以下現地説明会資料(高取町教育委員会作成)より要約
●はじめに
向山1号墳は高取町大字観覚寺の高取町役場周辺の小高い丘陵上に立地する20数基の観覚寺
古墳群にあり小字向山に位置する古墳です。
高取町教育委員会は高取町産業都市計画課の依頼をうけて高取町中央公園造成事業の事前調査
として平成10年11月16日〜11年3月19日まで発掘調査を実施しました。調査面積は
およそ500m2です。
●調査の概要
・墳丘
1号墳は丘陵から北へ派生する尾根の先端部分(標高120m)にあります。この古墳は南側斜
面の地山を大きく削ったり盛り土を積んだりして墳丘をつくっています。古墳の規模は直径お
よそ20m高さ2.5mの円墳と考えられます。
・埋葬施設
墳頂部の中央やや西寄りに南北方向に長さ6.6m幅2.5mの墓壙を検出しました。
この墓壙内にほぼ南北方向に長さ5.3m幅60cm深さ30cmの割竹形木棺の痕跡がありました。こ
の木棺は粘質土で簡単に包まれていましたが木棺は残らず、棺に塗っていたと考えられる赤色
顔料がわずかに残っています。
・遺物と出土状況
この古墳はあまりめだたなかったのか、埋葬施設が未盗掘でさまざまな遺物が出土しました。
棺外は大刀や短剣、刀子、鉄鏃などの武器や長さ4.5cmの緑色凝灰岩製の管玉がありました。
棺内には青銅製の鏡が2面と漆塗りの竪櫛と玉類や被葬者の骨片や歯などがありました。鏡は
面径おそよ10cmの1号鏡と8cmの2号鏡があります。1号鏡は方格規矩鏡といわれる鏡で2号鏡は
四獣形鏡といわれる鏡です。玉類は管玉、丸玉、小玉、臼玉などがおよそ600個出土しました。
●まとめ
向山1号墳は木棺直葬を埋葬施設とする前期古墳です。出土遺物などから4世紀末ごろの築造と
考えられます。この古墳は小型ながらも豊富な内容であり鏡・玉・刀をもち、この時期での
中小首長の埋葬形態をあらわす良好な資料になりました。
鏡や出土品の分析など調査途中であり今後、検討が必要です。
![]() | 向山1号墳 | ![]() |
1号墳墳丘 | 質問をする考古学ファン | |
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鉄鏃、ヤリカンナ等 | 方格規矩鏡、四獣形鏡、管玉等 | 1号墳 |
関連新聞記事(奈良新聞 平成11年3月11日)
・未盗掘の埋葬施設、方格規矩鏡など出土