「惜別(せきべつ)の歌」

島崎藤村作詞・藤江英輔作曲(注1)

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遠き別れに たえかねて
この高殿(たかどの)に 登るかな
悲しむなかれ 我が友よ
旅の衣(ころも)を ととのえよ

別れといえば 昔より
この人の世の 常なるを
流るる水を 眺(なが)むれば
夢はずかしき 涙かな

君がさやけき 目のいろも
君くれないの くちびるも
君がみどりの 黒髪も
またいつか見ん この別れ

君が優しき なぐさめも
君が楽しき うた声も
君が心の 琴の音も
またいつか(注2)聞かん この別れ

(注1) 「惜別の歌」は、島崎藤村の詩集/若菜集の『高楼(たかどの)』内の数節を再構成して作られ、戦後歌声喫茶などで歌い継がれてきたもので、歌誕生の由来等については、このページ以外にもネットで種々紹介されています。
(注2) 市販の楽譜集・歌集では、『惜別の歌』の歌詞は、ほとんどが三節までとなっており、四節までを掲載したものは稀なようです。たまたま拙HPで参照した野ばら社の歌集「昭和思い出のうた」は、四節までを掲載しておりました。その歌集では、その四節目最終行を「またいつか聞かん」としていますが、原詩は下記のとおり「またいつきかん」となっています。姉妹の別れの情景を詠った原詩を友人との別れの歌として焼直したため、最小限の語句の改変がなされています。「またいつか聞かん」の部分が改変によるものか、「またいつ聞かん」が正しい歌詞なのか、ただいま鋭意(^^)取り調べ中です。todaさん、ありがとうございました。(2007/11/19)
島崎藤村詩集/若菜集より
高楼(たかどの)

    わかれゆくひとををしむとこよひより
    とほきゆめちにわれやまとはん

   妹

とほきわかれに
    たへかねて
このたかどのに
    のぼるかな

かなしむなかれ
    わがあねよ
たびのころもを
    とゝのへよ

   姉

わかれといへば
    むかしより
このひとのよの
    つねなるを

ながるゝみづを
    ながむれば
ゆめはづかしき
    なみだかな

   妹

したへるひとの
    もとにゆく
きみのうへこそ
    たのしけれ

ふゆやまこえて
    きみゆかば
なにをひかりの
    わがみぞや

   姉

あゝはなとりの
    いろにつけ
ねにつけわれを
    おもへかし

けふわかれては
    いつかまた
あひみるまでの
    いのちかも

   妹

きみがさやけき
    めのいろも
きみくれなゐの
    くちびるも

きみがみどりの
    くろかみも
またいつかみん
    このわかれ

   姉

なれがやさしき
    なぐさめも
なれがたのしき
    うたごゑも

なれがこゝろの
    ことのねも
またいつきかん
    このわかれ

   妹

きみのゆくべき
    やまかはは
おつるなみだに
    みえわかず

そでのしぐれの
    ふゆのひに
きみにおくらん
    はなもがな

   姉

そでにおほへる
    うるはしき
ながかほばせを
    あげよかし

ながくれなゐの
    かほばせに
ながるゝなみだ
    われはぬぐはん


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