Part2 アフリカでの幕間
 Part2-8 ケトゥーミ夫人のハットトリック(3)

最後のラウンドは、パロット(オウム)とトビアス修道士がパートナーを組んで行われました。
彼らは、最後のラウンドでカードを取り出しながら、短かく視線を交わしました。
このラウンドの最終順位で良い位置につけることをお互いに決意していました。

それに向けて、一緒にプレイするこの1ボードで出来る限り良い成績を収めることが、自分たちの利益になることは明らかでした。
ディールは次の通りでした。

 East-West game
 Dealer East


コントラクト:6
=====

パロットのスイス(Swiss)レスポンス:4♣は、 確実なゲームへのレイズを示しているため、トビアス修道士はすぐにスラムをビッドしました。

※スイス(Swiss)
「1♠or1オープンに対する4♣or4レスポンス」
・ゲームフォーシング(基本的には4枚サポート以上)
・今回の4♣について
 以下の3パターンでパートナーとの取り決め次第
 1. 14-16HCP
 2. 3コントロール以上
 3. 4枚サポート時はAKQの内2枚
   5+枚サポート時はAorKあり
●現代ではスプリンターに人気負け、このSwissの利用
 は減っています。

・ケトゥーミ夫人は、慣例に従って最も長くて
 強いカードの 4thベスト:6をリードしま
 した。
 トビアス修道士はダミーに
 「Tをお願いします」と言いました。
 EはJでカバーし、
 ディクレアラーはAで勝ちました。

・そして、トビアス修道士はダミーに向かっ
 てロートランプを続け、
 Wから7が出てきました。   
  WがQ76からリードした時のみフィネスは
  有効です。
  しかし、それは絶対に考えられません。  
 そのため、トビアス修道士はダミーの
 を出しました。   
  EがQJのダブルトンであることに期待して   
 Eはショーアウト、
 「持っていないんですか?」トビアス修道士
 は息を切らして言いました。

 パロットが睨んでいることに気づいたトビアス修
 道士は、

・♣でハンドに戻り、
・ダミーの9に向けて3回目の切り札を出しま
 した。
 ケトゥーミ夫人はQで勝ち、
・続いて、リスクの少ない最後の切り札を出しま
 した。
・トビアス修道士は、コントラクトをメイクする
 ために♠のフィネスに賭けるしかありません。
 そして、フィネスは失敗し、
 1ダウンとなりました。

「おお、よくやった、相棒」パロット(オウム)は
辛辣な口調で言い放ちました。
「素晴らしいスコアだ!」

「スラムのペアは他にもいると思いますよ」と、
トビアス修道士は威厳を保ちながら答えました。

「12トリックは確実だった!」と、
パロットが金切り声で叫びました。

“馬鹿な鳥が何をぶつぶつ言っているのか”と
トビアス修道士は不思議に思い、そして
「つまり、2 回目の切り札でフィネスを行えば、と
 いうことですか?」と。

「そうだ、マイナーカードをエリミネートすれば、
 4枚目の切り札でWはエンドプレーになる!」

「それでも切り札がリードされたら、EはQJの
 ダブルトンとしてプレーするのは正しいはず」

パロットは、この件を放っておけませんでした。
「第2ラウンドでフィネスしないのなら、
 第1トリックでダミーのをプレイする意味は
 どこにあるんだ?」
「低いカードをプレイすれば、損失なくスートを勝
 つことができた」と、検事のような口調で続けま
した。

「結果で判断するのは、この不可解な鳥の典型だ」
 と、トビアス修道士は思いました。

「さらに、切り札をリードされなくっても、
 はなくで最初に勝つべきです」
「4枚の切り札をWが持っていれば捕まえることが
 できます」
「同様に、Q J x x をWが持っている場合でも
 1ルーザーです」

「そう、Q頭の4枚切り札からのリードは天才か、
 完全な馬鹿のどちらかだ!」
「そのどちらかに当てはまる相手と対戦したのは、
 運が悪かったと言うほかない」

「次のラウンドに進みましょう!」と、
このイベントのスムーズな進行の指揮を担当しているオコク夫人の独特で低音の声が響きました。