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Title : Classification
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分類

 2+3=5。

…この計算を不思議に思ったことはないだろうか。まあ、普通の人はないだろうなぁ。でも、足し算ができるということは実は大変なことなんだな。以下の説明を聞いても「何言ってんだ?」としか思えなかった人にはたぶん私がなぜこのページを書いたか理解してもらえないんだろう。で、面白そうだと思うかも知れない数少ない奇特な人たちのために説明をば。

 ここに林檎が2つ、蜜柑が3つあるとする。じゃあ、あわせていくつだろう。たぶんほとんどの人は5と答えるだろう。でも、何が5つあるのだろう。果物? 果物、ねぇ。じゃあ、「果物」というものを示してくださいよ。おっと、目の前にある林檎や蜜柑を指しちゃだめですよ。それはあくまで「林檎」か「蜜柑」であって、『「果物」というもの』ではないですよ。え? 何? それは屁理屈だ? あ、そう。じゃあ、まあここは引き下がりますよ。

 じゃあ次。
 ここに鉛筆が2本と電信柱が3本あるとしよう。あわせて何本だろう。5本? じゃあ、聞くよ。何が5本あるの? 細長いもの? ん? 何? 何が5本あるって?

 じゃあ次ね。
 ここにケサランパサラン2つ(2体?)と、あなたの友人3人がいるとする。あわせていくつかな? やっぱり5? じゃあ、何が5ある(いる)の?

…だんだん、「あわせていくつ」と言われることに対する違和感、「何が」と問われて答えにくくなる度合いが増していくのがわかるかな。そう、足し算というのはね、その背後に足されるものどうしの間に何かの共通点を見出していることを前提にしてるんじゃないかってことを言いたいわけだ。
 そういう抽象化の作業−どういう観点から見て、何をもって「同じ」と見なすか−を通じて、分類というものが行われる。そう、実は分類っていうのは実はとっても知的な作業なのだ。単に物事をいっぱい知っているというだけでは雑学とかわりがない。雑学を学問に消化するのが分類なわけだ。そして、それまでになかった、けれど説得力のある分類の枠組みを示した者が「知の巨人」と呼ばれたりする。

 えー、「ケサランパサラン」が気になって仕方ない人へ。そうだなぁ、自分の身近の40歳代以上の人に聞いてみなさい。たぶん知ってるから。これが元になった化粧品ブランドのことを直接指しているわけではない。

分類したいという衝動に駆られた本たち

 分類と言う作業は、その類似度から枠組みを設定していき、どうしてもうまく分類できないときにその枠組み自体を組み替えてみて行うことで可能な作業で、実はある領域を調べつくした後にしかなし得ない作業である。でも、ある分野に初めて参入してきたときには、そもそも全体の枠組みがわからないと、自分の位置がどこなのか、調べてることが的外れなのかどうかすらわからない。となると、自分でいきなり分類作業を行うのではなく、まずは先人のものを参考にすることになる。

 世の中のいろんな分類をこれでもかと言うくらいに挙げているのが、『知の分類史』(久我勝利;中公新書ラクレ)だ。荒俣宏氏の著作群をすげーと思うか思わないかでこの手の本に対する評価は変わるとは思うが、ただ分類が並べらえているのを眺めているだけでもすげーと思うなぁ。贅沢言えば、それらの相互の関係を説明してもらえたらよかったが、まあ、所詮は新書なので、そこまで高度な知的作業をつぎ込んだものを要求するのも酷か。

 そもそも「わける」とはどういうことなのか、なんて水準から書いているのが『「分ける」こと 「わかる」こと』(坂本賢三;講談社学術文庫)だ。古今東西の様々な(ほんとに古今東西の、だ)分類というかものの見方を例示し、その違いを説明していく。圧巻は3章に出てくる『色道大鏡』だ。フェミニズムな方に怒られそうだが、これは江戸時代に書かれた遊郭で遊ぶ人が初心者から玄人(?)になるまでの発展段階(!)の分類だ。これは其道でなくても、人が何かの分野にハマり、一時期は自分の力量にうぬぼれるが、さらに突き進んで達人の領域になる過程を示しているようで、実は結構人間の機微をついているのやも知れんなぁ。

 世の中のいろんな分類をこれでもかと言うくらいに挙げているのが、『知の分類史』(久我勝利;中公新書ラクレ)だ。荒俣宏氏の著作群をすげーと思うか思わないかでこの手の本に対する評価は変わるとは思うが、ただ分類が並べらえているのを眺めているだけでもすげーと思うなぁ。贅沢言えば、それらの相互の関係を説明してもらえたらよかったが、まあ、所詮は新書なので、そこまで高度な知的作業をつぎ込んだものを要求するのも酷か。

 それから、世の中にあるいろんな紛らわしいものを説明してくれている、アメリカで出版された『What's the DIFFERENCE?』を翻訳して独自の項目も追加した日本語版が、『ちがいの分かれ目』(クウォークブックス;小学館)なのだけれど、うん、まあ、上記の本に比べれば単なる「雑学書」に見えてしまうなぁ。原著者はよく知らないけれども、Amazon で検索してみると、どちらかと言えば子供向けの入門書を多数書いている人のようだから、実はいろんな分野にやたら詳しくかつそれをやさしく説明できる人なのかも知れない。(この本に関する記述は 2007/02/26に追加。)

Classification
  1. 『知の分類史』
  2. 『「分ける」こと 「わかる」こと』
  3. 『ちがいの分かれ目』

たぶんここに分類されるであろう本たち

自然を分類し尽くしたかった本たち

  1. デュルケム:『分類の未開形態』
  2. プリニウス:『博物誌』
  3. 張華:『博物志』
  4. 李時珍:『本草綱目』
  5. 荒俣宏:『世界大博物図鑑』
  6. アリストテレス:『動物誌』
  7. 『大戴礼記』
  8. ディオコリデス:『薬物誌』
  9. リンネ:『自然の体系』
  10. ビュフォン:『一般と個別の博物誌』
  11. ラマルク:『動物哲学』
  12. キュビエ:『動物界』
  13. 貝原益軒:『大和本草』
  14. 稲生若水:『庶物類纂』
  15. フンボルト:『コスモス』
  16. キュビエ:『動物界』

学問とか分類し尽くしたかった本たち

  1. アリストテレス:『範疇論』(偽作の疑いもかけられてるらしいけど)
  2. ウァロ:『学問論』
  3. イシドルス:『語源誌』
  4. ディドロら:『百科全書』
  5. 『周礼』
  6. ファーラービー:『科学の分類』
  7. フーゴー:『ディダスカリコン』
  8. バルマトロマエウス:『事物の属性について』
  9. ヴァンサン:『大鏡』
  10. トマス・アクィナス:『神学大全』
  11. ベーコン:『ノヴム・オルガヌム』
  12. 『天工開物』
  13. ヘーゲル:『エンチュクロペディー』
  14. 菅原道真:『類聚国史』
  15. 『和漢三才図会』
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Created : 2007/02/08
Updated : 2007/02/26