高取フォトギャラリー(5) 1998.08.02 new


寺崎白壁塚古墳現地説明会
平成10年8月2日()高取町寺崎の現地で開催されました。

以下現地説明会資料(高取町教育委員会作成)より要約
尚、調査途中につき、内容・数値等がかわることがあります。

●はじめに
  白壁塚古墳は高取町北西部の大字寺崎にあり貝吹山(標高210m)のある東西にのびる丘陵から
  南に派生する尾根上に位置する。高取町教育委員会は国庫補助をうけて文化財の指定を目的とした
  範囲確認調査を平成10年5月25日から実施した。調査面積はおよそ150m2である。

●調査の概要
  ・墳丘
    尾根の南斜面を大きくカットしその土を前面に盛土して築造するいわゆる山寄せの古墳で、背面
    から側面に幅6〜7m深さ2mのコ字形の堀割りがある。この堀割りから30m規模の方形(台形)
    段上に盛土された15m規模の方形墳からなる高さ9mの二段築成の方墳と考えられる。
  ・埋葬施設
    墳丘の南面から真北に向かって花崗岩の切石を組み合わせた内法の長さ2.24m幅1.1m高さ0.9m
    の石槨に長さ8.8m幅1.6〜1.9m高さ1.6mの羨道がつく横口式石槨を検出した。石槨は原則として
    両側壁、奥壁と天井をそれぞれ一石とし(床面は2石)石材の間には漆喰を補填している。
    石槨床面は羨道より40cm高く、羨道内には石を補っている。羨道は盗掘により石材が抜き取られて
    いるが、羨門に向かって若干拡がっている。床面は13世紀後半ごろ中世墓として再利用されたため不明で
    あるが、粉々に割られた榛原石(室生安山岩)の板石が多く出土したことから床面に敷かれていたと考えられる。
  ・遺物と出土状況
    盗掘と中世墓の再利用によって埋葬時の遺物は不明で羨道埋土や攪乱土の中から鉄釘、鉄鋲、須
    恵器や土師器破片などがわずか出土した。しかし築造年代を確定できるものや副葬品の出土はなかった。

●まとめ
    白壁塚古墳は、横口式石槨を採用した2段築成の30mの方形墳であるが背面のカットは数10メー
    トルで墳丘と合わせると東西90m、南北60mの大規模な造成が行われたことが窺える。また古墳
    の立地状況は風水思想を反映している。築造は石槨や羨道の構造、出土遺物などから7世紀中ごろ(飛鳥II)
    と考えられる。白壁塚と同じ形態の石槨を有する古墳は大阪府や広島県など全国に10例程度とたいへん
    貴重で奈良県では巨勢山323号墳がある。

白壁塚古墳(1)寺崎白壁塚古墳白壁塚古墳(2)
現地説明会横口式石槨
白壁塚古墳(3)白壁塚古墳(4)白壁塚古墳(5)
墳丘(南面)羨道墳丘(西面)
白壁塚古墳(6)白壁塚古墳(7)白壁塚古墳(8)
鉄鋲/鉄釘土師器榛原石(室生安山岩)

関連新聞記事(奈良新聞 平成10年7月31日)
王族クラス?長〜い羨道 [高取の白壁塚古墳]


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