家族のアトビーに対する質問に対し1つひとつ丁寧に答えると、アトピーに対する家族のいろいろな不安が語られます。医者が話を聞くだけでも本人、家族は少し精神的安定を取り戻すようです。一般に、重症のアトピー性皮膚炎患児のおやごさんは過保護・過干渉のことが多いという印象を持っています。重症のお子さんは一般的に短気で怒りやすく、わがままが強い傾向にあるようです。しかし、そうしたことを本人に戒めるのではなく、常にお子さんの将来に期待しながら見守る姿勢が医師として大事だということを自戒して診療にあたっています。しかし内向的心理傾向がまたアトピーを長引かせていることが多いのは事実で、こうした性格はもともとの子供の性格とアトピーになったために二次的にできた性格が合わさって出来ていくものと思われます。精神発達が未熟である、自我力が弱い、情緒的な負荷にもろい、現実解決力が乏しい、行動がとろくて反応がワンテンポ遅れる、自分のもっているものを出しにくい、自分を押し殺す、子供らしくない、過度に周囲を気にする、対人関係では易怒性を認め、それを表出せず抑圧する傾向がある、干供は母に愛情欲求をうまく出せない、母も子供の愛情欲求を感知できない、こういった本人の性格、家族環境から、大人のアトピーは抑うつ感と不満感が強いようです。アトピーが治りにくくなる他の要因に、家族のアトピーの子供への対応のまずさもあげられます。子供に掻くなとしつこくいう、嫌がる子供を押さえつけて薬を塗る、子 供の食べたい気持ちを罰するようなことをいう、1日も早く治したいと焦る、病気を理由に子供の行動を制限する(アトピーの子供は一般に制限されることを嫌う)、親がいったことをきちんとするように子供に求める、親のほうが子供がやり終るのを待てない、子供の甘えたい仕草に親が鈍感、兄弟間のいじめ(いじめは親の愛情と承認を求める行為)と葛藤、弟と妹の誕生、友達ができなくて集団生活で孤立、子供の親離れ・親の子離れがスムーズでない、慢性的な両親の不仲、過酷で拒絶的な両親。このような家族の対応のまずさがかさなると、アトピー性皮膚炎は非常に重症化するものなのです。また、多くの成人例をみていると、基本に怒りと寂しさがあるようです。焦らず、自分のアトピーというよろいを脱ぎ捨て、親が敷いた路線に気がつき自分の道を歩き出し、徐々に親から自立していく。こうした自立をたすけ、適切な治療と聞く耳をもって日々診療にあたることが大切だと実感しております。(本稿の作成にあたっては著明な精神科の先生の講演内容を参考にしております、お名前は忘れてしまいました、申し訳ございません。)

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著者略歴

西田秀造
中谷皮フ科院長
1964年生まれ
平成元年 徳島大学医学部卒
同    大阪大学医学部皮膚科学教室医員
平成2年 大阪大学医学部大学院博士課程入学(皮膚科学専攻)
平成6年 博士課程修了 医学博士
同    公立学校共済組合近畿中央病院皮膚科医員
平成8年 国立大阪病院皮膚科医員
同年11月12日 中谷皮フ科開院