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Title : Words starting from ka,ki,ku,ke,ko
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攻撃性 [ Aggression ]

 さて、もとの単語は Aggression なのだが、これを「攻撃性」と訳していいものやら。通常、戦争と平和を論じる時や、20世紀の歴史を語っている際に Aggression とくればまず「侵略」と訳されるのが妥当なのだ。でも、以降に書いてあることの意味合いから判断して「攻撃性」と訳しておく。

 さて。
 人が人を攻撃する理由として社会心理学的には

  1. 攻撃本能や死の本能が攻撃動機を生み攻撃行動に走るとする内的衝動説
    (S.フロイトやK.コンラートらが主張)

  2. 欲求不満など不快な事象が蓄積して攻撃動機を生み攻撃行動に走るとする情報発散説
    (L.バーコビッツらが主張)

  3. 社会による学習によって攻撃を喚起するとする社会機能説
    (G.R.パターソンらが主張)

が提唱されている。

 (1)は「人間とは攻撃する本能を持つ」と考える立場、(2)は「不断に不快な状況を強いられるといつかキレる」と考える立場、(3)は攻撃をすることにより、自分の置かれた状況を変化させるために行うと考える立場と言えよう。最近の日本国内での報道を見る限り、このうちの(2)の立場で説明をしようとしているように見うけられる。

 この背景に見え隠れするのは(1)は人間の性悪説、(2)は性善説。(3)はちょっと微妙で、人間をかなり機能化して見ているフシがある。(1)を強調すると、「人間はどうしようもないのだ」という結論になるし、(2)(3)を強調すると「社会が悪いんだ」となってしまう。まあ、それはそれでわかったような説明だが、「だからどうしろって言うの?」って聞きたくなってしまう。

 このような事態に対して、最近、「何が悪いのか?」という問題の立て方そのものが的外れなのではないかという気がしている。「真犯人」「諸悪の根源」はこれだ!と言っても、それさえ除けば再発しないのかというとそんなことはないからだ。

【 Bibliography 】
  • Berkowitz L, "The frustration-agression hypothesis revised" ,1968
  • Freud S, "Beyond the Pleasure Princilple", 1939
  • Lorenz K, "On Agression", 1966

Updated : 2000/07/26
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Updated : 2000/07/26