以下配布資料(高取町教育委員会作成)より
国指定史跡 市尾墓山古墳4次発掘調査資料
●はじめに
市尾墓山古墳は全長66m、高さ現状9mの古墳時代後期の前方後円墳です、周濠と外堤
をあわせると100m規模の古墳になります。昭和53年(1978)に奈良県立橿原考古学研
究所が発掘調査を実施し、後円部に埋葬施設の横穴式石室が検出され、家形石棺も確認され
ました。築造は6世紀はじめ頃と考えられ、昭和56年(1981)に国指定史跡になりました。
高取町は平成11年度から3ケ年で墓山古墳全体を公有化し16年度から3ケ年で墓山古墳の
環境整備事業を実施する予定で、平成17年10月3日から発掘調査を実施しています。
調査面積は調査トレンチ2ケ所であわせて180m2です。
●調査の概要
・1トレンチ
長さ12.7m、幅5mの後円部横穴式石室の下段前面部に設定されたトレンチ。
トレンチ内北側では花崗岩の地山を掘削した幅5.5m、深さ約2mの周濠が検出
されました。テラスや周濠には墳丘にあった葺石が多く転落してました。周濠の内
などからは、古墳の墳丘や外堤に立てならべていたと思われる埴輪や木製品が出土
しました。
・2トレンチ
長さ22.5m、幅5mの後円部東側に設定されたトレンチ。トレンチ内西側では
後円部の墳丘裾が検出されました。墳丘裾の東側には幅5.5m、深さ約1.5m
の周濠が検出されました。古墳の墳丘裾や周濠などから埴輪や木製品が出土しました。
・出土遺物
調査トレンチからは、遺物収集箱(コンテナ)15箱分の埴輪片と木製品が10数点
出土しました。埴輪は立てならべられた時の元位置を保つものは無く、ほとんどが
円筒埴輪片で中には朝顔形や形象埴輪片も含まれています。
木製品は両方のトレンチの周濠内から10数点出土しました。鳥形木製品は1トレンチ周
濠の中央の位置で濠と平行方向に堆積する植物などの腐食土が混ざった黒色粘土層の中か
ら出土しました。頭や胴体、尻尾が表現され全長110cm、胴の幅27cm、尻尾の幅
40cm、厚さ最大4cmを測り、コウヤマキの一木と考えられます。胴体には長さ20cm、
幅9cmのほぞ穴があります。胴体上面には翼をのせてあわせるための彫込み部分が
ありますが、翼は出土していません。しかし鳥形木製品付近からは長さ110〜120cm
の棒状の加工木が3本出土しています。
●まとめ
今回の調査から、普段見られない墳丘裾の状況や周濠、外堤の下部分などの一部が検出され
ました。墓山古墳は墳丘や外堤の規模と比較すると周濠の幅が狭く感じられます。
古墳時代後期で組合せの鳥形木製品の出土は全国で約10例程度で、ほとんどが奈良県内
の古墳の周濠から出土していますが、墓山古墳出土例は翼が欠けながらも扁平で均整のとれ
た優美な形態です。また尻尾の部分が大きく作られていることから鷲や鷹などの猛禽類
(もうきんるい)を表現していたと考えられます。
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市尾墓山古墳全景 | 周濠 | 現地見学会 |
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鳥形木製品 | 円筒埴輪 | 家形石棺 |
●参考新聞記事
※「鳥形木製品が出土」平成17年11月25日付 奈良新聞