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Title : If Anywhere-door comes ture...
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If Anywhere-door comes ture...

 もしも「どこでもドア」が完成したら。
 おそらく、これまでの依拠してきた空間・時間の概念が崩壊するため、社会が大混乱に陥る。

「輸送」「移動」の概念が変わる。

 「どこでもドア」の最大の特徴は、いかなる遠距離にある2地点をも瞬時に往来が可能である点にある。
 遠距離恋愛も通勤・通学も転勤も単身赴任も無くなる。下宿も不要。それに伴う引越しも不要。ドアの向こうにまで移動すれば済むのだから。(あ。出張手当も通勤手当ももらえない。)

産業革命が起こる。

 上記の事柄は、産業に破壊的な影響を与える。
 運輸業・旅客輸送業は不要になる。
 郵便事業・宅配業も同様に不要になる。
 上記の事業が輸送手段として用いてきた自動車・鉄道・旅客機を製造する業種に壊滅的な需要減が発生する。特に自動車の需要が激減することにより、道路整備等の公共事業がかなり不要になる。交通機関の大幅な不要化に伴い、燃料を供給する業種・特に石油産業にも壊滅的な影響を与える。ただし「どこでもドア」を動作させるために必要なエネルギーの種類によっては逆に需要増になる可能性も秘めている。

「冒険」「探検」が無くなる。

 いつでもどこでも行けるのであれば、この世から「秘境の地」「前人未到の地」は無くなる。

「立地条件」が無くなる。

 「大消費地に近い」や「交通の便がよい」などという概念が無意味になる。地理的分布にしたがって存立してきたビジネス・サービス・価値は存在意義をなくす。これは都鄙の関係を一変させ、地価の概念も無意味化する。

「アリバイ」の概念が崩壊する。

 「時刻TにおいてA地点にいたものは極めて近傍時間の後に(A地点とは異なる)B地点に存在することはできない」という原理が満たされないことになる。すなわち不在証明がかなり困難になる。

時間の使い方・あり方が変わる。

 1日の予定で、午前10時に京都で会議、午前11時にNYで商談なんてことが可能になる。逆に、「その日はロンドンに居るので、ワイキキでの会議に出られません。」という言い訳は出来なくなる。こうなると、地球全体で時差を持たせる意味がなくなる。ドア1つくぐるたびに時刻が異なっては予定が記述できない。ということで例えばグリニッジ標準時で世界中の時刻を一本化する、などということが行われる。

通信のあり方が激変する。

 通信というのは、空間的に隔離された2者間の情報のやりとりのために発展した。ところがもはや「空間的に隔離された状況」がなくなる状態では、通信するより、ドアをノックするほうが速い。

防犯のあり方が激変する。

 「密室」という概念が無意味になる。いかなる遮蔽空間の中にも自由に出入り可能だからだ。例えば銀行の金庫の中に入って、好きなだけ札束を持って出てくることが可能になる。これを防ぐには、侵入を防ぎたい場所に人間に害のあるガスを充満させたり、蠍や毒蛇などを放ったりして、その場所に行った人間が危険にさらされるよう仕組みが必要となる。

推理小説がなくなる。

 上記2つのことより、これまで不可能と思われていた犯罪がかなり可能になる。トリックの余地はあまりない。密室殺人も概念的に不可能だし、交通機関のダイヤの隙間を縫うトリックも無意味。

隔離の意味がなくなる。

 他人に入ってきてほしくない空間を確保できなくなるという一方で、逆に、あるもの(もしくは人)をある空間に閉じこめておきたいと思ってもそれが不可能になる。刑務所や拘置所からは脱獄のし放題。全寮制の寄宿舎の門限とか面会制限なんてなんのその。

「国境」が無意味に。

 他人に入ってきてほしくない空間を確保できなくなるということは、入出国制限が無意味化する。難民を防ぐ方法はもはやない。逆に独裁国家からはどんどん国民が逃げることになるので、もはや独裁も不可能?

「防衛」が無意味に。

 事実上、「防衛」は不可能になる。通常、他国を侵略する場合、制空権を奪い、橋頭堡を確保し、大量の火気で援護しながら上陸(または前進)する。が、もはやこんな手間は要らない。いきなり首都を陥落させられる。

もはや「秘密」は守れない。

 「今・ここ」が、いつでもどこからでも誰からでも見られる可能性が生まれることになる。もはや、この世に「秘密」を隠せる場所などない。

開発者は抹殺される。

 あまりにも社会的影響が大きすぎるがために、社会の安定を望む圧倒的大多数の凡人からの要望か、もしくはその技術を独占したい者によって、開発者は抹殺されるであろう。もしくは世界の誰からも私物化されないように「共同管理」のもとに置かれる。

というわけで結論

 「どこでもドア」を開発中のあなたは思いとどまったほうがよい。


Version:1.00
Create : 2007/09/14
Last Modified : 2007/09/14

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Updated : 2007/09/14