東伯郡赤碕町方言における否定、未来、意志、勧誘の表現


赤碕町出身の中西啓二さんより(Sat, Jan 31, 1998)

否定の表現「動詞の未然形+へん」

(ごんべの鳥取弁)辞書には、「動詞の未然形+へん」で否定を強調すると説明されていました。確かにそのとおりの使い方ですが、「動詞の未然形」についての説明が足りないと思います。
「書く」など五段活用の動詞は説明のとおり「かかへん」でいいのですが、「起きる」など上一段活用動詞、「出る」など下一段活用動詞、「来る」(か行変格活用動詞)、「する」(さ行変格活用動詞)では誤解を招きます。
関西弁と同じ「おきへん」「でーへん」「きーへん」「せーへん」を使っていると誤解されます。 赤碕ではこれらの動詞では、それぞれ「おきらへん」「でらへん」「くらへん」「すらへん」と言います。(ごんべ独白:確かに東伯町でもそう言います)
また、私は米子の学校に通っていたので、西伯弁での用法も知っています。それぞれ「おきーへん」「でーへん」「くーへん」と言います(「する」の場合どういうかは忘れました)。
ちなみに、西伯方言では、上一段活用動詞、下一段活用動詞、か行変格活用動詞の「ん」を使った単純な否定表現は特徴があります。
「起きる」「出る」「来る」の否定は、それぞれ「おきらん」「でらん」「こらん」と言います。赤碕弁では「おきん」「でん」「こん」ですが、「へん」を使った否定表現「おきらへん」「でらへん」「くらへん」は西伯方言の影響があるのかもしれません(「すらへん」は西伯方言の影響があるかは不明)。

未来、意志、勧誘の表現

(上一段活用動詞、下一段活用動詞、か行変格活用動詞の場合)

(1)未来、意志の表現
赤碕弁では、未来、意志の表現は上一段活用動詞、下一段活用動詞、か行変格活用動詞の場合、二通りの言い方があります。
一つは「ょう」を使った言い方です。「起きる」「出る」「来る」は、それぞれ「おきょう」「じょう」「こう」と言います。もう一つは「らあ」を使った言い方です。それぞれ「おきらあ」「でらあ」「こらあ」と言います。
五段活用動詞とさ行変格活用動詞では「らあ」は使わず、「書く」「する」の場合「かかあ」「しょう」のみです。「おきらあ」「でらあ」「こらあ」という表現は、やはり西伯方言の影響があるのではないでしょうか。

(2)勧誘の表現
勧誘の表現は、上一段活用動詞、下一段活用動詞の場合、未来、意志の表現同様、二通りの言い方があります。
一つは「ょい」を使った言い方です。「起きる」「出る」は、それぞれ「おきょい」「じょい」と言います。もう一つは「らい」を使った言い方です。それぞれ「おきらい」「でらい」と言います。
か行変格活用動詞では「らい」を使った「こらい」のみで、「ょい」を使った表現はありません。
五段活用動詞とさ行変格活用動詞では、逆に「らい」は使わず、「かかい」「しょい」という表現しかありません。

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