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Title : Internatonal Law ; Security
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国際安全保障

戦争の違法化

 古来より戦争は紛争解決の最終手段として用いられてきた。戦争は違法なものではなく、ただ、戦争の方法にルール(戦争法規)があるだけであった。
 近世初頭からグロチウスをはじめとする国際法学者は「正しい事由(justa causa)による戦争ならば正当化される」とする「正戦論」が提唱されるようになった。この「正しい事由(justa causa)」としてグロチウスは防衛・財産の保全・制裁の3つを挙げている。(『戦争と平和の法』

 しかしその事由の正当性を判断する上位の機関は存在しないため、現実にはそれぞれが自国の主張を繰り返すだけになり、この状況を追認する−正戦と不正戦を区別しない−「無差別戦争観」が定着した。(ヴァッテル『国際法』

 20世紀に入ると平和的解決を目指さずに戦争に訴えることを禁止する条約が結ばれるようになった。(債務回収のための兵力使用を禁止するポーター条約 1907年 )
 また 1913 - 14 年に合衆国を中心に結ばれたブライアン条約では、一定の紛争を、同条約の設置する常設国際委員会に付託することを義務づけ、審査終了までの期間は戦争行為を禁止するというものであった。この条約は戦争そのものを禁止したわけではないが、国の交戦権の行使を一定期間猶予させるという意味で戦争モラトリアムを最初に取り入れた条約と言える。

 国際連盟規約ではこの流れを受けて、国交断絶のおそれのある紛争について、国際裁判・連盟理事会に付託することなく行う戦争(規約第12条)及び判決・理事会の報告後3か月間のモラトリアム期間に行う戦争(規約第12条)、判決・理事会の勧告(当事国を除く全会一致)に従う国に対する戦争(規約第12条・15条)を禁止した。しかしこれは逆に言えば、判決・理事会の勧告(当事国を除く全会一致)に従わない国に対し、3か月経過後に行う戦争(規約第12条・13条・15条)や全会一致でない場合に3か月経過後に行う戦争(規約第12条・15条)を容認するものでもあった。

 第1次世界大戦における戦争の悲惨さからか、欧州5か国でのロカルノ条約(1925年)を経て、不戦条約(ブリアン・ケロッグ条約;1928年)が締結され、戦争は違法化されるようになった。この条約は人類史上、戦争の禁止を法制化した画期的なものであったが、この条約をもってしても戦争を止めることはできなかった。

 第2次世界大戦後、これらの流れを受けて国連憲章(1945年)が制定された。自衛権の行使(憲章第51条)及び軍事制裁(憲章第42条)の例外を除き、武力の行使による威嚇が禁止された。(憲章第2条)

自衛権

 戦争の違法化以前には、権利侵害に対する自助は保障されていたため、自衛権は緊急避難として正当化されると主張されていた。しかし戦争の違法化以降は、いわば例外として扱われるようになった。

 国連憲章第51条では武力攻撃が発生した場合の個別的・集団的自衛権を規定している。個別的自衛権は国連憲章以前にも認められていたが、武力衝突が起こる前の、先制的自衛の問題などは制限されておらず、若干の問題をはらんでいた。

 これに対し集団的自衛権は国連憲章で初めて提出された概念であり、自国が攻撃を受けなくとも、攻撃を受けた被害国を助けて反撃する権利を認めるものである。しかしながらその行使に関する手続きが明確化されているわけでもなく、いわば軍事介入の合法化にもつながりかねない一面も持っている。

永世中立

 ある国が、自らは戦争を開始せず、他国間の戦争にも参加しないことを宣言し、他の国がその地位を承認した場合、その国を永世中立国という。

永世中立国
永世中立国 期間 基礎となる条約
クラカウ1815 - 1846クラカウ自由国に関する条約
スイス1815 -スイス永世中立条約・領域不可侵議定書
ベルギー1831 - 1919ロンドン条約
ルクセンブルグ1867 - 1919ロンドン条約
コンゴ自由国1885 - 1919ベルリン会議第1議定書
オーストリア1955 -オーストリア連邦憲法及び他国による承認
ラオス1962 - 1977ラオス中立宣言
マルタ1981 -マルタ中立宣言及びイタリアによる保障宣言

 永世中立国には以下のような義務が課せられる。

  1. 平時に他国に戦争を起こさないこと
  2. 戦時に中立国としての地位を守ること
  3. 戦時に中立国としての地位を保てなくなるような行為を平時に行わないこと

 また、永世中立条約の当事者は

  1. 永世中立国の独立と領土保全と戦時における同国の中立を尊重する
  2. 上記の項目が侵された場合、これを排除する
義務を負う。
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Updated : 1999/07/05