「郵便馬車の馭者だった頃」

井上頼豊訳詞・ロシア民謡

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郵便馬車の 馭者(ぎょしゃ)だった
俺は若くて 力持ち
そこは小さな 村だった
俺はあの娘(こ)に 惚れていた

娘に不幸が 見舞うなど
俺は夢にも 知らなんだ
馭者の家業(かぎょう)は 西東
心はいつも あの娘

やすらいのない 日々だった
想いは深く 胸痛む
ある日頭(かしら)が 手紙を渡し
「早く頼むぞ 駅どめだ」

馬はいななき 鞭が鳴る
はやてのように 野を走る
だけど胸は つぶれそう
あの娘とこんなに 遠くなる

風が悲しく ほえていた
ふいに馬めが あばれ出し
おびえたように 脇を見た
俺にはわけが わからない

動悸(どうき)ははげしく 高まって
俺は見つめた 雪の中
あばれる馬から 飛び降りた
誰かが道に 倒れてる

吹雪(ふぶき)は渦巻き 荒れていた
俺は雪をば かき分けた
血の気が失せて 立ちすくみ
寒さがシューバに しみた

皆の衆 あの娘が死んでいた
茶色の瞳を 閉じて
酒をくれ 早く酒を
もうその先は 話せない


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