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Title : If gravity vanishes...
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If gravity vanishes...

 もしも重力がなくなった(もしくは突然宇宙空間に生活せざるをえなくなった)ら。
 これまでの依拠してきた生活習慣が一挙に変わる。

「上下」の概念が変わる。

 「重力」の最大の特徴は、地球上にいる限り「上下」の方向を決定づける点にある。
 すなわち、重力の働く向きが「下」である。これは地球が丸かろうが平坦だろうが、北半球にいようがいままいが無関係である。地面のある方向である。が、重力のない状態では「下」が確定しない。なんらかの定義で取り決めすることはできるだろうが、これまでかなり絶対的に決まっていたものが崩壊し、「上」も「下」も単に向きを示すだけの言葉になる。
 ただし、同時に東西南北の概念も崩壊するように思えるかもしれないが、これは重力の有無の問題ではなく、地球上にいるかいないかに依拠する問題との混同である。南北を、たとえば「地球の太陽に対する公転面に対し66.7°で交わる軸の示す方向」として記述できないわけではないからだ。

「上下」に対する価値が変わる。

 実はこの「上下」という空間概念は私たちの価値観に大きく影響を与えている。価値のあるものは「上」もしくはその類語で表現されることが多いことに注意しよう。「天国」だの「地獄」だのという言葉はなおさらリアリティを失う。

デザインは対称が基本になる。

 上下と左右の価値の差がなくなることもあるが、もっと実務的な理由で左右も対象・上下も対称なデザインが基本となる。
 よくスペース・オペラもののアニメで宇宙船が、全体としては美しい流線型をしながらも部分的にし装飾的な突起物があることが多いのだが、これは不合理である。エンジンのブースターも好き勝手に配置してはならないのだ。完全に位置的は点対称、出力的にも完全に一致したものを配置しなければ、モーメントが発生して、その方向に回転してしまうからだ。つまり、左右対称はデザイン的に美しいからではなく、姿勢の安定制御のために必要となる。そのときに上下で質量分布が異なったらそのことも配慮して制御しなければならなくなる。

姿勢が変わる。

 重力が働かないことにより、「楽な姿勢」という概念そのものが崩壊する。
 椅子に座ることとか、寝転がることも実は非常に困難になる。これらは重力が働いている状態で2本足で立つという力学的に結構「不自然」な状態から人間の体を解放するための姿勢であって、無重力状態では必ずしも楽な姿勢ではない。そもそも同じ姿勢を保ち同じ場所にいるということ自体が困難になるのだ。
 ここから派生する問題として、「字を書く」という風習も変化を要求される。
 字を書くという行為は、テーブルなど何か固定されている場所に紙(もしくはそれに類するもの)に筆記用具を押し付け、インク・粉を押し付けて摩擦させて定着させることにより可能になる。筆記用具の中には重力を利用しているものもある(ボールペンや万年筆では内部のインクがなぜペン先に集まるのか、なぜ上向きにしたら書けなくなるのかを考えよう)が、その問題を回避したとしても、そもそも紙を押し付けるための姿勢をとること自体が難しいことに注意しよう。
 人間にとってキーボード入力がまともなインプットメソッドとも思わないが、無重力状態ではペン入力も自然な入力方法でなくなる可能性がある。

というわけで結論

 さほど遠くない将来、地球に住めなくなったら、人類はまじめにこの問題に直面する。…かもよ。


Version:1.00
Create : 2007/09/14
Last Modified : 2007/09/14

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Updated : 2007/09/14