ごんべの鳥取弁辞書/鳥取弁における助動詞の用例


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鳥取弁で特徴的な助動詞にはを付加しました。
「他との接続」欄の動詞には助動詞を、名詞には代名詞を含みます。
特殊な例は無視して、かなり大まかにまとめています。
この表の作成には、三省堂「大辞林」、同「新明解国語辞典(第四版)」、角川書店「必携国語辞典」、岩波書店「国語辞典(第三版)」、同「電子ブック版広辞苑(第四版)」などを参考にしました。

助動詞・用例等意味
せる
《他との接続》五段活用型動詞の未然形
使役
放任
させる
《他との接続》五段活用以外の動詞の未然形

《他との接続》上一段・下一段動詞の未然形。

《説明》鳥取弁では、五段活用・ナ変活用動詞には「せる」を、カ変・サ変活用動詞には「させる」、上一段・下一段活用動詞には「す」を用いる。
しめる
《他との接続》動詞の未然形
れる
《他との接続》五段活用型動詞の未然形
受身
尊敬
自発
可能
られる
《他との接続》五段活用以外の動詞の未然形
れる
《他との接続》動詞の未然形???

《用例》(五段・ナ変)「行かれる、行けれる」「飛ばれる、飛べれる」「読まれる、読めれる」「死なれる、死ねれる」。五段・ナ変では、それぞれ後者が優勢
《用例》(上一段)「着れる」「見れる」「起きれる」。上一段ではこれが優勢
《用例》(下一段)「投げれる」「当てれる」「植えれる」。下一段ではこれが優勢
《用例》(カ変)「来れる」。カ変ではこれが優勢
可能
られる
《他との接続》動詞の未然形

《用例》(上一段)「着られる」「見られる」「起きられる」
《用例》(下一段)「投げられる」「当てられる」「植えられる」
《用例》(カ変)「来られる」

《他との接続》動詞の未然形

《用例》(五段・ナ変)「行ける」「飛べる」「読める」「死ねる」。
よる
《他との接続》動詞の連用形

《用例》「もうすぐ、花ちゃん、泣きよっで。どがしょう」(もうすぐ、花ちゃんは泣き出すぞ。どうしよう)。
《用例》「今、書きよりますけえ」(今、書いていますから)。
《用例》「大阪で、なにしよる?」(大阪で何をしてるんだい)。
《しつこい補足》助動詞「よる」に尊敬助動詞「なる」(又は「んさる」)が連結する場合の形は、以下のとおり。
「よる」+「なる」・・・・・・・・・よんなる
「よる」+「なる」+否定「ん」・・・よんならん
「よる」+「なる」+丁寧「ます」・・よんなります
「よる」+「なる」+過去「た」・・・よんなった
「よる」+「んさる」・・・・・・・・よりんさる
「よる」+「んさる」+否定「ん」・・よりんさらん
「よる」+「んさる」+丁寧「ます」・よりんさります
「よる」+「んさる」+過去「た」・・よりんさった
将然
現在進行
習慣的継続
反復
とる
《他との接続》動詞の連用形

《用例》「今、書いとるがな、待っとれえや」(今書いているじゃないか、待っていろよ)。
《用例》「どこの会社に勤めとっだあ?」(どこの会社に勤めているんだい)。
《用例》「勉強は、毎日はしとらん」(勉強は毎日はしていない)。
《用例》「おまいの姿勢、いがんどるで」(君の姿勢は、ゆがんでるよ)。
《用例》「あいつは、とうに、死んどる」(あいつは、ずっと前に死んでいる)。
《しつこい補足》助動詞「とる」に尊敬助動詞「なる」(又は「んさる」)が連結する場合の形は、以下のとおり。

「とる」+「なる」・・・・・・・・・とんなる、どんなる
「とる」+「なる」+否定「ん」・・・とんならん、どんならん
「とる」+「なる」+丁寧「ます」・・とんなります、どんなります
「とる」+「なる」+過去「た」・・・とんなった、どんなった
「とる」+「んさる」・・・・・・・・とりんさる、どりんさる
「とる」+「んさる」+否定「ん」・・とりんさらん、どりんさらん
「とる」+「んさる」+丁寧「ます」・とりんさります、どりんさります
「とる」+「んさる」+過去「た」・・とりんさった、どりんさった
現在進行
習慣的継続
反復
存在
完了
なる
《他との接続》動詞の連用形

《用例》「誰か来ならんかなあ」(誰かいらっしゃらないかなあ)。
《用例》「先生が歌いなる」(先生が歌われる)。
《用例》「偉い人が話いとんなる」(偉い人が話しておられる)。
《用例》「てごしてごしなれ」(手伝ってください)。
《補足》「なる」には命令形「なれ」があるが、目上に対してよりも、同輩・目下に対して用いることが多い。こうした場合は、尊敬の意は薄れて、単に命令・指示の調子を和らげたり、親愛・丁寧の意となる。
《補遺》東伯耆地方方言の尊敬助動詞には、敬意の度合いの高い順に、「なさる」「なんす」「なはる」「なる」「はる」などがある。しかし、最近の若年層では「なる」以外の使用はほとんどみられず、より高い敬意を表す場合は、共通語が用いられているようである。

尊敬
親愛
丁寧
んさる〔因幡〕
《他との接続》動詞の連用形

《用例》「これは、先生が書きんさった」(これは、先生がお書きになった)。
《用例》「そがな人は、知りんさらん」(そんな人はご存じない)。
《用例》「あがなことは、しんさらん」(あんなことはなさらない)。
《補遺》東伯耆地方でも、地域により・人により用いられるそうです。

たい
《他との接続》動詞の連用形
希望
ちゃあ
《他との接続》動詞の連用形

《用例》「松茸を食べちゃあ」(松茸を食べたい)。
《用例》「映画に行きちゃあわい」(映画に行きたいよう)。
《用例》「花ちゃんは見ちゃあないって」(花ちゃんは見たくないって)。

らしい
《他との接続》動詞の終止形、形容詞の終止形、形容動詞の語幹、名詞
根拠のある推定
げな(1)
《他との接続》動詞の終止形

《用例》「あいつは東京に行くげな」(あいつは東京に行くそうだ)。
《用例》「花ちゃんは大学、合格したげな」(花ちゃんは、大学の試験に合格したそうだ)。

伝聞
げな(2)
《他との接続》動詞の連用形、形容詞の語幹、形容動詞の語幹

《用例》「今日は、さぶげななあ」(今日は寒そうだなあ)。
《用例》「花ちゃんも、行きたげな顔しとっで」(花ちゃんも行きたそうな顔してるよ)。
《用例》「その栗羊羹、うまげななあ」(その栗羊羹、おいしそうだなあ)。
《用例》「思ったより、元気げながな」(思ったより元気そうじゃないか)。

様態
ようだ
《他との接続》動詞の連体形、形容詞の連体形、形容動詞の連体形
比況
推定
やな、やあな
《他との接続》動詞の連体形、形容詞の連体形、形容動詞の連体形

《用例》「やっと来たやなぜ」(やっと来たようだぜ)。
《用例》「死ぬやなこたあないけ、心配すんないや」(死ぬようなことはないから、心配するなよ)。
《用例》「っちゅうやな、こったがな」(というようなことだよ)。

みちゃあな
《他との接続》体言

《用例》「花ちゃんみちゃあな子、ええなあ」(花ちゃんのような子は、いいなあ、うん)。
《用例》「おまいみちゃあな奴は、いね!」(お前のような奴は、帰れ!)。

そうだ
《他との接続》動詞の連用形、形容詞の語幹、形容動詞の語幹
様子の推定
さあな、さげな
《他との接続》動詞の連用形、形容詞の語幹、形容動詞の語幹

《用例》「雪が降りさあな天気だ」(雪が降りそうな天気だ)。
《用例》「雪が降りさげな天気だ」(雪が降りそうな天気だ)。
《用例》「あいつ、社長に怒られさあな雲行きだ」(あいつ、社長に怒られそうな雲行きだよ)。
《用例》「あいつ、社長に怒られさげな雲行きだ」(あいつ、社長に怒られそうな雲行きだよ)。

そうだ
《他との接続》動詞の終止形、形容詞の終止形、形容動詞の終止形
伝聞
さあな
《他との接続》動詞の終止形、形容詞の終止形、形容動詞の終止形

《用例》「花ちゃんは、嫁に行くさあなあで」「・・・」(花ちゃんは、結婚するそうだよ)(うそだあ)。
《用例》「ドリアンって、うまいさあななあ」(ドリアンって、おいしいそうだなあ)。
《用例》「いいや、ババの臭いがするさあなで」(いや、ウンコの臭いがするそうだぜ)。

だ、だい
《他との接続》動詞の連体形、形容詞の連体形、名詞

《注記》「だ」は、鳥取弁において、男女を問わず頻繁に使う助動詞。「だい」は、強い断定・指定を表すが上品ではないとされる。

断定
指定
です 《他との接続》動詞の連体形、形容詞の連体形、形容動詞の語幹、名詞 丁寧な断定
ます
《他との接続》動詞の連用形
丁寧
ない
《他との接続》動詞の未然形
打消し

《他との接続》動詞の未然形

《他との接続》動詞の未然形

《用例》「うち、手紙、よう書か」(私、手紙をとても書くことができない)。
《用例》「花ちゃん、まんだ、来とらがな」(花ちゃんが、まだ、来ていないじゃないか)。
《用例》「知ら知らんでも、ええ」(知らなければ知らなくてもいい)。「な」は仮定形

《補遺》過去の打消には「なんだ」「んかった」を用いる。「そら知らなんだ」「そら知らんかった」。若い人ほど、後者。く

へん、しぇん、せん
《他との接続》動詞の未然形

《用例》「おりゃ、そがなこと、言わへんぜ」(俺はそんなこと、言わないよ)。
《用例》「おりゃ、そがなこと、言わしぇんぜ」
《用例》「おりゃ、そがなこと、言わせんぜ」
《用例》「エンジンが、いっかな、いごかへんがな」(エンジンが全く、動かないじゃないか)。
《用例》「エンジンが、いっかな、いごかしぇんがな」
《用例》「エンジンが、いっかな、いごかせんがな」
《用例》「この子は、親の言うことを、聞かあへん」(この子は、親の言うことを聞かない)。
《用例》「この子は、親の言うことを、聞かあしぇん
《用例》「この子は、親の言うことを、聞かあせん

強い打消

《他との接続》動詞の連用形、形容詞の連用形、形容動詞の連用形
確認
過去

《他との接続》五段活用型動詞の未然形、形容詞の未然形、形容動詞の未然形
意志
勧誘
推量
よう
《他との接続》五段活用以外の動詞の未然形

《他との接続》五段活用型動詞の未然形

《用例》「さあ、行か」(さあ、行こう)。
《用例》「さあ、死な」(さあ、死のう)。
《用例》「さあ、走ら」(さあ、走ろう)。
《用例》「さあ、飛ば」(さあ、飛ぼう)。
《用例》「さあ、読ま」(さあ、読もう)。
《補足》「あ」は省略される場合が多い。「行か」「死な」「走ら」「飛ば」「読ま」のように。

意志
未来
勧誘
ょう
《他との接続》五段活用以外の動詞の未然形

《用例》「一緒にみょう」(一緒に見よう)。
《用例》「これにしょう」(これにしよう)。
《用例》「一緒ににょう」(一緒に寝よう)。
《用例》「一緒にたびょう」(一緒に食べよう)。
《用例》「今度はあちょう」(今度は当てよう)。
《用例》「うちらもぢょう」(私たちも出よう)。
《用例》「ちゃんときみょう」(ちゃんと決めよう)。
《用例》「うちがしたぎょう」(私がしてあげよう)。


《他との接続》五段活用型動詞の未然形

《用例》「さあ、行か」(さあ、行こう)。
《用例》「一緒に死な」(一緒に死のう)。
《用例》「一緒に走ら」(一緒に走ろう)。
《用例》「一緒に飛ば」(一緒に飛ぼう)。

ょい
《他との接続》五段活用以外の動詞の未然形

《用例》「一緒にみょい」(一緒に見よう)。
《用例》「これにしょい」(これにしよう)。
《用例》「一緒ににょい」(一緒に寝よう)。
《用例》「一緒にたびょい」(一緒に食べよう)。
《用例》「今度はあちょい」(今度は当てよう)。
《用例》「うちらもぢょい」(私たちも出よう)。
《用例》「ちゃんときみょい」(ちゃんと決めよう)。

まい
《他との接続》五段活用型動詞の終止形、他の活用動詞の未然形
否定的意志
否定的推量
あらすまい、あらすみゃあ

《用例》「そがなこたあ、あらすみゃあ」(そんなことはないだろう)。
《独り言》「あらすまい、あらすみゃあ」は、助動詞ではあらすみゃあ

否定的推量
なからあ

《用例》「阪神清原っちゅうことは、なからあ
《独り言》「なからあ」は、助動詞ではなからあ

だらあ
《他との接続》用言の連体形、体言

《用例》「あしたは雨だらあ」(明日は雨だろう)。
《用例》「ボーナス、増えっだらあか?」(ボーナスは、増えるだろうか?)。

推量



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