放哉をきこう

  放哉に初めてあったのは、彼の生まれ故郷鳥取市の興禅寺の歌碑「後ろの山から煙が出だした」だった。この寺の周りは鳥取城山麓の古い城下町である(私の青春時代はここ鳥取ですごした)。

  彼の死に場所となった小豆島の南郷庵に訪れて、この歌碑の俳句が生まれるべくして生まれたのだとわかった。

うつろの心に眼が二つあいている

足のうら洗えば白くなる

一人分の米白々と洗いあげる

仏にひまをもらって洗濯している

こんなよい月を一人で見て寝る

淋しい寝る本がない

ころりと横になる今日が終わって居る

一日物云わず蝶の影さす

底が抜けた柄杓で水を呑もうとした

雨の日は御灯ともし一人居る

大空の真下帽子かぶらず

咳をしても一人

春の山うしろから煙りけむりが出だした